一人で王宮に
出仕したチェヨンを
見送ってから
ウンスはヘジャと
警護もかねて
チェヨンと入れ違いに
朝 王宮からやって来た
ポムとともに引っ越しの
荷造りを開始した

出産予定まで
まだひと月以上ある
産後もしばらく王宮に
留まることになるから
この屋敷に戻るのは
ずいぶんと先になるだろう


時々様子を見に戻ってね


ウンスが奥の間から見える
山桜の木を見つめながら
ヘジャに言った


はい 奥様


庭もちゃんと見てね


はい 奥様


それから・・・


奥様 大丈夫にございます
留守の間はスリバンに
見回りを頼んだと
旦那様も言ってらしたでは
ないですか


そうだけど・・・
なんだか 自分の分身を
置いていくみたいで
心配なのよ


ポムがにこりと笑って言った


なんだか 恋人とお別れ
するような勢いにございます
医仙様


そうかも知れないわ
それだけ大好きなの
この家が


奥様 ご心配なく・・・
母も様子をみがてら
掃除に参ると
言っておりましたし


ソンオクが?


はい 
母はこの屋敷に
人の気配がない時も
ずっと守ってきましたゆえ


そうだったわね
ああ でもやっぱり
もう一日 こっちに居ようか
いや だめよね
だってあとで旦那様が
迎えに来るもの


昼を過ぎた頃に
王宮からチェヨンが
ウンスを迎えにくることに
なっていた


今朝もぎりぎりまで
別れを惜しみ
門から見送るウンスの
寂しそうな表情を見て
何度も抱きしめて
口づけをかわし
やっと 出仕したチェヨン


やれやれ どんだけ
離れるかって
ほんの半日のことなのに


ヘジャは半ば呆れ 
半ば諦め
半ばうらやんで
朝の二人を思い出す


奥様 だいだい荷物は
これくらいでよろしいかと
向こうに
何でも揃っておりますし
奥様と旦那様の衣や
身の回りの物さえあれば・・・


そうよね
でも 
それを選ぶのが難しいの
どれもこれも
手元においておきたいし
でも あまり向こうに運んだら
この屋敷が寂しくなるかな


ウンスは独り言の様に
呟いて 品物を選別していた

こうして荷物を眺めると
チェヨンがウンスに
買ってくれたものでいっぱい

屋敷丸ごと 
チェヨンの愛情の現れなんだ 
とウンスは思った

気がつくと荷車三つ
ほんとは まだま運び出した
かったが


足りなければヘジャが
取りに参ります


と言う言葉に従うことにした


昼をまわってわずかばかり
過ぎた頃に
チェヨンが屋敷に戻った


運び出す荷物は
これでよいのか?


ヘジャとポムと下男が
荷車に積んだ行李(こうり)の
山積みを見てチェヨンが言った


うん なんだかんだで
結構あるのよ
でもこれでも
随分減らしたのよ


まあ よいが・・・
王宮の邸で 
イムジャの気が休まるように
持っていきたい物は
みんな持つがいい


うん


では参るか?


もう一度だけ屋敷の中を
見て来てもいい?
離れるとなると寂しくて


ああ それくらいの時間
構わぬ


ウンスはチェヨンに手を引かれ
屋敷の奥に向かった

くっつかないと入れない
狭い湯船の湯殿が右手に見えた
廊下を進むと 
一緒にご飯を食べたり
ゆっくりくつろいだり
時には口づけをかわした
奥の間がある


あ 大変 
忘れるところだった


壁に奉った安産祈願のお札

チェヨンが丁寧に剥がし
懐に収めた


あっちの邸でも
毎朝お参りしなきゃね


ウンスが微笑むと
チェヨンが頷いた


渡り廊下を渡って
ウンスの部屋を見回す
簪も 衣もほとんど荷物に
詰め込んでがらんとしていた

隣の閨の中
布団はそのままにしてあった


今度戻る時には
家族が増えているな


チェヨンがウンスの髪を
なでながら言った


そうね


ここではじめて結ばれた
ここで毎朝口づけを交わし
ここで幸せな夜を過ごした


直ぐに戻るから
待っててね


閨の中に向かって
ウンスが言った


窓から山桜が見える
遠くに月桂樹も見えた


ウンスや
もっと幸せになって
ここに戻ろう
父上も 母上も
待っていてくれるであろう


うん そうね


なんだか 
ぽろりと涙が出た


ウンス・・・


チェヨンが
ウンスの気持ちを
なだめるように
優しく口づけた


大丈夫よ
新しい王宮暮らしも
楽しみだわ
だって 
あなたがそばにいるもの


ああ いつだって
そばにおる


うん


ふたりはヘジャとポムの待つ
表に戻る

ヘジャが静かに門を閉めた

ぎいいと音を立てて
屋敷の門が閉まるのを
ウンスは見つめていた


さあ 医仙様! 
王宮で
皆が待ってますよ


ポムが元気よく言う
ヘジャが隣で頷いた


そうね


ウンスは隣のチェヨンを見て
微笑んだ
チェヨンが力強く頷いている


チェヨンとウンスを
乗せた輿が
秋風の中を
王宮に向かって
ゆっくりと前に動き出した


*******


『今日よりも明日もっと』
毎日が 
新しい明日の始まりの日






☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


ブログを
お読みいただいている
皆様の中にも
もしかしたら 
大雨 洪水の被害に
遭われている方が
いらっしゃるのでは
ないかと・・・
皆様 大丈夫でしょうか?


被害に遭われた皆様
どうか一日も早く平穏が
戻りますようにと

祈っております



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