葉見ず 花見ず 
赤い
相思花(サンサファ)が
揺れている

あなたは私を恋慕い
私はあなたを恋慕う



━─━─━─━─━─


せっかくの休みだというのに
屋敷の中では
気が晴れぬのではないか?


チェヨンが心配そうに
ウンスの耳元で尋ねる

厨房で朝餉を作るウンスに
ひと時も離れたくない
チェヨンは
料理の邪魔よと
回した腕を
振りほどかれても
振りほどかれても
また 絡ませていた


もうチェヨン
危ないじゃない


木の大きなしゃもじを
持ちながら
ウンスがちょっとふくれ顔


よいではないか
しばらくぶりに
ゆっくりイムジャと
こうしていられるのだから
本当は閨に逆戻りしても
いいくらいだぞ


これからいつだって
一緒なのに


ウンスは笑う


ああ そうだ
離れていた 四年の分を
取り返すのには
毎日 ずっと一緒でも
足りないくらいだ


チェヨンはまじめに
そう言って
ウンスの耳たぶに口づけた

首筋に顔をうめると
ウンスの優しい香りがした

もう一度ぎゅうっと
後から 包み込むように
ウンスを抱きしめて


なれど ほんとによいのか?
景色の良いところにでも
出かけようかと
思うていたのに


いいの いいの
こうして
一緒にいられるだけで
本当はうれしいんだから
うふふ


顔を横に向けて
ウンスがチェヨンの
唇に ちゅっと
音を立てて口づけた


このところ チェヨンは
倭冦討伐に明け暮れ
ウンスの寝顔を見るのが
やっとという夜が続き

会いたいのに会えない
顔を見たいのに見られない
もどかしい日々を
送っていた

久しぶりに賜った
貴重なお休み

高麗に戻ったばかりの
ウンスをどこかに
連れて行こう
外の空気を吸わせて
やろうと考えていた
チェヨンに

意外にもウンスは
屋敷でゆっくり過ごしたいと
そう告げた


何処かに出かけるよりも
今は この屋敷に
早く馴染みたい気分なの
だって
なんだかまだ
借りて来た猫みたいで
このお屋敷 
落ち着かないのよ
すごく広いんだもの

知っているのは
ご飯を食べる部屋と
厨房と
お風呂にトイレ
それから閨でしょう?


言ってから少し
顔を赤らめた


閨なんて
ソウルでは言わないわ
なんだか ちょっと
いやらしい響きがする
いかにも
夫婦の営みの部屋
みたいで恥ずかしい


なれど そうではないか
天界では何と言うのだ?


う~ん ベッドルームとか?
寝室とかかな?


ウンスの使う言葉は
天界語が混ざり
時々よくわからない
だが チェヨンは 
いちいち聞き返したりは
しない
話しの腰を折るより
ウンスの表情と
息づかいを読みとれば
どういうことなのか
何となくわかるように
なっていた


それに
夜も テマンと二人きり
さすがに屋敷の中を
うろうろ出来ないもの
だから 今日はお屋敷探検
ねっ


ウンスはふふふっと笑った


古くて重厚なだけの
先祖代々のただの屋敷
特に変わったところもなければ
特に見所があるとも思えない


まあ それがよいなら
そうするか?


うん
そうしよ
さてと 朝餉の出来上がり
うふふ 今朝は
上手にできたかな?


美味しそうに焼けた魚の
香ばしい匂いがする
つけ込んでおいた
大根と大根葉の水キムチ
目に鮮やかなかぼちゃ粥


ねえ 運んで食べよ


上手そうだな


チェヨンが笑って
朝餉よりも先に
ウンスの唇を食んだ


朝餉を食べてる間も
卓の下で
チェヨンの足が
ウンスの足にからまる


もう だめよ
ご飯中じゃない


チェヨンの足の親指が
つうっとウンスの
チマに隠れた
細いふくらはぎを
なぞっている

ぞくぞくするような感触を
顔に出さないように
ウンスは
もくもくと朝餉を口に
運んだ


その気にならぬか?


チェヨンの声が甘さを増す


知らない


ウンスはそう答えるのが
精一杯の朝の一時であった


*******


『今日よりも明日もっと』
葉は花を想い
花は葉を想う





☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


彼岸花 この時期に咲く
赤い綺麗なお花です
相思花・想思華
(そうしばな)
とも言われる
彼岸花をお話の題材に
選んでみました

ちなみに
9月20日の誕生花だそうです


連休は 
秋にちなんだ「恋慕」を何本か
お届けできるといいなと
思っております
おつき合い下さいませ




★はーちゃん様
彼岸花のお話 
お届けいたします
お楽しみいただけますように



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