ウンスが典医寺に戻った後
チェヨンは
チュンソクに後を任せて
急ぎ
坤成殿のチェ尚宮のところに
向かった


チェヨンの急な訪問に
叔母チェ尚宮は驚いて
廊下の欄干に腰掛ける甥に
声をかけた


いかがしたのだ


それはこちら聞きたい


チェヨンが答えた


何のことだ


先ほど兵舎にウンスが来た
酷く思い詰めているように
思えたゆえ
仔細を聞きに来たのだ


は?
一国の軍を任されている
大護軍ともあろう者が
妻が心配で飛んで来たのか?


悪いか?


膨れっ面で叔母を見た


しかも
なぜ 私のところへ?
他の者と何かあったやも
知れぬではないか?


いや あの時刻は
坤成殿からの帰りに
違いない
他で何かを聞く暇などなかろう


はあ
呆れて物が言えぬわ
だいたい そなたは
ウンスのことになると
目の色が変わりすぎるのだ
これだから 
腑抜け呼ばわりされるのでは
ないか
国のため 王様のため
民の為に考えることが
もっとあろう


もとより 
そのようなことは
分かっておる
王様のことも民のことも
案じておる
だが 叔母上
妻ひとり 
幸せな顔に出来なくて
なにが高麗の守り神だ
かたはら痛し


はあ


チェ尚宮はため息をついた


この腑抜けが


何でも良いから
早う 仔細を
うちのは身重なのだ
それでなくてもこのところ
調子が悪いと言うのに


なんと?
具合が悪いのか?


そうではない
産み月が近くなると
よくあることだと
侍医が言っておった


そうか
大事ないのだな


それはわからぬ
叔母上の返答次第では


そう脅すでない
ウンスに言ったのは
ヨンファのことじゃ


チェ尚宮はかいつまんで
ウンスに聞かせたことを
チェヨンに伝えた


合いわかった


チェヨンはそれきり
何も言わなかった


*******


典医寺に戻ったウンスは
晴れぬ気分を
抱えたまま
診療に加わった

ポムとヨンファは
相変わらず名残を惜しむように
そしてとても楽しそうに
戸口のところで話をしていた
それがウンスの胸を
余計に締め付けた

チェ侍医がそれに気づいて
心配そうに見つめている

侍医は チェヨンから聞いた
気鬱も気になっていた
なにか心を痛めることでも
あったのだろうか?

ウンスはチェ侍医に
ヨンファのことを
相談してみようかと考えた
だが思い留まった
本人にも
知らされていないことを
先にチェ侍医に教えるのは
はばかられると思った


はあ~とため息をつきながら
ウンスは診療を続けた


医仙様
そんなに悪いんでしょうか?


患者の女人がおずおずと
ウンスに尋ねた


え?


先ほどより医仙様は
ため息ばかり
よほどの重症かと・・・


ああ 違うのよ
ごめんなさい
大丈夫よ
少し喉が腫れているけど
熱もこもってないし
心配はいらないわ
一応お薬を出しておくから
煎じて飲んでね


女人はほっとした顔で
診療室をあとにした


だめだわ~
一つのことに夢中になって
患者さんに心配かけるなんて


ウンスはぱんぱんと
頬を叩いた


さあ しゃんとしなくちゃ


医仙様
それでなくても身重の身体
決して
ご無理はなさいませんように
もう随分手も空きましたゆえ
少しお部屋でお休みになられては
如何ですか?


ううん
一人になりたくないの
余計なことを考えそうだから


脈を


チェ侍医はウンスの手を取ると
脈診をした


少しばかり早いですね
サラ ここはもう良いから
医仙様が
心が穏やかになるように
部屋で
指圧をして差し上げなさい


はい チェ先生


それぞれが
それぞれに
それぞれのことを
おもんばかる


典医寺に夕刻が
近づいていた


*******


『今日よりも明日もっと』
愛するがゆえに
心が乱れる
愛するがゆえに
心配でならぬ




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