夕暮れ時は人々の往来で
賑やかな市

いい匂いの食べ物屋
美しく並べられた金物屋
綺麗な色の絹織物で
いっぱいの絹屋

そんな中 ウンスは
一軒の小間物屋に目を留めた
店の軒先には
季節外れの黄菊が一輪
白磁の花瓶に生けられている
黄菊に誘われるように
店先を覗いた

並べられた鮮やかな紅と
綺麗な入れ物に入った白粉
色とりどりの簪に櫛

ウンスが手に取り
魅入っていると
店の奥から
美しい女人と店の主が
出て来た


また ごひいきに


主は にこやかな笑顔を
その女人に見せた


ええ なにか目新しいものが
入ったら 店に知らせて
くださいな


へえ 
主が丁寧におじぎをする


女人は
ウンスの横を通り過ぎる時
軽く膝を曲げて会釈した

鮮やかな紅が艶やかに
口元に 引かれていた
ぞくっとするような
色気を感じる
嗅いだことのないいい香りが
ふわりと漂ってきた

白粉の香りだろうか?
それとも香かしら?
ウンスがなんとなく
その後ろ姿を見送っていると
女人がしなやかに振り向いて
テマンに向かって
言葉をかけた


おや テマンじゃないか
では そちらが
ヨンさんの奥方様かい?


ジヒョン姐さん


テマンは間が悪そうに
頷いた
女人はそれ以上何も言わず
ウンスのことを横目で見ると
また頭を下げて行ってしまった


だれ?


ウンスが
テマンに耳打ちをする


えっと あの その
ジヒョン姐さん
妓楼の女将です


ふ~ん
綺麗な人ね


そ そうですか?
俺は 医仙様の方が
綺麗だと思うけどな


ヨンの知り合い?


えっと あの
戦の祝勝会の時に
世話になる妓楼の女将で


ああ そうなの


ウンスは黙った
やけに居心地の悪い
ウンスの沈黙に
どうしていいかわからない
テマンは頭を掻いた

そんなテマンを見て
ウンスは思い直したように


さ マンボ姐さんのとこに
行きましょう?
お腹空いちゃったわ


と 笑いかけた


もやもやとした塊が
心の中を支配する
知りたいような
知ってはならないような


ウンスは
店先の黄菊をじっと見た


もしも あの女人とヨンに
昔 何かあったとしても
気にしちゃいけない
今は 私の旦那様
それに 私のことだけ
愛してくれてる
ヨンを信じなくちゃ


吹っ切るようにウンスは
大股で 
マンボの店を目指して
歩き始めた



━─━─━─━─━─


そのようなことが?
それで 浮気がバレて
喧嘩を?


ヘジャが言った


おい ヘジャ
人聞きの悪いことを
俺は浮気などせぬ


そうよ ヘジャ
そんなんじゃないの


ジヒョンに会ったなら
会ったと言えばよいものを
俺には
何にもやましいことは
ないぞ


チェヨンがウンスに言う


だって
あの頃は まだ結婚して
日も浅くて 
なかなか 自分の気持ちを
上手く伝えられなくてね
それで 意地を張ったのよ


ウンスは
つんと唇を尖らせた

チェヨンは
ヘジャがいるのも忘れて
思わず その柔らかな唇を
食む


やだ ちょっと
ヘジャがいるのに


そう言いながら
照れるように下を向いた


ヘジャには何も見えませぬ
どうぞ ご自由に


ヘジャがぼそりと告げ
出て行こうとするのを
ウンスが呼び止めた


もう ヘジャったら
話しには続きがあるのよ


*******


『今日よりも明日もっと』
どんなときも
どんなことも
あなたの言葉を信じたい





★blue moon様
以前 
奥女中のお名前にご応募に
頂いた「ジヒョン」のお名前
お借りしました
ありがとうございました



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