天高く馬肥ゆる秋

見事に晴れ渡った空の下

パク家の一人娘ポムと
ウダルチ隊長 
ペク・チュンソクの婚礼が
パク家の庭で行われる


朝から邸のウンスも
高ぶる気持ちを
抑えられずにいた
妹の様に可愛がって来たポムが
チェヨンが最も信頼する部下
チュンソクに嫁ぐ
これ以上の良縁はないと思い
自分の婚礼の様に
心躍らせていた


朝餉を簡単に済ませると
部屋で念入りに支度を始める

ウンスのチマは
薄紅(うすくれない)色で
同系色の蓮の花が
裾に刺繍されていた

色とりどりの花の
刺繍がちりばめられた
白いチョゴリの上に

今日の澄んだ青空のような
天色(あまいろ)の
唐衣(タンウィ)を纏う
金糸で細かく花紋が刺繍がされ
肩や背中にはチマと揃いの
蓮の花の刺繍が施された 
きらびやかな装いであった


ねえ やっぱり派手じゃない?
天界の婚礼衣装みたいに
きらきらなんだけど


よくお似合いです


髪を結い上げ翡翠の簪を挿した
明るい紅を口元につけて
頬に赤みを刷毛で
さらっと塗ると
白い肌が余計に引き立ち
ことのほか美しく見えた

部屋に入って来たチェヨンが
息をのむように妻に見とれた


イムジャ 
嫁御より
美しくしていかがする


もう そんな訳ないでしょう
今日はポムが誰より綺麗よ


ウンスはまんざら悪い気がせず
ふふふっと笑って言った


そうであろうか?


目の前の妻以上に美しい女人が
この世にいるとは到底思えない
チェヨンであった

妊婦のウンスに
付き添うヘジャもいつもの
実用服ではない
小豆色のチマチョゴリを着て
ウンスに貰った
真珠の簪を挿している

チェヨンは麒麟の文様の
高麗軍ウダルチの正装


そろそろ行くか?
チュンソクの嫁が
首を長くしてイムジャを
待っておろう


うん そうね


ヘジャが部屋の外で控える
ふたりは当たり前の様に
唇を軽く会わせた


紅がついちゃう


ウンスが小さな声で言って
チェヨンの口元を
細い指先でそっとなぞった




秋晴れの中
ふたりを乗せた輿は
ゆっくりとパク家に到着した

正2品御史大夫の一人娘
ポムの婚礼とあって
招待客も数知れず

広い庭の真ん中に
婚礼が執り行われる
むしろが敷かれその上に
漆塗りの立派な
婚礼卓上が置かれていた

ウンスはちらりと
それらを横目でみながら
古式ゆかしい婚礼に
想いを馳せる
そして今日の主役の元へ
ヘジャとお供に
急ぐのだった

ウンスのそばにいたい
チェヨンだが
さすがに 新婦の控室まで
ついては行けない
仕方なくヘジャに頼むと


ヘジャにお任せを


しっかりとした声が
帰って来た

チェヨンはパク家の女中に
案内されて客間に通され
そこでパク家所縁の
高官たちと 仕方なく
時間を過ごすはめとなった


花嫁は綺麗に
着飾られて椅子に腰掛けていた
隣には先についていた
ヨンファがいた

ポムは
紅いチマに緑のチョゴリという
新婦の出で立ちの上に
隅々まで金糸が縫い付けられ
鶴と亀の模様が肩や背中や
袖に大きく刺繍された
鮮やかな紅赤色の
ファルオッを身につけていた

母親の思い入れ通りの
絢爛豪華な花嫁衣装
小柄なポムが
重そうに首を振る


医仙様~
よう来てくださいました
医仙様 とてもお綺麗だわ


ポムは着飾ったウンスに
ニコニコ顔だ


うふふ ポムこそ綺麗よ
どこからみても
美しい花嫁ね
チュンソクさんが見とれるわ


なれど~~~この衣
重うて敵いませぬ
助けてくだされ


半分本気の涙声に
ウンスは笑った
ヨンファが隣でくすりと
笑う


あらあら 花嫁さんが
泣き言は駄目じゃない
少しの辛抱よ
そうそう お化粧をね
してあげる
約束だったでしょう
ヘジャここに


ヘジャは持って来たウンスの
化粧道具を広げた

おしろいが掛からないように
花嫁衣装にふわりと布を
あてがうと

さささっと
ベースメイクを仕上げていく


ふふっ 天界式に
綺麗にしてあげるわ


顔に陰影をつけると
目の回りにも
ふんわり頬紅を差した
口元は衣に負けぬよう
美しい赤い色を選んだ

さなぎが蝶に変わるように
子どものポムが大人の女人へと
見違えるように美しくなる


う~~ん 綺麗
我ながら上出来だわ


ウンスもご満悦


あら?ねえ 
確かこの時代には
もう
ヨンジコンジがあったわよね


はあ? 何ですかそれ?


頬に赤いシール
えっと 紙を貼るのよ


はあ? 
そんなの見たことないです


あれ?そうだっけ?
自分のときはどうしたかしら?
う~ん 
何もしてなかったような・・・


その よんなんとかとは
なんでするか?


ポムが興味津々にウンスに
尋ねる


ああ なんでも邪気払いの
おまじないだそうよ
幸せになるおまじない


ポムも天界式
やりたいですぅ~


うふふ
困ったわね 
赤いシールはないし
そうだ この頬紅を
ふわっと・・・
うん いいわ 
この方が 血色もよく見えて
チュンソクさんも
きっとびっくりするわね
ポム 幸せになるのよ


ヨンファも頷く


ほんとに綺麗よ
ポム
幸せになってね


ありがとうございます
医仙様
姉上様


そこにやって来た母親も
娘の美しさに
一瞬我が娘かと目を見張った


あの おてんばで
頑固で 言うことを聞かない
私を困らせてばかりのポムが
ああ 本当に嫁に行くのだね
ポムや よい殿方と巡り会えて
本当によかった


母親は目頭を押さえた
ポムもぽろりと涙を見せた


さあさあ お祝い事に
涙は似合いませんわ
そろそろ お式の時間でしょう
チュンソクさんが来るわよ


ウンスが明るく言って
ポムの手を引くと
婚礼が行われる庭に向かった
ウンスが転んで
その身に何かあってはと
その後を 守るように
ヨンファとヘジャが
しっかりとついていた


慶事を盛り上げるように
庭の隅で音楽が演奏されている

溢れかえる客人で庭はにぎやかな
様子であった
ポムの父や兄たち 兄嫁 
その子どもら
チュンソクの家族や親戚

高麗の高官や役人もいる
その影には 二人と最も親しい
典医寺の者たちと
トクマン テマンがいた

美しい花嫁と
美しいウンスが庭に現れると
口々に感嘆の声があがった

そして 馬に跨がり
いよいよ
新郎 チュンソクが到着した


*******


『今日よりも明日もっと』
門出にふさわしい
秋晴れの良き日
二人の幸せを願う






☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


いよいよ始まりました
華燭の典
今日は リアルに大安吉日
皆様も
どうぞご臨席くださいませ



にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村