飛び出して行った
トルベを見送りながら


これから
大変であろうな


典医寺のウンスの部屋で
チェヨンがしんみり言った


どおして?
好きな人とこれから
心通わせるのに?


高麗ではそれだけでは
結ばれぬ
家の体面や釣り合い
いろんなことが


ウンスは横を向くと
チェヨンの唇を塞いだ


それ以上言わないで
私が悲しくなるから


イムジャが?


私も一緒
チェヨンって言う
りっぱな人には不釣り合い   
得体の知れない天界の
妖魔かも


ばっ
馬鹿なことを
どこのどいつが
そんなことを言う!
俺がただではおかぬ


怒りに満ちたチェヨンを
なだめるように
ウンスはチェヨンの唇と
自分の唇を何度も
触れ合わせた


大事な人のことを
守りたい
それはみんな同じだわ
だからきっとトルベさんも
コハクちゃんのために
頑張れる
それに私なら大丈夫よ
あなたがいてくれたら
どんなことも乗り越えて
いけそうな気がするの
同じ時を一緒に重ねて
行きたい
これからもずっと


チェヨンはウンスを
また後ろから
きつく抱きしめた
決して離さないと言う
気持ちを込めて

だが   それにしても
柔らかく甘いウンスの唇
口づけだけでは物足りなくて
もっとウンスが欲しくなる
自分にチェヨンは呆れていた


イムジャは俺の欲に
気づいているだろうか?
まだしばらくは
我慢の日が続きそうだが


チェヨンはウンスを見た


なあに?


なんでもありませね


なによ?
なんだか良からぬこと
考えてる顔してる


良からぬこと?
そうかも知れぬ


チェヨンはウンスの
耳元で低く囁いた


イムジャが
欲しくなりました


━─━─━─━─━─


抱きしめた懐が
暖かかった
トルベは妓楼の女とは違う
この儚げな   女人を
腕からこぼれ落ちて
しまわないように
もう一度抱きしめた


トルベさん
苦しい


お前がいなくなるから
悪いんだろう


トルベは笑いながら言った


ごめんなさい


コハクは小さな声で
トルベに言った

それから二人は橋の下に
腰を下ろして
今までのことを話した


武閣氏のお姉さんたちは
みんな美しかったから
トルベさんは綺麗な女人が
好きなんだって思った
あたしは美人じゃないし
かまってもらえるのは
男でウダルチだからだって


俺はお前が男だと
思い込んでいたから
男を好きになるなんて
俺も大概おかしくなったと
思ってさ
お前が女でほっとした


トルベはコハクの肩を
抱きながら言った


お互いに想いあって
お互いに誤解しあって
お互いに苦しんだ


今となっては
滑稽な笑い話みたいだな


トルベが言った
それからコハクに尋ねた


お前   本当の名前は
何て言うんだ?
コハクは別人の名前だろう
男の振りするには
男の身分がいるから


コハクは
死んだ兄さんの名前なの
あたしのほんとの名前は
朱姫(ジュヒ)


ジュヒ


トルベは口の中で唱えた


もうそばから離れるなよ
どうする?ウダルチに
戻るなら
テジャンに頼むけど


トルベさんのそばには
いたいけど
もう男の振りは嫌なの
ウダルチは素敵な場所だったわ
テジャンも素敵な方だった
それに医仙様
あの方にお会い出来て
本当に良かった
あたし女に生まれて
良かったと思ってるの
いつかね
医仙様みたいな
素敵な女人になりたい


そうか
医仙様は
ずっとコハク
いや   ジュヒのことを
気にかけてくれてたぞ
今日も医仙様に言われて
俺   お前に会えた


そう


ああ   俺は
ジュヒが女に
戻ってくれること
うれしいよ


うん


俺    テジャンやプジャンに
ちゃんと言う
お前のこと好きだって
だからもうウダルチには
置けないって


トルベさん・・・


ところで
お前   今何処に
住んでるんだ?


向こう岸に部屋を借りてて


そっか
今度遊びに行ってもいいか?


ジュヒは小さく頷いた
トルベには
見るものすべてが
輝いて見えて
幸せだった


*******


良かったわ
トルベさんに幸せな
時間があって


チュンソクの馬に
二人で乗って
王宮へ向かう途中

五年前の話を聞いていた
ポムがチュンソクに
優しく笑って言った


そうだな


チュンソクはトルベを
偲ぶような顔つきで言った

身分が違いすぎて
トルベはジュヒとの仲を
両親に認めてもらうことが
ないままに
旅立っていった
あいつがこの世に遺した
大きな心残りだろうと
チュンソクは思った

力になってやれないままに
死なせてしまった後悔
それはたぶんあのお方
大護軍も同じ思いだろう
いや自分以上に大護軍は
己を責めているかも
知れないと
チュンソクは思った


大護軍と医仙様は
ふたりでいろんなものを
抱えて生きていらっしゃる
きっとふたりで一つだから
お強くいられるのだろう
あのふたりは
互いを求め信頼して
今ではあの頃以上の絆で
よき夫婦になられた


ポムもそう思いまする
と   ポムが頷いた


ポムも俺から離れるなよ
ずっとそばにいてくれな


当たり前でする
チュンソク様こそ
ポムから離れちゃ   
いや


チュンソクは
可愛いポムの
うるうるとした瞳に
吸い寄せられるように
そのまぶたに口づけた


都の皆に見られまする


ポムが笑った
チュンソクも笑った


あれから
王宮に内乱が起きて
チュソクが死んだ
チャン侍医も
医仙様の解毒剤を
守るために犠牲になった
そしてトルベも
キ・チョルから
大護軍を守るために
その手にかかって
命を落とした


だがトルベは・・・


チュンソクはポムに
何か言いかけて
話をやめた


トルベの秘密は
大護軍と医仙様と俺の
胸の内に
しまっておいたらいい
いつかまたコハクに
出会える時が
来るかもしれないし


チュンソクは思った
そしてポムに向かって
静かに言った


みんな   いい奴だった
今でも俺たちウダルチの
一員だ


ポムは頷いた


あのね
医仙様がね
この前言ってたの
兵舎のそばにある
銀杏の木を見ると
トルベさん達を思い出すって
あの頃の輝いていたみんなを
思い出すって


━─━─━─━─━─


都に近い郷里の海辺の村で
ジュヒは暮らしていた

あれから五年
今でもジュヒは
トルベと過ごした日々を
時々振り返る

優しい人だった
陽だまりみたいに
暖かな人だった

あっと言う間に
逝ってしまったけれど
出会ったことに
感謝している

風の便りで医仙様に
お子が生まれると聞いた
いつか   会えるだろうか?
ウダルチの兵舎や典医寺
コハクとして
生きていた時間を
懐かしく思い出した


砂浜に座りぼんやり海を
眺めていると
ジュヒに
小さな男の子が
駆け寄って来て
声をかけた


おかあちゃん
また   泣いてるの?


大丈夫よ   コハク
おかあちゃんは強いんだから
だってね   昔
槍でおとうちゃんを
負かしたことがあるのよ


トルベによく似たその子が
けらけら笑って言った


また   そのはなしぃ?
おかあちゃん
おとうちゃんが
今も
大好きだよね


*******


『今日よりも明日もっと』
あの頃   輝いていたあなたを
忘れることはない

銀杏の木言葉    鎮魂



☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*

いつか   トルベの息子が
タンの力になってくれる日を
夢見ています


ウダルチ狂想曲  十八話を
お届けいたしました

リクエスト頂いた皆さまを
ご紹介いたします


★チュンソクの初恋
ぶん様(ムンジュ)


★ウダルチ合コン
えみりん様(エミ)


★合コン参加者メンバー

えみりん様   エミ
めぐ様          へリョン
voile811様     ハヌル
パウダー様    オコナ
kacotan様      ミカ
maki様           ノグリ

特別ゲスト    コハク
ウダルチ達
チャン侍医   チェ侍医
そしてヨンとウンス


★酔った次の日   ヨンに
叱られると言うリクエスト
811059様


女であることを
隠してウダルチになった
コハクとトルベの恋模様
ユミン様

トルベは死なない設定でと
ありましたが結局
旅立ちました   ごめんなさい   
その代わり?
息子を残しました   (。-人-。)


皆さまから頂いた
御礼リクを再構成し
頂いた設定やお名前等
haru色に変えて
お届けいたしましたこと
ご了承くださいませ
おつきあい頂き
ありがとうございました

まだまだ頂いたリクエストが
ございますので
恋慕や本編に絡めながら
お応えする予定です
リク頂いた皆様
今しばらくお待ちください



明日は月曜日
皆様
安寧にお過ごしくださいね




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