月明かりもなく
星も雲に隠れた夜

提灯の灯を頼りに
チュンソクとポムは
武閣氏の部屋に戻る道を
歩いていた

チュンソクの後ろを歩くポムは
ぐずぐずと泣いていた


医仙様    
お寂しそうで

新しい暮らしを
始めたはがりだし
ヨンファさんもいないし
普段あんなに
明るい方なのに
ポムはなんだか
悪いことを
しているみたいに思えたの
やっぱり迎えに来て貰って
よかった
泣き顔になりそうだったから


仕方ない
これも決まりゆえ
武閣氏を辞めること
後悔しておるのか?


そうじゃないけど
大丈夫ですよとしか
言ってあげられないなんて


きっと医仙様はわかって
くださる
それに大護軍が付いている


はい


医仙様が大切なのだな
やはり  悋気しそうだ


チュンソクが振り向いて
ポムに笑いかけた


チュンソク様ったら


泣き顔がちょっと笑った


ポムはチュンソク様を
誰よりお慕いしています
でも医仙様は
ポムにとって特別なお方


わかっている


チュンソクは足元に
提灯を置くと
ポムを抱き寄せた


武閣氏姿もこれで見納めか
ポム
よく見せてくれ


チュンソクはポムの肩に
手を置くと
その姿を見つめた


よう似合うておる
刺客に立ち向かい
医仙様を身を呈して
守ろうとした
ポムの健気な姿に
惚れたのだ
そなたのことは
俺が守ろうと思ってな


はい


後悔はさせない


はい


チュンソクが
頷くポムを引き寄せた
暗がりの中   二人の
唇が合わさる

二人はこれ以上ないくらい
固く抱きしめ合った


遠くでふくろうの鳴く声が
こだましていた


*******


朝   邸に迎えに来るはずの
ポムの姿が見えなかった

代わりに叔母チェ尚宮が
表に立っていた

ヘジャに呼ばれ
慌てて迎えに出ると
すまなそうに
チェ尚宮は言った


ポムが武閣氏を辞めた
見送られるのは
嫌だと言ってな
早朝   屋敷に帰って
しまったのだ


え?
ちゃんと
送り出したかったのに
あの子ったら
最後まで心配かけて
困った子ね


ウンスは苦笑い


昨夜の様子を思い出した
チュンソクが迎えに来たと
慌てて帰っていったけど
もしかしたら
ポムはポムなりに
寂しさを我慢したのかな?
なんだかそんな気がした


そう言う気持ちを
さらけ出す相手が
出来たってことか


ウンスは少し微笑んだ
チェ尚宮はすまないついでと
言って


実は後任を選べておらぬ
ゆえに   ウンスを
心配された王妃様が
今日は邸にて
ゆるゆると過ごすようにと
言付けを頼まれてな
王妃様のお身体は
お健やかなご様子
心配いらぬそうじゃ


はあ


お腹の子の産着でも
縫っておるがよい
そうそう
ヨンファが遊びに
来るようなことを
言っておったしな


ヨンファが?


ああ
キム殿が国元に一時
戻られたとかで
時間が出来たそうだ


あら
輿入れしてまだ日も浅いのに
ヨンファ   寂しいですね


ああ   なればこそ
キム殿も王宮に預けた方が
安心と思うたのであろう


そうかもしれませんね
でも   うれしいわ
ポムがいなくて寂しかったし
ヨンファが来てくれたら
気も紛れるし


ああ   ゆっくり休むといい
ウンスも少しばかり
忙しかったであろうから


はい   ありがとうございます
叔母様   お部屋ももうだいぶ
片付いたんです
上がって行ってくださいね


ああ   ありがとう
だが   
王妃様を残して来ているゆえ
やはり此度は戻るとしよう
いずれ日を改めて


そうですか?
じゃあ   せめてヨンに
会ってから


それもよい
どうせまだ寝ぼけておろう
ウンスや
奴の無体など捨て置け
身体を大事にするのだぞ


は?
え?


そこに
ふぁ~と欠伸をしながら
チェヨンが顔を見せた


叔母上   朝っぱらから
何用だ?


ほらな
やはり寝ぼけておる
ヨンや
ウンスは今大事な時
自分の欲を押し付けては
ならんぞ


あ?


チェ尚宮はふたりの首を
指差して静かに言うと
チェヨン邸を後にした


まったく叔母上には
かなわぬな
ああ    これか
今朝のはまだ
かわいいもんだがな


チェヨンはウンスの
喉元に赤くついた印を
指でなぞる


え?
あら   まあ


ウンスが顔を赤らめた
チェヨンの首の横には
くっきり
自分が残した跡がある


やだ
ちょっと   恥ずかしい


構うもんか
夫婦が仲良くしていて
何が悪い


ふぁ~とまた
大きな欠伸をしながら
チェヨンが言った


イムジャ
腹がへったな
朝餉にするか
だが   その前に


チェヨンは柔らかくて
甘い極上のウンスの唇を
食むように口づけたのだった


*******


『今日よりも明日もっと』
あなたに寄せた想いの分だけ
あなたを幸せに出来たらいいな








おはようございます

何かの不具合?で昨夜は
お話がアップ出来なくて
。゚(T^T)゚。  

なぜなかぁ?と   凹みました

差し替えたこのお話
無事に皆様の元へ
お届け出来ますように



自然災害の爪あとが残る週末

少しでも   心穏やかに
時を過ごせますように