空が紅に染まって
夕餉の時刻になる頃
チェヨンが邸に戻って来た

出迎えに来るはずの
ウンスの顔が見えない

昼間に寄った時は
キム・ドクチェに嫁いだ
ヨンファと楽しそうに
針仕事をしていたのに

ヘジャがチェヨンの
顔色を読み取り言った


奥様はお疲れのご様子で
お閨でおやすみに
なられています


そうか
大事ないか?


はい
少しはしゃぎ過ぎたと
お話になられてましたが


分かった


チェヨンはウンスのいる
閨に直行した

寝台の上に
ウンスは寝ていた

チェヨンの気配に気づくと
起き上がろうとした


よい    そのままで
疲れたのか?


寝台の縁に腰掛けて
チェヨンがウンスの
顔を見つめた


ヨンファが帰ったら
急に静かになったから


ウンスはチェヨンの
膝の上に頭を乗せ
甘えるように
擦りよった

鍛錬した太腿は
筋肉がみっちりついて
弾力がある


固い太腿
鍛えてる筋肉だわ


指で押しながら
くすりと笑った


そうか?
イムジャが
柔らか過ぎるのだ
イムジャの膝枕は
気持ちが良い
みぃが生まれたら
忙しくてもう
してもらえぬかな?


チェヨンは膝の上の
ウンスの髪をゆっくり
梳きながら    尋ねた


どうなのかしら?
生まれたら
やっぱり大変よね
私    考えてみたら
ソウルでは
周りに妊婦もいなかったし
赤ちゃんに縁もなかったわ
まあ  もちろん患者に
赤ちゃんはいたんだろうけど
担当したことないし


なんだ   産むのが
心配になってきたのか?


うん   初めてのことは
ちょっと怖い


だが生まれるのは
まだ先であろう
いまから気に病んでも


うん
そうだけど
そろそろ臨月だもの
一人でいると
いろいろ考えちゃって
私   頑張れるかしら?


イムジャは俺が
知ってる中で
一番だ
頑張り過ぎて
はらはらする位だが


そお?


ああ
もっと気楽に構えよ


うん    そうね


ウンスは頷き目を閉じた


ヨンに髪をいじられるの
気持ちがいいわ


これでよければ
いつでもしてやるぞ


ほんと?


ああ


チェヨンは頷き
それから聞いた


そう言えば


ん?


キム殿の嫁御とは
ゆっくり話せたか?


うん
結婚したばかりなのに
なんだかすっかり
落ち着いた綺麗な
奥様になってたわ
大事にされてるのね

キム・ドクチェさんは
今留守だから
屋敷にいても暇だって
明日もまた来てくれるのよ


そうか
良かったな


うん
ポムが急にいなくなって
寂しくなったから
良かったわ


そうだな
だが
寂しがってる暇はないぞ
チュンソク達の婚儀も
すぐであろう
パク殿から媒酌人も
頼まれておるし
イムジャが
無理をせぬかと心配だ


大丈夫よ
婚儀の最中に
生まれることは
ないから


ウンスは笑う


そうか  なれど
いつでもそばにおるからな


うん


チェヨンがウンスの
額に唇を当てる
鼻の頭   そして唇と
丁寧に優しく
口づけていると

突然ウンスのお腹が
くぅと可愛いく鳴った


うふふ  
ヨンの顔見て安心したら
お腹が空いたみたい


それは良かった
パクパク食べるイムジャは
見ていて気持ちがよいからな
さて
飯を食ってくるか


うん


チェヨンがウンスを
ゆっくり抱き起こし
ヘジャの待つ
夕餉の支度が整った
部屋へと向かう


なんだか
甘くていい香り


パム(栗)か?


ああ   そうだわ
パム(栗)だわ
もう   秋なのね
献立は何かしら?


ウンスが
幸せそうに笑って言った


夕餉の膳には
ヘジャの心尽くしの料理
焼き魚や水キムチとともに
ほこほこの黄色の栗の
パムバプ(栗ご飯)と
パムチョ(甘露煮)が
美味しそうに並んでいた


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『今日よりも明日もっと』
あなたと食べたパムの味
あなたみたいに
ほっこり優しい味だった