鮮やかな夕焼けが
空を紅に染める頃
チュンソクがチェヨン邸に
ポムを迎えに来た

と言ってもチュンソクが
一緒に帰れる訳ではなく
屋敷から輿が着いたのだった

今宵は
王様と王妃様が
庭園にお出ましになるので
チュンソクは
ウダルチ隊長として
警護に当たらねばならない

チュンソクはそのことを
ポムに言い含め
先に帰るようにと言った


嫌でございます
ここで待っております


チェヨン邸の前庭で
チュンソクの袖を掴んで
かぶりを振る


ポムや
聞き分けておくれ
医仙様は産み月
大護軍には なるたけ
医仙様のおそばに
いさせてあげたいのだ


それはわかるけど~
ポムはチュンソク様と
一緒に帰りたいんです
それに医仙様なら
いていいって言ってくれるわ


それはそうだが
今宵は大護軍と医仙様は
なにやらお話されたいことが
あるようなのだ


大護軍様がそう言ったの?


いや そうではない
あの方は 王様の警護に
一緒にお庭に行かれる
つもりだったのだ
だが 時々物思いに
ふけられておる
ああいう顔は医仙様のことを
ご案じになる時なのだ


チュンソク様は
大護軍様のことなんでも
わかるのね
ポムのことより大事みたい


拗ねたのか?


拗ねた 拗ねたわ


ポムがくるりと後ろを向いて
そう言った


ポムや
俺と大護軍は長い間
生死も苦楽もともに
戦を生き抜いて来たのだ
大護軍を案ずるなと言う方が
無理であろう?


後を向いたまま
ポムが頷く


ポムのからだをまた
くるりと自分の方に向けると
チュンソクが
下から覗き込むように
ポムに言う


なるたけ早く屋敷に戻るから
わかってくれないか?
寂しい想いをさせてしまうが


チュンソクはポムを
腕の中に 抱き寄せ
さっと辺りを見回すと
触れるか
触れないかとという
短い口づけを交わした


ポムが笑う


なんだか分からぬうちに
終わったわ


いいのだ
続きは帰ってからだ


チュンソクが笑う

拗ねているところも
甘えてくるところも
どれもこれも
可愛いポム

チュンソクは大護軍が
いそいそと医仙様のもとへ
家路を急ぐ気持ちが
今なら よくわかると
そう思っていた


ポムはこうして
屋敷へと先に戻っていった

ポムとチュンソクと
入れ違いにチェヨンが
邸に帰って来た


奥の間に入るや否や
チェヨンがウンスに
切り出した


イムジャ 今戻った
あのな 叔母上が


やだ 聞かない
乳母の話でしょう?
叔母様になんて言いくるめ
られてきたのよ


ウンスが耳を塞ぎ
つんと言った


イムジャ 話しを聞かぬと
埒があかない


だって 気が進まないの
何度も言ってるでしょう?


なにゆえ
そこまで嫌がるのだ?


ヨンはみぃを他人の
お乳で育てたいの?


チェヨンはちょっと
目を瞑り静かに言った


俺もそうであったぞ
だが 母上は 母上
乳母は 乳母だ
母上より乳母に懐いた
記憶はない
イムジャが母上なのに
変わりはあるまい


そんなこと
わかってるわよ
頭ではわかるの
でも・・・


そんなに嫌なのか?



ヨンが側室を娶るくらい



俺は側室など持たぬ


今のは言葉のあやよ
とにかく と~っても
気が進まないの
叔母様のこと
ヨンが説得して
私とじゃ話し合いが
平行線のままなのよ


はあ~
どちらも
言い出したら聞かぬ女人


チェヨンは困ったように
ため息をついた

ヘジャがふたりの間に入り
場を和ませるように


夕餉を運びましょうか?


と ウンスに聞いた


そうね そうして
ちょうだい


はい 奥様
ヘジャにお任せを


ヘジャが厨房に戻り
女官たちと
夕餉を運んで来る


いい匂い 海鮮汁ね
ヘジャの海鮮汁は
ほんとに美味しいものね
やっと食欲が戻って来たけど
食べ過ぎて太らないように
しなくちゃ


もう乳母のことは
決着がついたというふうに
ウンスがヘジャに
話しかける


お産には体力がいりまする
食べれる時に
たんとお召し上がりを


ヘジャが笑った


では 我々はこれで
後ほどまた 
膳を下げに参ります


ヘジャは頃合いを見計らい
女官を連れて
戻っていった


ふたりはまた向き合う


静かな 沈黙が流れた
チェヨンとて
ウンスの気持ちに添いたい
と思っていた
だが なんでも
一人で抱え込む性質の
ウンスの
負担ばかりが
大きくならぬかと
不安も頭をよぎる


いかがするか?


チェヨンが思案していると
厨房に戻ったはずの
ヘジャがぱたぱたと
走って来た


どおしたの?ヘジャ


それが・・・
玄関にお客様が


*******


『今日よりも明日もっと』
相手の気持ちはよくわかる
だが
引くに引けないこともある




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