都への帰路を急ぐ
チェヨン達 高麗軍

チェヨンの愛馬チュホンを
追従しているのは
チェヨンの唯一の私兵の
テマンだ

チェヨンとは阿吽の呼吸で
チェヨンの視線一つ
呼吸一つで
自分が何をするべきかが
読み取れるまでに
テマンは 成長していた
もうすっかりりっぱな青年で
チェヨンに
山で拾われた少年だった日が
嘘のようだ

そしてその後をかつての
テマンのように
小柄な猿のような少年が
軽やかに走っていた
ウダルチでは見慣れぬ顔だった


おい ウォン
これからは大護軍のために
ちゃんと働いてご恩返し
するんだぞ


テマンはその少年に言った


こくんと頷いた少年は
テマンに向けてにかっと
白い歯を見せた

少年とテマンの出会いは
戦のさなかの山中だった

ほとんど裸のような状態で
小汚く真っ黒
髪はぼさぼさで
木の上から戦を見ていた

敵の弓矢が少年に飛んだのを
見たテマンは
その弓をたたき落とし
少年を助けた
少年は固まったまま
テマンを見つめてる


お前 名前は?
一人か?
家族は?


矢継ぎ早に質問しても
ただ 首を振るばかり


その後も
執拗に飛んで来る弓矢
窮地のテマン達を
救ってくれたのが主である
チェヨンだった
チェヨンは鬼剣を一振りして
弓部隊を 一気に片付けた

ほっとするのも束の間
その少年が棒切れを掴むと
チェヨンめがけて
かかって行った


おい
その方は


テマンが止めるのも間に合わず
走り込む少年

だがチェヨンがそれに
動じる訳もなく 
一撃で少年は倒れた


すまん 
軽く 当てたはずだが
痛くはないか?


チェヨンは少年に
手を差し伸べた


大人が敵に見えるか?
戦で怖い思いをしたのだろう


チェヨンは言った
少年が戸惑いながら
その手を掴んで立ち上がった
暖かな手だと少年は思った


お前 テマンに似てるな
昔のテマンに会ったみたいだ
テマンも敵意むき出しで
かかって来たよな


懐かしそうに笑った


戦で両親を失ったテマンは
山中でひとり 雨露を凌いで
木の実を食べながら
生き延びていた頃を思い出した


もしかして
お前も家族がいないのか?


テマンが聞いた


戦で家族を失ったのか?


少年はこくこく頷いた


大護軍・・・


テマンが何か言いたげに
チェヨンを見た


ああ 構わん
陣営に連れて帰り飯を食わせろ


イェ! 


テマンが元気に返事をした


俺はテマン
俺も戦で家族を失って
大護軍チェヨン様に拾って
もらったんだ
俺はあの方の為なら命だって
惜しくないくらい
あの方を崇拝している
お前行く当てがないなら
俺達と来るか?そして
お前もあの方の為に働くか?
命を助けてもらっただろう?


・・・


お前 名前は?


それまで言葉を話さなかった
少年が小さな声で言った


ウォンスンイ
ウォンって呼ばれてた


テマンは 
ははっと笑った


お前の名前
お前にぴったりだな
ウォンスンイ(猿)の
ウォンか? よろしくな
俺はテマン


ヒョン(兄さん)・・・


ヒョン?


似てる


お前の兄さんに似てるのか?


ウォンはこくんと頷いた


じゃあ まあヒョンでも
何でもいいや
好きに呼べよ


少年の瞳がぱあっと輝いた


それからと言うもの
少年はテマンに懐いた
どこへ行くにもテマンの
後をついて歩く
チェヨンの忠実な部下で
弟のようなテマンに
弟分が出来た


チェヨンは追従するテマンと
その後をついて来る
ウォンを見た

戦がなければ 今頃
二人とも
家族で 幸せな暮らしを
していただろうに

戦は人々の普通の暮らしを
奪って行く
だからこそ 長引かせては
いけない
出来るだけ 殺さず 
被害を出さず
泣く民を出さぬように

チェヨンはきりりとした
顔で前を見た

テマンを追いかけるウォンは
ほっとしたような
いるべき場所を見つけたような
そんな顔をしていた

新しい家族か・・・?
チェヨンはふっと笑う


チェヨン達 高麗軍の一行は 
大切な家族の元へ
一刻も早く戻るため
今も 道を急いでいる


━─━─━─━─━─


タンがウンスの乳を
美味しそうに飲んでいた

ぐんぐん吸う力が強くなり
目方も順調に増えている
ウンスは幸せそうに
タンを見つめた

乳を飲み終えて
口を離したタンを
抱き上げると
ウンスは頬ずりをした

小さな唇が
ウンスの頬に触れる
甘酸っぱい想いがこみ上げた


早く ヨンに
見せてあげたいわ
こんなに可愛くなったのよ
ってね
父上もタンに
会いたいでしょうね


タンは あ~あ~と
声を出して返事をした


うふふ
もうすぐ会えるわよ
さあ 今日は王妃様に
会いに行きましょうね


ウンスはタンの額に口づけ
小さく呟いた


ヨン 私は此処にいるわ
ここであなたを待ってる


*******


『今日よりも明日もっと』
それぞれの想いを胸に
前へ進んでいく





☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


御礼リクエスト企画に
頂いたリクエストを
織り交ぜてお届けいたしました


★さるちゃん様

山で拾われた生意気な少年
テマンの弟分ウォンの話
と 頂きました
あんまり
生意気じゃなかったかも(^▽^;)
リクエストありがとうございました



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