ふたりを乗せた愛馬チュホンは
朝焼けの中を懸命に駆けた
しかしこちらは二人乗り
どうにも分が悪かった

じりじりと
追っ手が追いついてくる
チュホンは主人のため
足の骨が折れてしまうのでは
ないかと思うくらい疾走した

都を抜けた山中で
いよいよ後方に
追っ手の馬が数頭見えた時
木の上から聞き覚えのある声が
チェヨンを呼んだ


チェヨンのだんな
ここは俺たちに任せて先に行きな
師叔からの伝言だ
必ず逃げて幸せになれってさ


ああ そうさ
医仙と一緒に幸せになれよ


まだあどけない顔で言う
スリバンのジホとシウル


ああ 頼む
いいか 無駄に戦うな
適当に逃げれよ


わかってるさ
どにかくだんなたちを逃すのが
俺たちの役目だから


ごめんね 二人とも
よろしくね


ああ 無事に逃げきろよ


ジホとシウルは追っ手に向けて
木の上から矢を放ち 石を投げる
少しでも時間が稼げるように
二人を遠くに逃すために


チェヨンとウンスは
チュホンに揺られてひたすら
港を目指した
追っ手の気配は消えていた
先に下見に走ったテマンが戻り
この先も敵が潜んでいる様子は
ないと言って ウンスを安心させた


最初からこの調子
もう嫌になったのではないか?


馬から降りて木の根元で
肩を寄せ合い休んでいた時
チェヨンがウンスに聞いた


まさか 
なんだかわくわくするわ
うふふ
いけないかしら こんな言い方?


そうか?


チェヨンはウンスをぐいっと
自分の肩に引き寄せ
頭をぽんぽんとなでた


愛してるわ チェヨン


ああ 俺も


重ねた唇をやっと離す
テマンが目のやり場に困ったように
後ろを見ていた


さて 行くか


うん


チュホンはほとんど休みも取らずに
走り続けた


日が沈み 辺りが藍色の空に
包まれた夕闇の中
二人はやっと目指していた港に
たどり着いた


あとは船に乗るだけ


うん


テマン行くぞ


はい テジャン


テマンの元気の良い返事が聞こえる
前方に大きな船が見えた


大きな船ね


ウンスが驚いた顔で言う


倭国までの船旅は長く険しいものに
なりましょう


そっか そうよね
でも 人影がないわね


乗るのは俺たちだけ


そうなのね


ウンス・・・


何か言いたげな顔をして
チュホンからウンスを下ろした


チュホン 苦労をかけたな
よく頑張った
もう行け
道に迷うなよ


ヒヒヒ~ンとチェヨンは鳴いて
優しいつぶらな瞳でチェヨンを
見つめると
主人が言った通りに振り返らずに
駆け出した


船に乗り込もうとすると
船の中から人影が見えた


徳興君様!
お出ででしたか


チェヨンが言った


ああ
逃げるならば船だと思うて
当たりをつけて
先回りしていたのだ


じゃあ あの追っ手は?


ウンスが言った


あれは王様の追っ手であろう?
私はあずかり知らぬこと
そなたたちを謀反人にせぬため
こうして密かに会いに来たのだ
テジャンよ
今ならまだ間に合う
引き返さぬか?
ウンス殿を罪人にしても
構わぬと言うのか?
叔母のチェ尚宮はどうする
謀反人の身内として処刑されても
構わぬのか?


諭すように徳興君は言った


もとより覚悟の上
叔母上もわかってくださる
それに叔母には王妃様が
ついておりますれば
俺のこととには関係なく
寛大な処置をしてくださるはず


だが
どこへ逃げるというのだ
この国にいるかぎり
いつか捕まろう


倭国へ
倭国へ行くのよ


ウンスが口を挟んだ


なんと!
そのようなところへ
ますます
そなたを渡すわけにはいかぬ
ここに残れば此度のことは
なかったことにして差し上げよう
私と共に新しい道を歩いて
参らぬか?


チェヨンさん
私 この方と話をしなくちゃ
少しだけ待っていて


ウンスはチェヨンの方を向いて
微笑んで言った
チェヨンが静かに頷きその場を
少しだけ離れた


あのね 徳興君様
私もね ちょっと前までは
結婚て条件が大事だと思ってたの
仕事が安定していて 
もちろん相手に
お金もあった方がいいし
いい家柄で
何不自由なく暮らせて
できれば病院の開業資金なんか
出してくれたらなお結構
ブサイクよりはかっこいい方が
いいな~とか
いろいろ理想があったのよ


無論 当然のこと


そうよね~
だったらこの高麗なら
あなた以上の人は
いないと思う
身分も地位も富も
何もかも手に入る
おまけにいい男だわ


ウンスはふふっと笑った


でもね
私 チェヨンじゃなきゃだめなの
どんなに心を隠そうとしても
どんなに嫌いになろうとしても
どんなに秘密の関係でも
やっぱり彼が好き
理屈じゃないのよ
だから
この気持ちはどうしようもないわ
私たちを倭国へ行かせて
お願い 


ウンス殿・・・
やっと巡り合えた相手だと
そう思っていたのに
残念でならぬ
子のいない現王に変わり
そなたと私の子がいずれ王位を
つぐ日が来るかもしれぬのに
それでも行くのか?


ええ 王座とか権力とか
興味がないの
愛する人がそばにいてくれたら
どこでだって生きていけるわ


強い意志のウンスに
徳興君は
返す言葉が見つからなかった
しばらくウンスを見つめていたが
諦めたように呟いた


お行きなさい


ありがとう
徳興君様


ウンスはチェヨンの元へと
駆け出した
勢い余ってどんとぶつかってきた
ウンスをしっかり抱きとめた


あいつがいい男か?


なんだ 拗ねてるの?
だっていい男なのは本当よ


ぷいとチェヨンがふくれたように
見えた


うふふ 意外と子供なんだから
そうよね 私より年下だもの


年下で悪いか?


うふふ いいわよ
あなたが年下でも年上でも
あなただから なんでもいい
だって大好きなんだもの


ウンスはチェヨンと
手をつないだ


さあ 行きましょう


*******


『今日よりも明日もっと』
あなただから好きなの
理屈じゃないわ
あなたと新しい道を歩んでいく



☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


あれ?完結しない
申し訳ない もう一話あります

なので お話を十(上下)から
普通に 十 十一 十二に
戻しました σ(^_^;)

そして今回のお話
考証をしておりませんヽ(;´Д`)ノ
移動距離と移動時間に無理がある
気がする( ̄ー ̄;

あしからず・・・
ご了承くださいませ



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