昼を過ぎた辺りから
空の色が 灰色に変わった

秋の天気は変わりやすく
朝方は
爽やかに思えた秋の風が
今は 肌寒く感じる


坤成殿の回診の帰りに
ちょこっとだけ典医寺に
顔を出したウンスは
すでに ポムとともに
チェヨン邸まで戻っていた

居間として使う
奥の間には
ヘジャが入れた
ユジャチャ(柚子茶)の
甘酸っぱい柚子の香りが
広がっている


みんな 驚いていたわね
まさか ポムがまた警護に
つくなんて誰も思わないもの


ウンスがおかしそうに
笑って言った


はい 医仙様
楽しかったですね


あんぐりと口を開けたままの
トギの顔や
驚いてるくせに顔に出さない
チェ侍医や
すれ違う典医寺 皆の
首をひねった様子を
思い出して ポムは笑った
そんなポムをしみじみと
見つめ ウンスは
ぽつりと言った


よく 戻って来てくれたわ
ポム ありがとね


それを言うなら大護軍様です
すべてはあの方の采配で
ございますゆえ


確かに そうね
でも やっぱり
あの人の
提案を受け入れてくれた 
ポムとチュンソクさんに
お礼を言うわ


ウンスは微笑んだ


帰りはチュンソクさんが
迎えにくるの?


はい
一緒に屋敷に帰ろうかと
思ってます
まだ婚礼をあげてから
一日しか経っていませんし
お父様やお母様も
帰りを
待っておりますから


はにかむように笑った


そうよね 
新婚 ほやほやだもの
うふふ
チュンソクさん
優しい旦那様でしょう?


はい とっても


そう よかった


二人は静かにお茶を
すすった
それからウンスは
少しお腹が張るから
横になると言って
閨へと引きこもった

戸口の前にはヘジャが
控えている


医仙様 
お疲れなのかしら?


ウンスが閨へ行ってから
ポムが心配そうに
横にいるヨリに尋ねた


ここのところ婚礼も続き
そのご準備で
お忙しくされていました
疲れが溜まって
いるのかもしれませんね


そう? 
典医寺で
診てもらったときは
お腹のお子は
順調そうだったけど


少しお休みになれば
元気になられますよ


そうね きっと
医仙様が寝ちゃったら
ポムもする事がないし
ちょっと 横になろうかな
さすがに 眠くなって来た


ポムは小さな欠伸をした
昨夜はチュンソクとの
初めての夜で
明け方まで起きていた
眠ったのは ほんの僅かな
時しかない


では あちらのお部屋で
お眠りになっては
いかがでしょう?
ご案内致します


ヨリが空いている部屋へと
ポムを連れて行く


昼間だと言うのに
雨雲のせいか 
邸の中はひっそりと
静まり返っていた

前庭には霧が
立ちこめている


通された部屋は
しばらく使っていないのか
よどんでいる気がした
窓を開け新鮮な空気と
入れ替える

すっきりとしたところで
ポムは部屋の床に
ごろりと横になった

壁には美しい藤袴の花の
絵が飾られていた

少し寒気がして
ポムは借りた
薄い掛け布団を
肩まですっぽりかぶると
昨夜の幸せな時を
思い出しながら目を閉じた


チュンソク様に
早く会いたい
いつ 
お越しになるかしら


ポムは呟くと
いつしか
うとうと 眠りについた


ウンスはふかふかの
布団に包まれて
閨でまどろんでいる

ヘジャも婚礼が二つ終わり
ポムがまたウンスに
仕えることになって
すこうし 気が抜けたのか
閨の戸口の前で
めずらしくこくりこくりと
うたた寝をしていた


邸の中は水を打ったように
しんと静まりかえり
雨がしとしと降り始めた


*******


『今日よりも明日もっと』
藤袴
忘れられない 香りを残して





☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


ん?なにが起きるのかな?
おつき合い下さいませ


藤袴は秋の七草
花言葉は「あの日を思い出す」




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