ウンス
ウンスや


知らない
名前呼んだって
知らないんだから


ウンスはストライキでも
起こす勢いで
寝台の上に座り込み
布団をすっぽり被って
返事もしない


ウンス
話も聞かぬのか?
ただ怒ってばかりか?


ヨンがそんなに
冷たい人だなんて
知らなかった
ヨンファのことは
捨て置けって
捨て置けって
どうしてそんなひどいこと


自分でも何を言ってるのか
よくわからなかった
だんだん感情が高ぶり
嗚咽が始まる


ウンス
おいで




喧嘩しても
互いに顔を見合わせる
約束であったろう




ウンスや


チェヨンが布団を剥ぎ取った
顔をしかめてウンスが
チェヨンを見つめる


イムジャはいつも
人のことばかり
自分のことをもっと
大切にせぬか


してるわよ
大切に
自分のことも
みぃのことも
あなたのことも


ならばそう気を乱すような
ことばかり考えるでない


だって


チェヨンは
嫌がるウンスを
無理矢理抱きしめた

チェヨンの腕の中で
ウンスは息を吸う
悔しいけど
やっぱり安心する
チェヨンの匂い


イムジャが心配だ
勢いあまって
相手の屋敷に
直談判にでも
行きそうではないか?


必要なら行くわ


ウンス
そなた   
その武閣氏の相手を
知っておるのか?


ええ
もちろんよ
きりっとした青年だった


話をしたのか?


ええ   したわ
手術の後に説明もしたし
その後も何度か様子を
見るたびに


それで
そいつはどんな奴だと
感じた?
嫌な奴だったか?


いいえ
受け答えも感じがよくて
優しそうな人だった
だから余計に
裏切られた気がして
悔しいのよ


そうか
ならば
イムジャは
人から聞いた話と
自分の耳で聞いた話
どちらを信じる?


え?
どおして?


相手の男
金徳在(キム・ドクチェ)が
イムジャに会いたいそうだ


私に?


ああ   手術のお礼も
したいそうだ
何より武閣氏のこと
イムジャの付き人と聞いて
話をしたいと言っておる
いかがする?


だってもう
朔州に帰ったんじゃ?


いや   まだ都の屋敷に
とどまっておるぞ


ヨン
もしかして
調べてくれたの?


ああ
スリバンに調べさせた


いつの間に?
ああ   だから?
それでお迎えが
遅くなったの?


イムジャは昔っから
自分で納得するまで
諦めぬ火のような気性
馬に初めて乗った時も
毒にやられて解毒した時も
どんなに離れて
時が巡り巡っても
諦めなかったであろう


うん


であれば
自分で確かめよ
相手の男がどんな奴か
なれど
最後にどうするか
決めるのは   その女人
それを見守ってやるのも
イムジャの務めだ


うん
だって人身御供だなんて
聞いちゃうと


確かにそれは否めない
だがこの時代では仕方ない
王様と王妃様とて
同じこと
互いの国の人身御供
だが不幸に見えるか?


ううん
全然


そうであろう
頭から否定しては
見えるものも見えなくなる
まずは自分で確かめよ


うん


チェヨンはウンスの肩を
抱きしめた


ごめんなさい
いつも面倒ばかりかけて


そんな女が愛しいのだから
仕方あるまい


怒ってない?


それはこちらが聞きたい
もう火は収まったか?


収まりました
旦那様


ウンスは笑った


では今度は俺を収めて
もらおうか?




兵舎で火を点けられてから
収まる気配がない
これは火消しに
相当時間がかかるな


チェヨンがウンスの
涙のあとをぺろりと舐めた


泣き虫
俺が嫌いか?


嫌い
でも   本当は
大好き
困っちゃうくらい


ウンスの答えを
満足気に聞いて
チェヨンは
ゆっくり
ウンスを押し倒した


月が南の空に浮かんでいる
満月が近い夜だった


*******


『今日よりも明日もっと』
やっぱりあなたに
かなわない
そんなあなたが
愛しくて






☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*

ふたりが
喧嘩しちゃったよ~と
前話で御心を痛めた皆様
ごめんなさい
無事にふたりは
仲直りの気配

ヨンファの行く末ともども
ふたりを
見守ってくださいませ