この高麗にも
もうすぐ雪の季節が来るわ

初雪をあなたと見たい
あなたとタンと三人で

だから
早く 帰って来て

毎朝 
あなたの無事を祈って
螺鈿細工の箱にある
義母様の宝石の小石を
一つ一つ 窓辺に積んでるの
今日かな?明日かなって?

待ってる
あなたの帰りを
タンと二人で・・・


ウンスは窓の外の
空を見上げて言った


*******


タンが生まれて 
そろそろひと月

頼りなかった体つきが
少しふっくらとして
しわしわに小さかった手が
ぷっくりと丸くなった

起きている時間が
少しずつ長くなり
ウンスが動くと
じっと目で追う


医仙様
順調な回復ぶりですね
それに
若様もお健やかです


チェ侍医が目を細めて
ウンスとタンを
代わる代わる見た

今日は 三日に一度の
チェ侍医の往診の日
王妃様の近況報告もかねて
チェ侍医は
王宮にあるチェヨン邸に
サラをともない
足繁く通っていた


ええ ありがとう
お乳の出もよすぎて
困るくらいよ


ウンスが笑った


そうですか
それはよかった


チェ侍医が頷く


ええ
ところで
王妃様のご様子にお変わりは
ないでしょう?


もちろん
ご心配には及びません
まだ初期ではありますが
落ちつていられますし
王様が本当によく王妃様を
見舞ってらっしゃる


そお
よかったわ 


医仙様も
大護軍のお戻りが
待ち遠しいでしょう?


うふふ
タンが大きくなっていて
きっとびっくりするわね


そうですね


チェ侍医が微笑んで
タンを見た
愛しいウンスが生んだ
タンの成長を
チェ侍医もまた
たいそう気にかけていた


大護軍がお戻りになられたら
そろそろ典医寺にも
復帰なさいますよね


ええ 王妃様のこと
いつまでも先生やサラに
任せっきりには出来ないし
私自身も気になるもの


はい
王妃様も医仙様のお越しを
心待ちにされているようです


サラが言った


そうだわ
そろそろタンを
王妃様のところへ
連れて行っても大丈夫かしら?
外気浴してもいい頃よね?


ウンスがチェ侍医に尋ねた


そうですね
少し寒いですが
若様は
お体もしっかりされていますし
短い時間なら大丈夫でしょう
それに 少しずつ
外の世界にも慣らさなければ
なりませぬし


よかった
王妃様が会いたがっていると
叔母様が来るたびに言うから


チェ尚宮様が?


チェ侍医が聞き返した


ええ 
私が寂しい想いをしていないか
気遣ってくれているんだと
思うけど・・・


どうかされましたか?


サラが尋ねると
ウンスの代わりに
そばに控えていたポムが答えた


あれは 
絶対若様に会いにですよ
だって サラさん 見てみて
このお部屋を


奥の間の隣にあるタンの
お昼寝の寝台の回りは
溢れ返るように 
子ども用品が置かれていた


叔母様が
来るたびに増えてしまって


ウンスがくすっと笑った


これ まだほとんど
使えないですよね
若様には早すぎるおもちゃとか
早すぎる衣とか
ほんと 尚宮様ったら
どれだけ 
若様を溺愛してるんだか


まあ ありがたいことよ
それだけ 気にかけて
くださっているってことだもの


そこへ ヘジャがぱたぱたと
やって来てウンスに
一通の手紙を渡した


奥様 
旦那様の文が届きました


ウンスの目がうれしそうに
きらきらとした
ポムが呆れたように言う


あのね 毎日のように
文が届くのです
それに引き換え
うちの旦那様ったら
その半分もくれないんですよ


ポムが口を尖らせた


うふふ
私は出産間もないからよ
それにポムにだって
かなり頻繁にお手紙が
届いていると思うけどな


だってぇ
毎日ではないもの


チュンソクさんは
ヨンの分も色々気を回して
くれているから
忙しいのよ きっと


ポムだって
まだ新婚なのになぁ~
こんな可愛い嫁を
放っておくなんて


膨れっ面のポムに
皆が笑った


本当ね~
可愛いお嫁さんを
ほったらかして
チュンソクさんも
しょうがないわね


ウンスが笑った


ねえ 医仙様
いつも文には同じ記号しか
書いてないですよね
これが うれしいんですか?


ええ うれしいわよ
これはね
ふたりの暗号なのよ
うふふ


何て書いてあるんです?


暗号だもの
教えないわ


ウンスがチェヨンの書いた
折り目正しい文字を
指でなぞって
幸せそうな顔をした


사랑해


あの人ったら
私が漢字を覚えるよりも
自分が天界の文字を
覚える方が早いって
この文字を覚えて
戦に行ったのよ


ウンスは微笑んだ


사랑해


手紙に書かれた
たった一言
でも 一番うれしい言葉

元気だ 
寂しい 
会いたい 
いろんな気持ちを全部込めて
無事だと言うことを
ウンスに伝える為に
 
チェヨンから届く
ラブレター


사랑해・・・


なんて書いてあるんですぅ?
暗号だなんてずるいですぅ


ウンスは
ふふっと笑うだけで
ポムの問いには答えなかった

賑やかなポムを
タンがじっと見つめている
時々 口を動かして
あ~う~と声を出す


うふふ
タン 父上からお手紙よ
早く会いたいわね


ウンスが優しく声をかけると
ウンスをじっと見つめて
あ~あ~ と返事をした


外の気温は寒いけれども
タンや皆のおかげで
ウンスの心は
ほんのりと暖かかった
そして何より
もうすぐ最愛の人が
自分の元へ返って来る


季節は秋から
初冬へと移り変わり
高麗の都も雪を待つ季節と
なろうとしている


*******


『今日よりも明日もっと』
사랑해
あいしてる




☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


新しい本編のお話が
スタートいたします

おつき合いくださいませ




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