回診の折
チェ尚宮は困ったように
ウンスに告げた


ポムが役を辞すると
言うのに   まだ
後任が定まらぬ
そなたに預けると
次から次へと
縁を結んで嫁に行く
ではないか
これ以上武閣氏に
辞められてもかなわぬし


本気とも冗談とも取れる
言い様であった


そんなこと言われても


ウンスが苦笑いをした


叔母様    私   少し早めに
こちらの邸に越して来ようかと
ヨンとも話をしているのです
警護の衛兵さんもいるし   
武閣氏がいなくても
きっと大丈夫ですよ


そう言う訳にはいくまいて
あいつのことだ
ウンスを
心配して役目を放り出さぬ
とも限らぬ


まさか


ウンスは笑った


いや   ありかも?


ウンスは真顔になった
王妃様が二人のやり取りを
ご覧になりながら
うれしそうに言った


そうか    
王宮内に住むこととなれば
妾も天の姉様の邸に
行けるのじゃな


あら    そうだわ
王妃様が見立てて下さった
お邸の調度品    
どれも素敵でしたわ
引っ越しが終わったら
是非   遊びに来て下さいね


ウンスが言うと
王妃様が優しく微笑まれた



産み月まで
あとひと月余り

お腹の張ることも多くなり
動悸も起こる
胃腸が圧迫されて
食も進まず
色々と不安になることも
多かった

本宅を離れるのは寂しいが
屋敷と王宮を輿で
往復するだけで
疲れるのも事実
チェヨンの言う通り
王宮の邸には利点がある
大事を取った方が
良いかもしれないと
ウンスは思っていた


典医寺の務めは
このところは
王妃様の回診が主な役目で
普段の診察は
チェ侍医とサラに
任せることが多くなった

雨もあがったことだし
持って来る荷物の仕分けを
するため   ウンスは
明るいうちにチェヨンに
付き添ってもらい
屋敷に帰ることにしていた

チェヨンの手が空く時刻を
典医寺で待つウンス
ヘジャは一足先に
屋敷に戻っているはずだ


速い足取りでチェヨンが
典医寺に迎えに来た
陽が西に傾き始めていた
風が強く吹いている


待ったか?


ううん
お役目大丈夫?


ああ   少しの間抜けるくらい
大したことはない
チュンソクに任せたしな


またぁ?
ポムに怒られちゃうわ


部下が上役の用を
言い付かるのは当たり前
気にするな


気にするわよ
ポムって
意外としっかり者なのよ
チュンソクさんの為なら
文句の一つや二つ
言いに来るわ   きっと


まあ   それも
イムジャには楽しいであろう


そ   そうかな?


ああ
さて   参るか?
待たせた詫びに市見物を
しながら帰るか?


ほんと?


ああ   
無理のないようにな


大丈夫よ
しばらく買い物にも
行ってないし
それに王宮の邸に
落ち着いたら   ますます
出かけなくなるから
行ける時に行きたい!
チュンソクさんには悪いけど    
あなたとデート出来るなんて


ウンスはにこにこと
こぼれる笑みを
隠しきれない


輿までの道のりを
ウンスはチェヨンに腕を絡め
自分の方に引っ張ると
耳たぶに唇を
押し当てるように
チェヨンに尋ねた


ねえ   もう   
拗ねるのはやめたの?


俺は拗ねてなどおらぬぞ
それに  
もし悋気を起こしても
イムジャが鎮めてくれる
であろう?


うふふ
さあ?どうかしら?


ウンスが勿体をつけて
笑った


イムジャ   
意地悪を言うなら
悪ふざけでし返すぞ


あら
望むところだわ


ウンスの涼しげな返答に
チェヨンの心は熱くなり
思わずその頬に
チュッと
口づけたのであった


輿の中では
これでは済まぬぞ


*******


『今日よりも明日もっと』
どんな時にも
微笑みの輪が広がりますように








台風や大雨の深刻な被害が
広がっているようで
心が痛みます


同じ言葉の繰り返し
でも言わずにはいられない

皆様
安寧にお過ごしください



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