ソウルよりも北に位置する
高麗の都 
心なしか 秋の訪れが
早いような気がする

王宮の青蒼としていた
木々の葉っぱの先が
わずかに紅く染まっていた


坤成殿の帰り道
庭園ですれ違ったチェヨンは
なんだか難しい顔をしていた

見慣れぬ若者を従えて
ウンスが近寄ろうとすると
あとで と口を動かした

反対に その若者は瞳を
きらきら輝かせ
ウンスに近づこうとして
チェヨンに止められ 
兵舎へと足早に去ってしまった


誰かしら?


ウンスが首をかしげる


見たことのない顔ですね
それにウダルチの出で立ちでは
ありません


ヨンファが答えた


うん そして
なんだかうちの人
浮かない顔してたわね


ヨンファは取り立てて
返事をしなかった


まあ いいわ
昼には
典医寺に来るだろうから
その時 聞いてみる


ところが昼になっても
チェヨンは典医寺に来なかった
なるべく考えないように
穏やかに過ごそうと
昼の休みには 自分の部屋で
ポムやヨンファと
おしゃべりをして過ごした

ポムは婚礼服が
ほぼ出来上がったと幸せそうに
ウンスに告げた

初めての夜を過ごす
ポムの屋敷の
シンバン(新房)の内装も
整って 外の飾り付けの
準備が始まったと顔を赤らめた


でも
みんなが
見ているようなところで
致せといわれても
無理にございます
医仙様は
恥ずかしくなかったのですか?


ええっと


と 口を濁してから


私は・・・
天界式でそういうのは
一切なし 
伝統儀式はしてないのよ


と言った
ほんとは婚礼をあげる前に
ふたりきりで結ばれたなんて
ポムに何を言われるかと
ウンスは黙りを決め込んだ


え~ ずるい
ポムも天界式がいいです


ポムはパク家の大事なご息女
やっぱり 格式高くねえ
仕方ないわね
でも きっとチュンソクさんが
ポムが大丈夫な様に
考えてくれるわよ


そうかなあ~?
それでなくても今から
緊張してるんです


ふふっ
どちらかと言うと
チュンソクさんの方が
大変そうね


ウンスは笑って
それからヨンファに
話を聞いた


ヨンファは
もうキム様のお屋敷に
行ってしまうの?


身ひとつで来るようにと
言われておりますゆえ
チェ尚宮様と相談して
良き日取りを選んで頂こうかと


そう 
まさか ヨンファが
先に嫁ぐなんて・・・
温泉宿で話を聞いた時には
こんなことになるなんて
思いもしなくて
ヨンファの送別会を
してあげられなかったわ


いえ 医仙様には
たくさんのお心を頂きました
ですから どうぞ
お気になさらずに・・・


それにしても
キム様ってなんて大胆な!
身ひとつって


ポムがあんぐり驚いた


ポム 
変な意味じゃないと思うわ
ヨンファへの深い思いなのよ
ヨンファの
他には何もいらないって言う


そっか~
いいな~ヨンファさん
そんなに思われていて


あら 隊長だって
ポムの他は何もいらないん
じゃない?
ポムがそんなこと言ったら
隊長が悲しむわよ


そうかなあ?
じゃあ 
そう言うことにしておこう
っと


ポムが幸せそうな目をして
にこにこっと笑った
それから興奮したように
ウンスに告げた


そうだ 医仙様
ポムはいいことを
思いついたのです


なに?


ポムはごにょごにょと
ヨンファに聞かれないように
ウンスの耳元で何事かを
呟いた


まあ! 
でも上手くいくかしら?


それが
珍しくお兄様も賛成してくれて


お兄様ってインギュさん?


はい
絶対反対だって思っていたから
意外でした
戦に行って
人が変わったのかなあ?
戦は嫌だって言ってたもの
だから ポムの相手が
チュンソク様だと知って
また 大変な人と
結婚するなあって言ってました
武士はほんとに大変だって


そう でもインギュさんも
味方なら上手くいくかも
もしそうなったらいいわね


はい


ポムは元気よく答えた


ヨンファさんは
待っててね
たまには ポムに
お任せを!


何をしでかすのか
わからないけど
ポムや医仙様に
迷惑の掛かることは
やめてね


ヨンファは戸惑うような
顔をして言った


ポムはふふんと
笑って頷いた


そよそよとした秋の風が
典医寺のウンスの部屋の中を
静かに吹き抜けて行った


*******


『今日よりも明日もっと』
ちょっと 会えないだけなのに
とても会いたくなる
あなたは何を思っているの?




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