今宵   ウンスとチェヨンは
王宮の邸に泊まることに
していた

なんとか明日の宴の
準備も整い
ほっとしたウンスは
閨の天蓋付きの寝台に
気持ち良さそうに
転がっていた

チェヨンはまだ兵舎から
戻らない
明日の宴に出るために
今日中に終えねばならぬ
役目がある
邸に戻るのは遅くなると
典医寺を去る時に言っていた


王宮の中にある邸
警護の衛兵もいて
セキュリティは完璧だし

この邸付きの女官が
二人もいて
色々と差配してくれる

まるで王族にでもなった気分だ


なんだか至れり尽くせりで
気がひけるわ


夕餉の折に
ウンスが言うと
ヘジャが


それだけおふたりが
王家に大切に思われて
いるのですよ


と   まるで自分の
自慢のように胸を張った


何より湯殿が広くて
気持ちがいいわ
ねえ
どうしてうちのお風呂は
湯船が狭いのかしら?
ふたりで入ると満杯だもの


ウンスが首をひねった
ヘジャがくふっと笑い


あの湯殿は奥様と
お住みになると決められた
旦那様が造らせたものと
伺っております


そうよね
新しい木の香りがするもの


狭いから肌と肌が触れて
なんだか落ち着かなくなって
お湯の中は楽だからと
つい  チェヨンの悪ふざけを
許してしまう
最近はこれの繰り返しの
気がした


ああ   そうか!
まったく
旦那様ったら
初めからわざと狭い湯殿に
したのね~


ウンスは顔を赤らめた


夫婦仲がよいのは
家門の繁栄に繋がります
まだまだ
お子が授かりましょう


ヘジャが真面目な顔で
ウンスに言った


もう   やだ!
ヘジャったら


そんな賑やかな夕餉の
会話をして
それから一人でゆるりと
広い湯殿に入り寛いだ

そして先ほどより
閨の寝台に転がって
ウンスは
チェヨンの帰りを待つ


ヨンファの輿入れは
無事済んだかしら?
黙っていても
明日ポムから聞けるに
違いないけど


輿入れにはパク家で
用意した花嫁衣装を
着て行くとポムが言っていた


きっと綺麗でしょうね


ウンスがお腹に
語りかけるように呟いた



王宮を下がったヨンファは
パク家の門をくぐった

ポムが張り切って用意した
紅色のチマと若草色のチョゴリの
緑衣紅裳(ノギホンサン)を
身にまとい
化粧を施すと
見違えるほど生き生きとした
美しい花嫁となった


ヨンファさん
いえ姉上様   お綺麗だわ


ポムが言った


おかしくないかしら?


大丈夫
キム様もきっと目をみはるわ
幸せになってね


ポムが満足そうに頷いた


ポムや
屋敷の者に見送られ
漆黒の輿は
キム家の屋敷に
向かって出立した

キム家ではドクチェが
ヨンファが来るのを
首を長くして待っていた

昼が過ぎて
やっと着いた輿から
降り立った女人は
遥かに想像を超えた
美しい花嫁だった


早く二人きりになりたい
ドクチェであったが
次から次へと
挨拶の客人が続き
二人きりになれたのは
月夜になってからであった


疲れたであろう


ドクチェが言った


閨の寝台は柔らかな
絹の布団が敷かれ
枕元には
香りのよい香が
焚かれていた


いえ   大丈夫です


落ち着いているつもりが
声がうわずった


綺麗な花嫁だ


ドクチェがヨンファを
見つめ
ヨンファが頬を染めた


何もわからぬ私ですが
旦那様のために
お役に立てますよう
努めます


ヨンファが言うと
ドクチェは楽しそうに
笑って言った


初めから無理はせずともよい
二人でゆっくり夫婦になれば
よいのだから


ヨンファの手を引いて
寝台へ誘う

油灯が消えた
月の光が青く輝いて
ヨンファの肌を照らしていた


*******


『今日よりも明日もっと』
あなたと過ごす
幸せな夜が更けていく



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