イムジャ   
腹も大きくなったことだし
そろそろこの邸に
住まいを移してはいかがだ?


朝餉をふたりで食べながら
唐突にチェヨンが言った


うーん
このお邸も気に入って
いるんだけど
なんだか我が家って感じが
しないのよ
どこか豪華過ぎて
かえって落ち着かないの


それはわかるが
なれど  
此れ程  利点があり
安心出来る住まいは
他にはあるまい
兵舎が近く   典医寺にも
歩いて行けるのだぞ
イムジャの負担も減るで
あろうし


そうね~
考えてみるわ
湯殿も大きくて気持ちが
いいし


ウンスはくすっと笑った


湯殿は屋敷の方がよい
ああ  広くては
身の置き場に困る


しゃあしゃあとチェヨンが
言った


そうね
うちの湯船なら
あなたの膝の上に
座らなきゃならないもの
私   この時代は
立派なお屋敷でも
湯殿はみんな
あんなもんなんだって
信じ込んでいたわ


他は知らぬ
それにここは王宮ゆえ
あの湯殿がとくべつ
広いのだ


とくべつを強調して言う
チェヨンに


はいはい
そう言うことにしておくわ


ウンスが楽しげに笑った


そのこぼれ落ちそうな笑顔
少し開いた紅い口元
チェヨンは我慢が出来なくて
ウンスの口元に唇を寄せた

一度合わさると
磁石のように
なかなか
離れぬふたりの口づけを
ヘジャが見かねて


お話の途中でしょうが
女官様がいらしてます


と   つらっとウンスに告げ
ふたりの唇がやっと離れた


武閣氏とは少し異なる
浅葱色のチマチョゴリを着た
女官がふたり

王族ではないのだから
部屋付き女官の
お気遣いをお断りしたのに
王妃様は言った


王宮は何かと勝手も違うゆえ
しきたりに長けた女官を遣わす
困ったことあらば
尋ねるがよい
それに妾との連絡役にも
ちょうどよいではないか


一人は40代半ば  
名をヨリと言った
もう一人は15、6か?
女官見習い
名をオリと言った

ふたりとも穏やかで
静かな女官だった

ヨリはヘジャの立場も
気にして厨房など
余計なことはしなかった
なのでヘジャも気兼ねなく
この邸でも過ごしている


ウンスとの
口づけを邪魔された
チェヨンは渋々と
迎えにきたテマンを供に
朝議の行われる宣仁殿へと
行ってしまった
チェヨンを見送ったウンスが
ヘジャに言う


中へ入ってもらって


女官の二人は大きな包みを
抱えていた
ヨリが言った


王妃様からにございます
本日の宴に花嫁様が
お召しになられるウォンサムで
ございます
それからこれが
ほら   オリ  医仙様の御前に


はい   菓子にございます


まあ   花嫁衣裳を
本当にご用意くださったなんて
ありがたいわ
それにさすが王妃様
こんなにたくさんのお菓子まで
きっと集まった武閣氏が
喜ぶわね~
あとはお肉でもあれば


それも手配がついております


ヨリが静かに告げた


ほんと!
ありがとう   うれしいわ
ヨリさん   オリちゃん
これからよろしくね
近々  こちらに
移り住むことになると思うの
私は天界から来たから
わからないことが多いし
だから色々教えてね


王妃様から医仙様のことを
お助けするようにと
命を受けておりますゆえ
なんなりと


よかった


ウンスはにこりと笑った
オリはその笑顔に
見惚れていた


さて   私もそろそろ
典医寺に行かなくちゃ
あら?ポムは戻って
来たのかしら?


ウンスが呟くと外で
大きな声がした


医仙様~~
遅くなりました
ポムにございます
お迎えに上がりました


うふふ
楽しそうね
きっと昨日のヨンファのこと
聞かなくてもしゃべり出すわね


ウンスがヘジャに言った


いかにも
ポム様らしい


ヘジャが頷く


じゃあ私は一度
典医寺に行ってくるわ
王妃様の回診もあるし
昼過ぎには戻るから
結婚披露パーティーの準備
よろしくね


はい   ヘジャにお任せを


ひろうぱーてー?


オリが首をかしげた


うふふ   天界の言葉よ
気にしないで  じゃあ
ヘジャ   ヨリさん   オリちゃん
あとをよろしくね


ウンスはヘジャに手を引かれ
ポムのいる表に向かった

しゃべり出したくて
たまらないポムが
ウンスを待ち受けている


幸せの報告はいくら聞いても
うれしいわ


ウンスの目が輝いた


ヨンファのパーティーに
ふさわしい
晴れた朝であった


********


『今日よりも明日もっと』
仲間のために出来ること
心のこもったことがいい







女官のお名前は
2月に募集した←どんだけ前(^▽^;)
奥女中のお名前の折に頂いた

ヨリとオリを使わせて
頂きました

★オリーブむすめ様   ゆう様
お借りしました
ありがとうございます