マンボの店から
愛馬チュホンに跨がり
屋敷へと急いだ

吐く息が白い
だが心は温かい
腕の中のウンスが
愛しくてならない

ウンスは安心したように
チェヨンの腕の中に
収まり 軽く鼻歌を
歌っている


先ほどまでは元気が
なかったのではないか?


うふふ
この お花のおかげで
機嫌が直っちゃった


ウンスは髪に挿した黄色い
小菊にうれしそうに触れた


そうか


チェヨンの心も弾んだ
屋敷の門が見えて来た
テマンはマンボの店から
王宮に帰した
ふたりきりの夜

ウンスも先ほど会った
ジヒョンのことは
頭の隅に追いやって
忘れることにした

これから甘い夜が始まる
チェヨンの腕の中にいれば
なにも不安なことはない

チェヨンが馬小屋に
愛馬チュホンを繋ぐ間
ウンスは空を眺めていた

澄んだ空気を
鼻孔に吸い込むと
気持ちまで
すっきりする気がした

星がきらきらと輝いて見えた


心もからだもウンスを
欲しているチェヨンは
チュホンの世話さえもどかしく
早々に片を付けると
ウンスを抱き上げた


イムジャ 閨へ


だめよ
お風呂もまだだし
いろいろ準備が


準備など何もいらぬ


でも


この火はイムジャしか
消せぬ


困った人ね
後でお湯わかしてくれる?
お風呂にも入りたいの


ああ
相わかった


うん
ウンスは頬をチェヨンの
胸に寄せた
早鐘のように聞こえる
心臓の音
自分を欲するチェヨンの
心の声だと そう思った

チェヨンの首に腕を回し


幸せな夜にしてね


ウンスがチェヨンに囁くと
閨に向かう
チェヨンの足取りが
いっそう早くなった

離れられない夜が
ふたりを待っている


━─━─━─━─━─


ヘジャが不思議そうに言う


どこにも喧嘩をされるような
お話はなかった気が
致しますが?


そうよね
だって この夜は
幸せだったもの
妻としても 女としても


ウンスが甘く夢見る顔をして
チェヨンを見つめる
ヘジャは赤くなり俯いた


ううっん


軽く咳払いをして
チェヨンが言った


そういえば スリバンから
言付けがあったぞ
ジヒョンが新しい紅が
入ったとイムジャに
伝えてくれと言ってたと


あら そお
ジホかシウルに頼んで
持って来てもらえるかしら?
うふふ 楽しみだわ
それにしても王宮は不便よね
気軽に出入り出来ないもの
屋敷なら ジヒョンさんに
ついでの時に持って来て
貰えるのに


だから安全なのだ
誰でも出入り出来たら
チュンソクの嫁御一人に
任せてはおけぬ


うん まあ
そうよね


ヘジャが横から口を挟む


奥様は まことに
変わったお方
そのように旦那様と
関わりのあった妓生と
おつき合いされるとは


ウンスとジヒョンが
楽しそうに化粧の話を
しているのを思い出して
そう言った


あら だってジヒョンさん
いい人なのよ
女としても魅力的だし
ねえ ヨン


軽く睨むように
ウンスがチェヨンに確認する


さあ 
俺にはわからん


チェヨンはとぼけた


だが
イムジャが誰とでも
仲良くなれるのは
知ってるぞ
身寄りがないものや
寂しい
境遇の者のことになると
特に放って置けぬではないか
ジヒョンとて同じ
俺の知らぬ間に
いつの間にか仲良くなって


チェヨンの答えを受け流し
ウンスが続けた


ジヒョンさんは本当に
色々苦労しているのよ
だから話をしていても
奥が深いわ
妓楼の話しって
いろいろ面白いのよ


ジヒョンは 一体イムジャに
何を吹き込んでおるのか?と
チェヨンのまゆがぴくりと
わずかばかり動いた
そんなことにはとんと構わず
ウンスが続ける


それに
あの頃はまだ
高麗に戻ったばかり
あなたとも結婚したばかり
知り合いも少ないし
なんだか
自信がなかったのかもね
でも 今は
たくさん知り合いも増えたし
友人もいるから心強いわ
でもね チェヨン


チェヨンの耳たぶを
軽く掴んでウンスが言った


ジヒョンさんとは
ヨンの言う通り
何もなかったとしても
今は私もだいぶ
図々しくなったから
もしこの先
ヨンが浮気なんかしたら
覚悟してね
邸からヨンを
追い出しちゃうんだから
絶対許さないわよ
他の女の人に
うっかり触れることさえ
禁止よ き ん し!!


息巻いて言うウンスを見る
チェヨンの目が
なんだかとてもうれしそうだ
と ヘジャは微笑んだ


*******


『今日よりも明日もっと』
あなたのことを愛する女は
私一人で 十分よ



☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*

今回の「黄菊の咲く頃に」
八 九 十 は

本編「恋慕三十五~」の
すれ違うふたりの前を描いた
構成となっております


どうして喧嘩しちゃったの?
恋慕三十五になる前の
お話を・・・という
リクを頂きました

★sawa-lai様
ありがとうございました


アメ限を挟みまして
お話 もう少し続きます

おつき合い下さいませ




にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村