閨に戻ったウンスは
授乳をしながら
チェヨンに言った


久しぶりに
賑やかな夜だったわ
楽しかった


当たり前のように
ウンスの後ろにはチェヨンがいて
その小さな背中を支えている
チェヨンは
ウンスの特製背もたれだ


そうか
それは良かった


チェヨンはウンスの首筋に
鼻先をつけながら言う


くすぐったい


ウンスが艶やかな声で
チェヨンに言った


夕刻になって
王宮での役目を果たした
キム・ドクチェは
ヨンファの迎えに
ウンスの邸を訪れた

そこで正室の祝いをと言う
ウンスの誘いを受け
ポムを迎えに来た
チュンソクも重なり
三組の夫婦で
小さな宴の会となった

男たちは酒を酌み交わし
ヘジャの作った飯を食べ    
女たちは尽きることのない
話に夢中になっていた
今日ばかりは
堅物のチュンソクも
ほっとしたのか
すっかりほぐれたように
よく笑っていた

チェヨンはみんなの輪の中で
一際明るく楽しそうなウンスを
じっと見つめた
そして数年前
ウンスに出会う前には
誰が自分のこんな姿を
想像しただろう?と思った

ウンスの温かさが愛しかった
時折合わせる視線が
幸せであった


賑やかな時はあっと言う間に
過ぎ去り
それぞれがそれぞれの
我が家へと帰って行ったのは
つい先ほどのことだ


ウンスは笑いながら
答えた


うふふ そうね
それにしても
ヨンファのことはヨンファ殿で
ポムのことはいつまでたっても
あの嫁御なのね


タンは満足したように
唇をふいっと離して
ウンスを見つめた


ああ そうだ
ヨンファ殿はキム殿の奥方
もう一方は部下の妻
それにどうもあの娘を
奥方とかポム殿と呼ぶ気にならん


変なの


ウンスは笑いながら言った


どちらも私には可愛い妹よ
それにポムは
もとはあなたの許婚でしょう?


ああ そうであったな
あれと縁がなくて心底
よかった
俺にはウンスが一番だ


チェヨンは後ろから
授乳が終わってまだ胸元が
はだけたままの
ウンスを抱きしめた


あ タンにトントンしなきゃ


少し酒臭いチェヨンが
次の悪ふざけに行かないうちに
ウンスはタンの頬を自分の
肩に乗せ背中をトントンとする
タンはウンスの首筋越しに
チェヨンをちろっと見て


けぽっ


可愛いタンの声が聞こえ
ウンスは安心したように
またタンを胸に抱いた

腕の中でゆっくり揺らすと
猫が喉を鳴らすみたいに
気持ちよさそうに
目を閉じた


寝台に寝かしつけるわ


ああ


ウンスがそっと
タンを白木の寝台に
寝かしつける
チェヨンは天蓋の寝台の上に
胡座をかいてウンスを
待っていた
その胡座の上にすぼっと
腰を下ろして
チェヨンの胸板にからだを
預ける


なんだか落ち着く


そうか?
俺はなんだか落ち着かぬ


柔らかなウンスの
乳の匂いがするからだを
チェヨンは
後ろからぎゅっと抱きすくめ
耳たぶを唇で食む
ウンスのからだにきゅっと
力が入ったのがわかった


側室話が流れて良かったわ


ウンスは
気を落ちつかせるように
チェヨンに言った


そうだな


耳たぶに触れた唇が動く


うん
やっぱり嫌だもの
ポムがいくらこの時代に
生きているからって
嫌なものは嫌なのよ
いっそのこと
側室制度を無くすのは?


我ながらの良い案に
目を輝かせて
ウンスが横を向くと
チェヨンの顔が目の前にあって
ウンスは焦った

チェヨンはすかさず
ウンスの唇を捉える
重ね合わせた唇を
離してから
チェヨンはぽつりと言った


それは無理であろうな


無理?


ああ   この国に必要だから
ある習わしなのだ
家の跡取りのためにも
それから
王室の繁栄のためにもな


じゃあ   私がタンを
生んでいなければ
あなたも側室を迎えたの?


戸惑うような瞳で
チェヨンを見た


それはない


チェヨンはきっぱり言った


だってじゃあ跡取りは?


家門など赤月隊として
生きると決めた時に
捨てたゆえ
跡取りなどどうでもよいと
思っていた
俺にはウンスさえいれば
それで良かったから


そっか


だが今は少し違うぞ


ん?


タンに残してやるものが
あって良かったとそう思う
大した家屋敷ではないが
タンの行く末を
守るくらいはできよう


うん


だが
度が過ぎるほど
富に執着しても
あの世には持って行けない


そうよね   
あなたはお金も地位も
後ろ盾になる親もいない
こんな私を妻にしてくれた
私そのものを愛してくれた
それにタン
息子まで授けてくれたわ
だから今の私に
私は大満足なの


ウンスがチェヨンの
唇に唇を重ねた


天界では私もあの親子に
似たような暮らし方だった
いい服を着て美味しいものを
食べて   いい家に住んで
豊かに暮らしたいって
それが幸せだと
思っていたもの
でも高麗で暮らしていると
あなたがいてタンがいて
二人が幸せなら
それだけで十分私も幸せなの


ウンスの微笑みは
美しかった


そうか
それにしても
チュンソクは災難であったな


うふふ
チュンソクさんは
優しいから
震えるキンスさんを
抱きしめたって
ポムが言ってたわ
その温かさを勘違いして
懸想したのね
でも相手の幸せも考えずに
無理矢理
手に入れようとするのは
よくないわ
あ~あ
あなたと私みたく
みんなが幸せならいいけど


ウンスはチェヨンを見つめて
言った


でも   もし 
ちょっと糸の結び方を
間違えてしまった時は
ほどいてやり直せばいいのよね


ああ   
それに
あの親子もこれから
やり直しが出来るであろうし


チェヨンはウンスに言った


これにて
一件落着という訳だ
では   タンも寝ているし
これからは夫婦の絆を
深める時


チェヨンは
ウンスの瞳を捉えた


毎晩深めすぎよ


ウンスは苦笑した


そうか?
俺は
まだまだ深め足りないが


チェヨンは真面目に答えると
からだの向きを入れ替え
愛しい妻を
ゆるやかに布団に横たえた


*******


『今日よりも明日もっと』
夫婦の絆がほどけぬように
互いの愛でしっかり結ぶ





☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


すっかり寒くなりましたね
風邪も
流行っているみたいです
皆様
安寧にお過ごしくださいませ


*昨夜アップしたものが
しっくりこなかったので
少し書き直しました