どんよりした曇り空は
雨模様に変わった


結構   降ってるわね


典医寺の診療室の窓から
空を見上げてウンスが言った


そうみたいですね


昼も過ぎて
午後の診療が終わりに近づき
そろそろ患者も引けていた


昨日の宴の後で
お疲れではないですか?


チェ侍医が聞いた


ええ   大丈夫よ
少し身体がだるいかな
お腹もちょっと張ってるかな
でも   いつものことだし


医仙様


チェ侍医は険しい顔をして


ご無理をなされては
なりませぬ
こちらへ


診察台を指差した


サラ
医女サラはいるか?


姿の見えないサラを呼んだ


はい   ただいま


サラが奥から戻って来た


医仙様の脈を
それから浮腫みも


はい
わかりました


サラが言われた通り
ウンスの脈を診る


特に変わった様子は
ございませんが
浮腫みはあるようですね


そうか


チェ侍医はサラに向かい
頷いてからウンスに言った


医仙様
この時期は水毒の症状も
起こりやすいもの
塩は控えめに
決して疲れぬように
十分にお休みを


わかった
気をつけるわ


ウンスが神妙に言った


それにしても
大護軍にも釘をさして
おかねばなりません
医仙様に
夜な夜な
無理をさせぬようにと


不意打ちのチェ侍医の
言葉に
ウンスの声が裏返る


だっ   だいしょうぶよ
それにヨンだけが
悪い訳じゃないし


ごにょごにょと
思わずチェヨンを庇い
なんだかおかしなことを
口走ってしまったと
ウンスは赤くなって俯いた


チェ侍医が返答に
困ったように微笑んだ
話題を変えるように


こちらの邸に移られては
いかがですか?
医仙様の負担も減ること
でしょうし


と   言った


ふふっ
大護軍と同じこと
言うのね


ウンスが面白そうに
笑った


くしゅっとくしゃみをした
チェヨンが
ぶるると身体を震わせた


なんだか
悪寒が走った


兵舎の部屋で
チュンソクを目の前に
チェヨンが呟く


冷えましたか?


いや
これは何かよからぬ
噂話の気がするがな


チェヨンは苦笑した


朝はまだ頭が重かったが
ウンスの煎じた薬は
よく効いて
すっかりすっきり顔の
チェヨン


昨夜はすまなかったな


迷惑をかけてたわ
と   ウンスに言われ
チュンソクに詫びた


いえ
大変だったのは医仙様では?
大護軍がお休みに
なられたあとも
気丈に役割を果たして
お出ででした


そのようだな
無事に宴も終わったようだし


はい


次はお前達だな
そこでだが
ちと頼まれてくれぬか


はあ


なんともしまりのない
チュンソクの答えが返ってきた



雨は止む気配もなく
ぱらぱらと音を立てている

夕刻    女官のヨリが
ウンスを迎えに来た


今宵は天気も悪いゆえ
こちらのお邸に
お戻りをと   
大護軍様からの
お言付けにございます


あら?
そおなの?


はい
先ほど   テマン様が
お邸にいらして


そう    ちょうど良かった
そろそろ帰ろうと思ってたの
今夜もこっちに泊まるのね


はい   医仙様


ねえ    ヘジャは
向こうの屋敷に戻ったかしら?


はい   
お屋敷の様子を見てくると
オリにそう言い残したようで


じゃあ    今夜は戻らないわね
こう雨がひどくちゃ
行ったり来たりも大変だもの


雨がざあざあと降り
典医寺も皆   慌ただしく
帰り支度を始めた

ウンスはヨリとポムに
付き添われて
典医寺から少し離れた
邸へと向かってる

傘に落ちる雨音が
激しさを増す

急に目の前に稲妻が走り
雷が鳴り響いた

驚いたウンスは身体が
硬直して身動きが
取れなくなってしまった


怖い


思わず呟いたのを
ポムが聞いた


大丈夫ですよ
まだ音は遠いから
早くお邸に急ぎましょう


うん   そうよね


ヨリも後ろから心配そうに
見ている

その時ウンスには
雷を背にして走り寄る
黒い人影が見えた


ヨン!


ウンスの顔が輝く


雷が鳴ってたゆえ


チェヨンはそう言うと
大きな傘に
ウンスを抱き寄せた


びっくりする
ヨリのそばで
ポムが


これくらいで驚いてちゃ
医仙様付きの女官は
できませんよ


と笑う


あの泣く子も黙る
鬼の大護軍様と医仙様が
目の前で抱き合っている
目を白黒するヨリ


ふふっ
そのうちわかりますよ
お二人のいちゃいちゃ振りは
ものすごいですから


母親くらい年の離れたヨリに
ポムは得意げに話した


はあ   それでヘジャさんが
言ったことがわかりました
お二人のことは
見ざる   聞かざる   だって


ウンスはチェヨンに
肩を抱かれ
大きな傘に一緒に入り
やっと安心したように
力を抜いた


ありがとう
ヨン   来てくれて


ああ
大事なイムジャとみぃに
何かあっては大変だからな


チェヨンは一層力を入れ
ウンスを抱き寄せ
邸へと向かう


雨はひどくなる一方で
足元もぬかるんできた


早く湯に浸からねば
冷えてしまうな


冷えたらヨンが暖めて


耳に届くウンスの声が
すでにチェヨンを
暖めていた


*******


『今日よりも明日もっと』
何より大切なあなたのもとへ






台風の影響を受ける街の
皆様
十分   お気をつけくださいませ



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