細かな雪が降る朝だった


医仙様を
お呼びしましょうか?


サラがチェ侍医に尋ねた


まだ朝早いから
もう少し待とう
そう慌てなくても
想定内であろう?


ウネが入院してから
寝ずの番をしている
チェ侍医が
ウネの脈を診ながら言った


ですが   


あまり騒ぎ立てて
よいことはない
こういう時こそ医員は
冷静であらねば


そうですね


サラが頷く


ウネの顔色は
あまり優れなかった

まだアンジェも
病室に顔を出しては
いなかった


━─━─━─━─━─


かわいい顔して眠ってる

チェヨンに
たっぷり食われた次の朝
気だるいからだで
床から這い出て
ウンスは白木の寝台に眠る
タンを見つめて笑った

時々眉間にシワをよせ
難しそうな顔をする
そんな表情もチェヨンに
似てるなとくすっと笑う

素肌に薄い掛け布団をまとい
寝台の横に立っていると
いつの間にか
その掛け布団の中に
入り込んだチェヨンの胸板が
背中にぴたりと触れた


起きていたのか?


チェヨンが言いながら
ちゅっと   首筋を吸った
柔らかな感触が
ウンスの心をざわざわさせる


うん
タン
夜中も起きなかったでしょう?


そうだな


だから
様子を見に来たの
どうしたのかな?と思って


チェヨンの体温を
じかに感じる暖かな胸板
腰を抱くたくましい腕
包まれる悦びに
身悶えしそうな
気持ちを抑えて
ウンスは
つとめて平然と答えた


そうか


生まれて二カ月半になって
夜も長く眠るようになったのね
そういえば   いつの間にか
二時間ごとに
起きなくてもよくなったし


そう言えばそうだな


ウンスは指さきで
竹ひごに
ウンス本人にしか
くまに見えない
赤色のくまもどきが
ぶら下がった
天界で言うところの
モビールをちょんと押した

くまもどきがゆらゆらと揺れ
中にいれた  小さな鈴が
ころんころんと鳴った

タンが目を覚まして
くまを眺める


目で追うようなおもちゃが
この頃の赤ちゃんには
必要なのよ


ウンスがチェヨンに言って
天界のクリスマス頃に
間に合うようにと
ふたりで作った
手作りおもちゃ


天界ではクリスマスに
サンタクロースがおもちゃを
子供たちに贈るのよ
朝目覚めたら  枕元に
お願いしたおもちゃがあって
ほんとにうれしかった


ウンスは思い出して
幸せそうな顔をした


さんたくろーす?


うん
正体は優しいアッパや
オンマなんだけどね
でも自分が親になってみて
わかったことがあるの


ん?


子供がよろこぶ顔を見るのって
親にとってはすんごく
うれしいことなんだなぁって


タンの
楽しそうな顔を想像して
忙しい合間にちょっとずつ
縫いあげたウンスのくま
紐にぶら下げて
竹ひごで揺れるように
考えついたチェヨン

生まれたばかりの我が子に
ふたりからの
おもちゃの贈り物だ


世界に一つよ


ウンスがタンに話しかけると
タンはウンスの声を
追いかけるように顔を向けた
それから  鈴の音が聞こえる
くまを目で追っている

それから思い出したように
ほぇぇと泣いた


お腹が空いたのね


寝台から抱き上げると
安心したように
泣き止んだ


いい子ね
いま   お乳をあげるわ


何も見に纏わない素肌に
タンの柔らかなからだを
引き寄せて
ウンスは優しく微笑んだ

掛け布団に包まれたまま
寝台に腰掛ける
タンは乳を探して
勢いよく吸い付いた
ごくごくと音が聞こえるほどに
乳を飲む


ヘジャが廊下をパタパタと
歩いてくる音が聞こえた


朝餉の用意が出来て
おります


そ   わかった
お乳をあげたらすぐ行くわ


はい


ヘジャ
ウネさんに持っていく
朝餉も出来てる?
あの炊き込みごはん
美味しかったから


はい   ヘジャにお任せを
朝一番に抱き上げました


ありがとう
たくさん食べて
はやく元気になって
もらわなきゃ


扉越しに会話する
ウンスとヘジャ

ウンス越しに見つめ合う
チェヨンとタン
タンがふいっと乳を離した


もう   お腹いっぱいかな?
じゃあ   お出かけの準備を
しなくちゃね
そろそろポムも来る頃よ


ウンスが明るい声で
タンに話しかけ
チェヨンがウンスを
もう一度後ろから
タンごと抱きしめ


そうだな


と   囁いた


高麗にも
年の瀬が押し迫り
慌ただしい一日が
始まろうとしている


*******


『今日よりも明日もっと』
あなたへ贈るもの
それは
愛情溢れる幸せな時間






なんだか慌ただしく
更新もゆるゆるです
m(_ _ )m

高麗に住み着きたい!


何かと忙しい年の瀬
皆様
安寧にお過ごしくださいね