青い空が澄んでいた
風が心地よかった

ウンスは武閣氏に護られて
典医寺に戻る


では また後ほど
医仙様


武閣氏達が
丁寧に礼をして
その場を立ち去ると
ウンスはばたりと寝台に
潜り込んだ
眠くて仕方がない



武閣氏の一人 ヨンファが
戻る道々で言った


昨日は大騒ぎだったわね


ええ 
急にいなくなるんですもの
医仙様にはいつも
驚かされることばかりよ
でもチェ尚宮様は心配いらん
を繰り返すばかりで
テジャンとご一緒だったのね


もう一人の武閣氏ピョルが
頷きながら話した


天界とここは違うのに
天人はみんなあんなに
お気楽なのかしら?
一晩 
テジャンと過ごすなんて
考えられないわ


ヨンファが冷めた目をして
そう呟いた


お気楽って・・・
そんなことないわよ
わたしも2,3度しか
お目にかかってないけれど
分け隔てなく
みんなにお優しい方
それに美しい方だし


ふうん
そういえばポムも
そんなこと言ってたわ


きっと何か事情があったのよ
だからチェ尚宮様も
私達を迎えに
出したんじゃないかしら?


ピョルが言った


チェ尚宮に子どもの頃から
仕込まれて鍛えられてきた
腕のいい武閣氏
だがどこか冷めていて
愛想のないヨンファと

父親が鷹揚軍の武士で
武官の家柄
生まれついたときから
武閣氏になることが
当然のように育って来た
さっぱりとした性格のピョル

そして高貴なご身分なのに
なぜか急に武閣氏見習いに
志願したおちゃめな
15才のポム

三人は同室で共同生活する
武閣氏だった

年が近いヨンファとピョルは
武術の腕も若手で1、2を争い
切磋琢磨する仲


そう言えば
ポムのお母様がご病気の時
助けて頂いたって
ポムがこの前 言ってたわ
美しくてお優しい医仙様の
警護につきたくて
うずうずしてるのに 
自分はまだ見習いだから 
チェ尚宮様に許してもらえない
って残念がってたもの


ふ~ん
私は王妃様付きが一番だけどな
だって 
王妃様をお守りすることは
武閣氏の花形じゃない


ヨンファがきっぱりと言った


ヨンファはチェ尚宮様の
覚えも目出たいから
うらやましいわ
私はいつになったら
王妃様付きになれるのかしら?
今日は医仙様 
明日は大妃様って
いろんなとこに
行かされてるの


それだけ腕を
チェ尚宮様に
見込まれてるって
ことでしょう?
大事な場面ではピョルを
使いたいって尚宮様の
お心よ


そうかな?


そうよ


二人は何となく笑いあい
ウンスが無事に
典医寺に戻ったことを
知らせる為に
チェ尚宮のもとに急いだ


━─━─━─━─━─


ウンスは僅かな時間
仮眠をとった

昨夜のことを思い出すと
顔が赤面する

今時 手を繋いだだけで
こんなにどきどきするなんて
子どもでもないわ

頭ではそれが分かる
でも 心は止められなかった

一晩中 貸してくれた
チェヨンの肩は
暖かくて 心地よくて
ほかには何もいらないと
そう思ってしまうくらい
愛しく思えた

好きになってはいけない人
天界の人間が
歴史に名を残す
偉人のチェ・ヨン将軍を
好きになるなんてありえない

でも そばにいたい
そばにいて欲しい

どうしよう?
どうしたらいい?

だから 今はこれしか
思いつかなかった
ウンスは
寝台の中で決心すると
ゆっくり目を開けた

そうしたら
目の前にチェヨンがいて
ウンスはぎょっとした

何か 
変なこと口走らなかったかな
そればかり気になる


ちょ ちょっと
人が寝てるのを
盗み見してたの?


もう昼です
そろそろ起きられよ


ウンスの問いには答えずに
平然とチェヨンが言った


康安殿に向かいます
お支度を


どおして?
なんで?


お願いすることが
あるゆえ
それに昨日は無断で王宮を
抜け出された
その釈明もせねばなるまい
外で待っております


チェヨンはそれだけ言うと
ウンスが
あっけにとられていることにも
構わずに
足早に 部屋の外に出た

扉をばたりと閉めてから
チェヨンは大きく息をする
呼吸が苦しいくらいだった

寝台に横たわるウンスの
安らかな寝息を聞いてた
長いまつ毛が時々揺れた
艶やかな口元が少し開いた

いくら見ていても
見飽きないその顔に
つい魔がさして 
触れてしまった

柔らかで艶やかなその肌は
決して手にすることが
できないとわかっているのに

いつの間にこんなに心惹かれ
狂おしいほどに求めるように
なってしまったのだろう

朝まで繋いでいた手の感触
肩にかかる重みの愛おしさ

苦しい想いがチェヨンの
胸の中に広がって行く

チェヨンはもう一度
心を鎮める為に
大きく息を吐き出した


康安殿へ行く道すがら
庭園の石橋の上で
ウンスは明るく
わざとおどけて
チェヨンに言った


ねえ チェヨンさん
私達 パートナーになろう
ともに闘う仲間
ともに助け合う仲間に
なるの


怪訝そうな顔をしたチェヨン
それでもウンスに笑ってくれた
ふっと笑った顔に
心が満たされた

あなたのそばにいる方法
今はこれしか思いつかない

ウンスは心の中でそう思う

触れたくて
ずっと触れていたくて


握手をしよう


有無を言わさず
チェヨンの手を握った


離れたところから
テマンとトルベが
にやにやしながら
こっちを見ている


某の対面も守ってくだされ


困ったようなチェヨンの顔に
ウンスはおかしくて
笑みが込み上げた


そんな折
ヨンファやピョルを引き連れて
チェ尚宮がウンスを迎えに来た


*******


『今日よりも明日もっと』
ともに闘うパートナー
心強いのに
心もとないふたりの関係






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