よく晴れた秋の佳き日
忘れな草色の空に羊雲が
列をなして浮かんでいた
朝
出がけにヘジャを見ると
先日渡した真珠の簪が
髪に輝いていた
マンボ姐さんと
お揃いなの
二人にはいつもお世話に
なっているから
ヨンが戦に行った時には
三人で話をしたわよね
楽しかったわ
お腹の子が生まれたら
今度は私も酒盛りに入れてね
ウンスは簪を渡す折に
そう言った
奉公先でこのように
大切にされたことは
ございません
ウンスの言葉に
ヘジャの目尻に
涙が浮かんで見えた
喜んでもらえてよかったわ
でもね ヘジャ
私はヘジャのこと
奉公人とは思ってないわ
へ?
だって一緒に暮らしている
家族じゃない
ウンスがそう微笑むと
ヘジャは号泣した
簪をつけた姿を見て
ウンスはその時のヘジャを
思い出していた
高麗にチェヨンと言う
家族が出来て
みぃを授かった
そしてウンスの周りには
また一人 また一人と
家族のような仲間が増えていく
ウンスが感傷に浸っていると
チェヨンに呼ばれた
イムジャ
早うせねば
ヨンファの旅立ちに
間に合わぬぞ
ああ そうだった
急がなくちゃ
ヘジャ また後で
王宮の邸に来てね
明日はパーティだから
料理とか飾り付けとか
準備に追われそうよ
はい
ヘジャにお任せを
頼りにしてるわ
ウンスは軽くウィンクすると
チェヨンに手を引かれ
輿に乗り込んだ
楽しそうなウンスの姿を
見送りながら
佳き日に
輿入れ出来て良かったと
ヘジャは
ヨンファの幸を祈った
輿の中ではこのところ
急にお腹が重たくなって
膝の上ではバランスが
取れないウンスの
腰の辺りを
抱き寄せながら
チェヨンが聞いた
からだは大丈夫なのか?
張り切るのもよいが
無理はするな
でしょう?
わかっているわよ
でもいくらまだ側室
だからって
婚礼もなしだなんて
ヨンファがかわいそうだわ
それに王妃様のご許可も
もう頂いたし
王妃様もお越し頂けるのよ
やらない手はないでしょう
こう言う時に天界から
来て良かったと思うわ
天界式って言えば
誰も文句を言えないもの
ウンスはいたずら好きな
子供みたいな顔で笑った
チェヨンはその顔を
愛しそうに見つめた
王宮の邸に武閣氏の仲間や
典医寺の仲間を招いて
ささやか宴をしたいと
養女の話が決まった折に
ウンスは王妃様に相談した
王妃様は二つ返事で
許可をされたばかりか
自らもお出ましになると
ウンスに告げたが
都で勝手に婚儀をしては
国元がうるさいかも
しれないと
心配したチェ尚宮が
輿入れ後のお披露目の宴に
してはいかがかと策を練った
皆で知恵を出し合って
ヨンファには内緒で
ことは秘密裏に計画され
輿入れの翌日
いよいよ明日がその宴の日
まずは今日
無事に送り出さなきゃね
抑えきれない高揚を
鎮めようと
ウンスが深呼吸をする
今日が最後かあ
ヨンファのお出迎えも
ああ そうだな
チェヨンの声色が
少し拗ねていた
あら?
うふふ
忘れ物していたわ
ウンスはチェヨンの頬を
両手で挟むと
食むようにチェヨンの
唇に吸い付いた
宴に夢中で
今朝は無しかと思った
私の大事な旦那様
忘れるわけないでしょう
も 一回?
ああ
それから何度も唇を
合わせて
輿は王宮に到着した
ヨンファがポムと並んで
佇んでウンスを待っていた
二人ともいい顔してるわ
そう言うウンスの顔も
晴れやかな
澄み切った顔をしていた
チェヨンはやはり
妻は美しいと
ウンスを見つめて思っていた
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『今日よりも明日もっと』
あなたの暖かな空気が
まわりの人を優しく包む