薄紅色に西の空が染まり
日が沈む頃に
ヨンファの
結婚披露パーティーが
始まった

チェヨン邸の前庭は
典医寺の仲間や武閣氏
それに兵舎が近い
ウダルチもちゃっかり
便乗して
たくさんの人で
溢れ返り
たいへんな賑わいを
見せていた

前庭には篝火が焚かれ
油灯が足元を揺らして
幻想的な夜の宴を演出し

白い布がかけられた
大きな卓に
収まり切らない料理が乗る

ヘジャが蒸した祝いの餅
ウンスが準備したキンパ

ふんだんな果物
油で揚げた
油蜜果(ユミルグァ)
ウンスの好きな饅頭
肉料理

昨日からヘジャや
女官たちと下ごしらえをして
王妃様の差し入れにも
助けられて
豪勢な料理が並んだ

ウンスが考えた
立食パーティー

皆   思いおもいに歓談し
酒を酌み交わし
料理に舌鼓をうった


何より宴の席で
一番目立っていたのは
一段高いところに座る
新婦ヨンファ

両肩に金糸で
鳳凰の刺繍が付いた
あでやかな
緑色のウォンサムに
身を包んだヨンファは
誰よりも輝いて見えた

隣に座るキム・ドクチェも
満足そうに新妻を見つめている

ヨンファに懸想していた
若いウダルチも
ヨンファの輿入れに
密かに涙したと
トクマンが面白可笑しく
武閣氏に披露していた

ウンスは疲れないようにと
新郎新婦の近くの椅子に
腰掛けていた

隣にはチェヨンがぴたりと
付いている

チェヨンは
時折  キム・ドクチェと話をし
また側にきた  パク・インギュも
交えて話に花が咲いている

チェヨンが時々  座っている
ウンスを見下ろすと
ウンスもチェヨンを
見つめていた
ふたりはただ微笑み合う

ウンスは珍しく紅色の
ふわりとした美しい衣を
身にまとっていた
篝火を浴びて妖艶に
輝いている妻を
チェヨンは何度もちらちらと
見つめていた



昼過ぎに王宮のチェヨン邸に
着いたヨンファは
ヘジャに迎え入れられ
客間で
ウンスの帰りを待っていた


ヨンファ様
此度は
誠におめでとうございます


かしこまってヘジャが
挨拶をすると
ヨンファが居心地わるそうに
笑った

ウンスとポムが典医寺から戻り   
昨日の今日なのに
ヨンファとの再会を喜んだ


ヨンファさん
一晩ですっかり変わった
つやつやしてる
キム様と子作りしたのね


ポムの
明け透けな物言いに
ヨンファが照れて


ポム
なんだかそれじゃあ
いかにも
実務的な言い方で
情緒がないわよ


と   言った


ねえ
やっぱり痛かった?


どうしても聞きたいポムが
尋ねる
顔が朱色に代わりながら
ヨンファが答える


ええ   それはもちろん
でもね
医仙様のおっしゃる通り   
幸せな痛みだったわ


ずるーい
先に大人になって


あら   私は元々ポムより
ずうっと大人よ


ヨンファが微笑む


素敵な一夜だったのね
すっかり奥様だわ


ウンスは
きらきら眩しいヨンファを
幸せな気持ちで見守った


いいなあ~
ポムも早く結ばれたい


何気に呟くポムに
ウンスとヨンファは
顔を赤らめ


もう  ポムったら!
チュンソクさんが聞いたら
真っ赤になるわよ


二人は笑った


それからヨンファは
王妃様から拝領した
美しいウォンサムを
身にまとい
ウンスがヨンファに
化粧をすると
昨夜より
またいっそう綺麗になった


キム様   メロメロね


ポムが笑う


いいなあ~
ポムも
かわいい衣を着たいなあ


今日のポムは
武閣氏の姿のまま
美しいヨンファを羨んだ


もうすぐポムも
結婚式でしょう?
その時うんと着飾ったら
いいわ
チュンソクさんが
びっくりするくらい


医仙様
お嫁入りの時は
ヨンファさんと同じように
ポムにもお化粧して
くださいますか?


ええ   わかったわ
とびきり可愛く仕上げて
あげるからね


じゃあ   今日は我慢します


ポムがにこりと笑って言った


それにどんなかっこでも
隊長はポムが可愛くて
仕方ないんじゃない?


やだー
ヨンファさんたら


三人は楽しく話をして
宴の時を迎えたのだった




宴もたけなわになった頃
王様と王妃様がドチとチェ尚宮を
伴いお忍びで訪れた
皆が一斉にお二人に礼をすると


よいよい   忍びである   


王様が片側だけ
にやっと口元をあげて
おっしゃった


それにしても
ひっそりとしていた
この邸が
こんなに明るく
賑やかとはのぅ
医仙のおかげじゃな


ウンスの隣に腰掛けた
王妃様が微笑んだ
王妃様の隣に座った
王様も頷く

いえ   王妃様
こんな突拍子もない宴を
お二人に
ご許可して頂いたからです
みんな楽しそう
幸せそうだわ


ウンスはゆっくり辺りを
見渡してから笑って言った


それに
なんだか合コンみたい


ごうこんとな?


うふふ
天界にある宴で
男女が出会う場所なんです
ほら   なーんとなく


ウンスが指さした先には

サラに一生懸命
話かけているトクマン

それを呆れて見ながら
肉にかじりついているトギ

武閣氏に取り囲まれて
辟易としているチェ侍医

話が弾んでいるウダルチと
武閣氏たちが見えた


ほう
まことに
みな   仲良さげじゃな
だがな医仙
皆がみな   婚礼を挙げたら
王宮の警備がこまるのぅ


冗談なのか本気なのか
おっとりと王妃様が
ウンスに告げた


優秀な武閣氏が
これ以上
嫁いでいくのは
勘弁願いたい


王妃様の後ろにいた
チェ尚宮が
いまいましそうに
言ったので
その場にいた皆が笑った


美しい月が見守るなか
賑やかな宴が続いている


*******


『今日よりも明日もっと』
みんなで祝う幸せな時
心の中に暖かい風が吹く






あれ?宴は
一話で終わる予定が
もう少し続きます  (;^ω^A

また
おつきあいくださいませ