慶昌君様のお犬の名前と
同じだ


しとしとと降り続く雨が
あがった頃に
屋敷に戻って来た
チェヨンがぽつりと言った


え? うそ
本当に?


ああ なあテマン


はい 大護軍


ふーん 不思議なことも
あるものね
まさか 慶昌君様の犬?
な 訳ないか
まだ子犬だもの
どう見ても
お亡くなりになってから
生まれているものね


そうだな
そう言えば 慶昌君様の
犬はどうしたのであろう?
ああ 廃位が決まって
処分されるのは不憫だと
兵舎から逃がしたので
あったか?


チェヨンは考えた


まあいいわ
とりあえず夕餉の支度しなきゃ
ヨン ファンをよろしくね


ウンスが
眉間にしわを寄せて
考え事をしているチェヨンに
向かって言った


お 俺が?


だって懐いているもの


ファンはチェヨンの足元で
すりすりとじゃれている


あ 合いわかった
だが長くは無理だぞ


ウンスが夕餉の準備を
しているそばで
チェヨンがファンと
戯れている


手ぬぐいを丸めて
投げてやると
短い足で追いかけて
口にくわえて戻って来る


イムジャ 飯はまだか?
もういい加減疲れたぞ


なんども
同じことの繰り返しに
辟易としたチェヨンが
ウンスに尋ねる


後少しで出来るわ
待っててね


ああ


ファンは
まだ遊び足りないらしく 
なんども チェヨンの
足に飛びついては
手ぬぐいを投げてくれと
せがんでいる


意外と賢いな こいつ


チェヨンがふっと
笑って言った


その様子を脇で見ていた
ウンスはふふふっと
笑ってしまう


楽しそうに遊んでるじゃない
犬と遊ぶのも 
真剣勝負なのかしら?


そんなことを思ってしまう


ご飯が出来たわよ~


野菜の煮付けと
海鮮汁と
ご飯と 水キムチ

奥の間に
テマンとウンスが
夕餉を運んでいると
井戸で手や顔をざぶざぶ
洗ってから来た
チェヨンが席に着いた


やだ 
まだ濡れているじゃない
ヨン ちゃんと拭いたの?


ウンスは
椅子に座ったチェヨンの
雫のついた
頬や顎を喉元を
覗き込むように見つめて
懐から取り出した手ぬぐいで
とんとんと拭いた

ウンスの顔が
息がかかるくらいの
目の前にある

ついつい
ウンスの喉元や
色気のある首筋を見ながら
ごくんと唾を飲み込んで
チェヨンがテマンに言った


ファンを外へ連れて行け
首に縄を付けて
どこかに繋いでおけ


はい 大護軍


え~
なんでよぉ?
大人しいからいいじゃない
お外なんて可哀想だわ


ウンスが反駁する


イムジャ 犬は外で飼うもの
部屋に入れてはなりません


あら
天界では 部屋の中で
暮らす犬の方が多かったわ


此処は高麗です


チェヨンは静かに言った

ファンを抱き上げ
ふたりの間で顔を見比べ
どうしたらいいかと
困っていたテマンは 
チェヨンの
「早く行け」と言う声に反応し
ファンを連れて部屋を出た


イムジャ 飯は?


ぷいとふくれたような
ウンスにチェヨンが言った


ヨン 冷たいわ
ファンが可哀想


責めるような言い方に
チェヨンが答える


今 可哀想だからと
中途半端に情けをかければ
余計なことを覚えます
これからずっとこの屋敷で
飼う訳にもいかぬのだから
けじめは付けておかないと


チェヨンは諭すように話した


じゃあ じゃあ
飼えばいいじゃない
そうしたら 寂しくないし
番犬になるから心強いわ


イムジャ 
この状況で犬が飼えるか?
イムジャも俺も
屋敷に戻るのは夕方だ
誰もいないこの屋敷で
ひとり 留守番させて
それこそ可哀想ではないか


うっ・・・


チェヨンの言ってることは
もっともで
ウンスは反論の余地がない


わかった
もう 言わない


なんだか気まずい空気が
部屋に流れた
チェヨンもウンスも
口数少なく
居心地の悪いテマンも
自分の手元に集中するように
箸を動かして
もくもくと夕餉を食べた


時折 扉の外から
く~んと甘える声が
聞こえて来る
何度も鳴いてみるが
放っておくと
諦めたのか いつしか外は
静かになった


ウンスが小さな声で
チェヨンに言った


ごめん・・・なさい


ん?


だから
ごめんなさい
そうよね 私達は
今晩 世話をするだけの
通りすがりだもの
情が移るようなこと
いけないわよね


イムジャ・・・


ヨン
機嫌直してくれる?
ヨンが怒ってると
なんだか 
居心地が悪いわ


ウンスは
チェヨンを見つめた


無論
機嫌など悪くないし
怒ってもおらぬぞ
どうしたらイムジャが
わかってくれるか
それを考えていたのだ


よかった


ウンスが微笑んだ


もくもくと食べたから
なんだかご飯も
食べた気
しなかったし


そうだな


チェヨンも笑った

テマンはふたりが
笑いあっていることに
ほっとして
やっと元気よく
ご飯を食べ始めた

外に出されたファンは
いじけるように丸まって 
廊下の端に繋がれていた


半月が西に傾き出して
夜空に浮かんでみえた


*******


『今日よりも明日もっと』
どこから来て
どこに行くの?
あなたが幸せなら
うれしいのだけれど・・・






☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


シルバーウィークも
気がつけば あと1日

皆様
いかがお過ごしでしょう??
どうぞ 安寧に
お過ごし下さいませ


「お話面白いよ」と
思って頂けた方は
いいねと ポチっと 
よろしくお願いいたします (。-人-。)


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