夕陽が沈むにはまだ少し
時がかかる頃
早ばやと
チェヨンが邸に戻った


お帰りなさい
お疲れ様


いそいそと
出迎えに出たウンスは
ポムの処へ
遣わしたヨンファが
気になってはいたが
チェヨンの顔を見ると
なんとなくほっとして
笑みがこぼれた

きっと
ヨンファなら抜かりなく
ポムを支えるはず
ここでジタバタ考えても
仕方ない
ウンスはそう思い直し
チェヨンの腕に絡まった


いかがした?


うふふ
たまにはいいでしょう?
それとも子供がいると
腕組んじゃいけないのかしら?


ウンスはなるべく
おどけて楽しそうに言った
ポムのことでチェヨンに
余計な心配はかけたくない


それはよいが
イムジャ
チュンソクたちのことで
気を揉んでいるのか?


そんなことないわ
あなたに甘えたいだけよ


チェヨンはふっと笑うと
ウンスに尋ねた


して?タンは?いかがした?


私よりタン?
寝てるわ
さっきお乳を
飲み終わったの


チェヨンはウンスに


なんだイムジャも我が子に
悋気か?


と笑って言うと
たぶんウンスが今一番
知りたいであろう
チュンソクからの
言伝てを伝えた


嫁御は心配ないそうだ
チャン・デホの娘が
屋敷に訪ねて来たが
片がついたと言っていた


そおなの?
それならいいけど
大丈夫かな?


屋敷から戻った時には
いい顔をしておったし
結局のところ
夫婦のことは夫婦にしか
わからん


それもそうね
え?
チュンソクさん
ポムを気にしてお屋敷に
帰ったの?


ああ
ウダルチ隊長ともあろう男が
情けない!と言いたい
ところだが・・・
まあ仕方ない
俺も他人のことは言えぬし
チュンソクには
世話になっておるしな


そうよ
それにポムは私の大切な
妹?みたいなものだもの
それくらいは大目に見て
あげなくちゃ
じゃあ   なんとか側室の件は
収まったのね
良かった


だがまだ父親との話は
ついておらんぞ
都を離れているからな


そうだった


ウンスはぎゅっと
チェヨンの腕に
しがみつきながら頷いた
チェヨンはウンスの
豊かな胸の膨らみを
腕に感じ
戸惑いながらウンスに囁く


イムジャは
俺を誘っているのか?


は?なんのこと?


さっきから胸が当たって
気になる


やだ
そんなこと思ってたの?
私はただ    ヨンが
お昼も戻らなかったから


チュンソクが居なかったのだ
俺まで空けれぬ


だって
そんなこと知らないもの
ポムもいないし
寂しかったの
あなたに会いたい病が
再発したのよ   きっと
だからぴたっと
くっつきたくて


そうなのか?


チェヨンはうれしそうに
笑った


俺も会いたい病だな
イムジャの顔が見たくて
飛んで帰って来た


うふふ


顔を見合わせて笑った


ウンスは
絡めた腕にぶら下がり
わざとぎゅうぎゅう
チェヨンの腕に
胸を当てながら言った


やっぱり
あなたが家に
帰ってくる生活はいいわ
戦でいない間は
甘えることも
できなかったから
その分取り戻さなくちゃ


俺は他にも
取り戻さなくちゃならん
ことがあるがな


なあに?


チェヨンはウンスの
耳に呟いた


もう   ヨンたら
しょうがない人ね
でも今宵はお風呂はゆっくり
入るんだから
昨日みたいなのはなしよ


なんだ残念


チェヨンが笑う


まあよい
秋は夜も長いし
時はまだたっぷりあるゆえ


意味ありげに
チェヨンが言った


チェヨンとウンスは
腕を組んで
ゆっくり廊下を歩き
奥の間の隣の部屋に着くと
タンの寝台の前に立った
チェヨンが寝台を覗き込む


タンはよく寝ておるな
タン
今帰ったぞ


咎めるようにウンスが
言った


起こしちゃ駄目よ
さっき
やっと
寝たんだから


だが今   起こさぬと
せっかく
ことが始まったころに
起きるではないか?


はあ?
そんなことまで計算して?
考えてるの?
タンの父上はやっぱり
大した策士だわ
困った父上ですね~


ウンスがタンに話しかける
両親の仲の良い声が聞こえて
タンが目を開けた


お!起きたか?
よしよし
いい子だ
タン   おいで


チェヨンが
甘い乳の香りがする
ふわふわとした
タンを大事そうに抱き上げた
小さな小さなタンの
温もりがチェヨンの心を
甘酸っぱく溶かす


タンもいい迷惑でしょう?
せっかく寝ていたのに


その様子を見ていた
ウンスは
くすくすと笑って言った
すると
チェヨンが思いついたように
ウンスに言った


そうだ!   イムジャ  
今宵は三人で風呂に入らぬか?
それがよい


タンがあ~あ~と
声を出した


タンもそれがよいか!
夕餉の前に風呂だな
ヘジャ   ヘジャ
風呂の支度は出来ておるか?


チェヨンの声が弾んで
ウンスに届く


夕暮れ時   邸は
柔らかな夕陽を浴びて
穏やかな色に輝いていた


そして数日
何事もなく過ぎていった


*******


『今日よりも明日もっと』
些細な出来事が
繰り返される
当たり前な毎日が
本当は一番居心地がいい



☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


三連休初日が終わりますね
いかがお過ごしでしょう?
例年より暖かい気がする11月
紅葉狩りには丁度よいかも?


さてチュンソクの側室騒動
もう少し話が続きます
またおつきあいくださいませ


三連休も安寧に
お過ごしくださいね