王宮の庭園にも
秋の草花が美しく咲いて
風に揺れていた


ヨンファの夫
キム・ドクチェは
朔州が巻き込まれた戦の
力添えに
御礼を申し上げようと
王様に謁見する為
王宮を訪れていた

そこで偶然
チュンソクの側室騒動の話を
耳に挟む
チャン・デホとは朔州の
人参商いで面識があったが
ひどく頭が切れるし
損得で物事を解決する男
とてもあの朴訥で人がいい
チュンソク隊長が敵う相手
ではないと
心配したドクチェは
すぐに仔細を
ヨンファに知らせ
ポムに用心するように
伝えよと申し付けた

話を聞いたヨンファは
矢も楯もたまらず
王宮のウンスの元へ
急いだ
そこで 邸の門の前にいた
タンを抱いたウンスと
必死に止めるヘジャに
出会った


なりませぬ
勝手にお邸を離れるなど
しかも若様を連れて行くなど
話しになりません
旦那様に叱られます


でもね
ポムが心配なのよ
本当は心を痛めて
寝込んでいるのかも知れないし
わかるのよ
あの子の気持ちが・・・
私もヨンの側室話が
持ち上がるたびに
苦しんで来たもの


お気持ちはわかります
でも若様に何かあったら
どうするのです?
むやみに連れ回しては
なりません


ヘジャも引き下がらない


私が様子を見て参ります


ヨンファはウンスに言った
ウンスは納得し
ポムに伝えて欲しいことが
あると言った


もしも ポムが
チャン・デホの娘さんに
会う機会があれば
私のところへ
来るようにって
伝えて頂戴
一度その女人に会ってみたいの
どういうつもりなのか
聞いてみたいのよ
それに 
気になることもあるし


わかりました
医仙様


ヨンファはウンスの言葉を
受け止めポムのいる
屋敷に向かったのだった


━─━─━─━─━─


ポムはヨンファが止めるのも
聞かずにキンスを屋敷に
招き入れた

こじんまりとした客間に
ポムとヨンファ
そしてチャン・キンスが座る

客間の飾り棚の上には
ウンスの庭の草花で
作られた鮮やかな花輪が
白い平皿の陶磁器に
生けられている
ウンス仕込みの
落ち着いたかわいらしい
客間の装飾


可愛い奥様に似て
可愛らしい客間ですこと


キンスは棘のある言い方をした


お褒めいただき
ありがとうございます


ポムが悠然と言い返す
そしてヨンファに言った


姉様
あちらもお一人ですので
ポムも一人で大丈夫でする


ヨンファは取り乱して
泣いているのかと思っていた
ポムが
ことのほかしっかりと
受け答えていることに
驚きを隠せなかった


でも と
いうヨンファに


大丈夫
姉様はゆるりとなさって
いてくださいませ


ポムが言った


ヨンファは客間を出て
ゲファの案内で隣の部屋に
入ると 聞き耳を立てた
何かあればすぐに乗り込もうと
そう思っていた


二人きりになると
ポムが聞いた


夫のことで相談したいこと
って何でするか?


私はチュンソク様を
お慕い申し上げております


言い切るキンスの言葉が
ぐっとポムの胸に刺さった


チュンソク様の
お側で彼のために
いろいろと
して差し上げたいのです


ポムはキンスの口から
こぼれ出た言葉に
耳を塞ぎたかった


それに 私の父は
大きな力を持っております
チュンソク様の後ろ盾として
これ以上の富はございません
ご正室様のお父様には
朝廷での地位を後ろ盾して
いただき
我が父はそれを富で支えます
ウダルチ隊長どころか
大護軍 いえそれ以上の
出世もできましょう
私とご正室様とで
チュンソク様を支えて行けたら
どんなによろしいかと
すでに屋敷の手配もいたしました
こんな小さな屋敷ではなくて
これからの
チュンソク様に見合った
豪邸を造りお招きしたいと
思っております


どうして?


ポムの声が震えていた
隣の部屋のヨンファが
ポムの加勢に出て行こうかと
身構えた

え?
キンスが聞き返し
ポムが再び尋ねた


どうして我が夫なのでする?
他にも有望な殿方は
たくさんいるのに


キンスはポムを
見つめてふっと笑った


温かい方だと
そう思ったから・・・
ならずものから助けて頂き
チュンソク様に
抱きしめられて
思ったんです
この方なら私は幸せに
してもらえるに違いないって


抱きしめられた時・・・
言葉がこだまのように
ポムの耳に響き
心をえぐった

あれは抱きしめたんじゃない
不慮の事故でする!
チュンソク様が
抱きしめる相手はポム一人


心の中で叫んだ
キンスは黙ったままの
ポムに畳み掛けるように
話しを続けた


ご正室様は政略結婚で
ございましょう?
見所のある殿方ですもの
パク家の皆様はお目が高い
ですが
これからはこの私に
旦那様をお任せいただき
ご正室様はお好きなように
お過ごしになられれば
よろしいかと
その為の資金は我が父が
用意いたしますゆえ


ポムがわなわな震えて


馬鹿にしないでください


と声を荒げて言った


夫とは政略結婚などでは
ございませぬ
ポムは夫に恋い焦がれ
結婚したのです
あなた様の申し出も一理ある
もしも夫が立身出世を
望むような男であれば
それも致し方ない
でもポムの知ってる夫は
そのような男では
ございませぬ
心からポムを愛して
くれています


あい?


ああ すみませぬ
医仙様がよく使うお言葉です
天界のお言葉
好きで好きでたまらない
自分のことより
相手のことがもっと大事
そう言う時に使う言葉でする


愛・・・
キンスが呟いた


お引き取りいただけぬか?


聞き慣れた声が
鋭く響いた


旦那様


チュンソクはポムの肩に
手を乗せると


具合はもうよいのか?


優しい目をして聞いた
ポムの瞳に涙が溜まる


はい 大丈夫です


そうか よかった


それからキンスに向き直り
チュンソクは穏やかに
だがきっぱりと言った


某はポム以外要らぬのです
どんなに富や権力があっても
それが何になるのでしょう?
夫婦二人どこか地方で
ひっそり暮らしても構わぬ
そう思うております
お屋敷をお建てになるなら
どうぞご自由に
ですが その屋敷に住むのは
あなた様ただお一人
某が一緒に住むことは
けっしてござらぬ


チュンソク様・・・


こらえていた気持ちが
チュンソクの顔を見たとたん
溢れ出し
ポムがぽろぽろ泣いた


これ以上
妻を傷つけるなら
たとえあなた様でも
容赦しませぬ
刺し違える覚悟で
かかって行きますゆえ
どうぞお引き取りを・・・
ゲファ お客様がお帰りだ


チュンソクはポムの
肩を抱き寄せると
奥の間へと連れて行った
ポムはまだ泣いていた


旦那様の馬鹿
相手は大物商人なのに
みすみす好機を逃すなんて


馬鹿はポムだ
様子を見に来てよかった
あんなことを言われて
よく我慢しておった


チュンソクの力強い腕が
ポムを抱きしめた


ここは
ポムだけの場所でする
誰にもあげませぬ


ああ そうだ
ポムの場所だよ
すまなかったな
まさか役目を全うしたことで
こんなことになるとは
大護軍に言われたのだ
もっと冷酷になれと
ポムを失ってからでは
遅いとな
俺はあの女人も
傷つけぬように
王様にも
迷惑がかからぬように
などと 思い巡らせた
浅はかな考えであったな
俺が一番に守るべきは
ポムなのに


よいのです
そう言うお優しいところが
旦那様のいいところ
ポムの大好きな
チュンソク様のいいところ
なのですから


ポムがやっと笑った
チュンソクがポムの
顎に手をかけじっとポムを
見つめた
ふたりの唇が重なりそうに
近づいた時
ヨンファが入って来た

あ しまった!という
顔をしたヨンファは


すみません
どうぞ続きを
私はもう帰りますので


こそこそと逃げ出そうとした


待って 姉様
久しぶりだもの
話しがしたいでする


ポムが引き止める


ああ そうです
しばらくポムのそばに
いてやってください
ポムや
俺はもう行く
実は心配で
市中の見回りと言って
こそっと抜けて来たのだ
まあ 大護軍には
お見通しであろうがな


チュンソクが笑った


旦那様ったら~


隊長も意外とやるわね


ポムとヨンファも笑った


ほっとしたのか
奥の間は
和やかな笑いに包まれていた


チュンソクの屋敷を出た
キンスは苦々しい気分で
歩いていた

どうして分からないのだろう
チュンソク様にとっても
これ以上の良策はないのに
もしかして
私に会いたいと言う
医仙様とかいう天人なら
少しは
話しが通じるのだろうか?

天界から来たと言う
ウンスのことが
キンスは気になっていた


*******


『今日よりも明日もっと』
幸せにしてもらいたい
それは独りよがりな想い
あなたを幸せにしてあげたい
その想いは自分を強くする



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