高麗には夏が過ぎさって
しまったかのような
ひんやりとした風が
吹いていた


たまたま戻っていた
チュンソクを
目ざとく見つけたポムが


チュンソク様~


と駆け寄って行く

兵舎の一階の広間で
ポムに捕まった
チュンソクは頭を掻いて
照れ臭そうに
笑っていた

隊員たちは
面白そうにふたりを
見ている

テマンはポムが随分と
綺麗になったことに
驚いていた
隊長の嫁さんとしては
子供過ぎて
隊長を支えることなど
出来ないのでは?と
思っていただけに
しっくりとした二人を見て
なんだか微笑ましかった

トクマンがテマンの隣に
やって来て


なんだか雰囲気変わったよな
あの二人
宿屋でそう言う関係に
なったのか?


にやりとテマンに聞いた


ばかなこと
俺に聞くなよ
知るか
そんなこと


なんだか怪しいよな


だけどあの隊長だよ
結婚まえに
そんなことするかな?


テマンが言った


わかんないさ
男と女だろ


トクマンの声が
聞こえたのか
チュンソクがぎろりと
トクマンを睨んだ


大護軍なみに
怖いなー


トクマンはそれ以降
口をつぐんだ


兵舎の二階のチェヨンの
部屋では
心配そうにウンスを見る
チェヨンの姿があった


何かあったのか?


チェヨンが聞いた
ウンスはチェヨンの
胸の辺りをぎゅっと
握りしめたまま言った


なんだか切なくて


ウンス
ウンスや


もっと名前を呼んで


どうした?
ウンスや


あいしてるわ


俺もだ
ウンスを愛してる


世の中は不公平だわ




どうして
そっとしておいて
くれないのかしら?


なんのことだ?


話し出したら
止まらなくなる
悲しくなるから
今は止めておくわ
屋敷に帰ってから聞いて


合い分かった
ウンス
俺はいつも
ウンスのことを案じておる
だから
何を嘆いておるかわからぬが
一人で抱え込んではならぬぞ


うん
ヨン   おまじない
して


目を閉じたウンスの顎を
指で持ち上げ
チェヨンは唇に唇を重ねた

ウンスの唇は変わらず
柔らかく  甘美で
食むほどに
もっと欲しくなる


物足りないな


唇を離して
チェヨンが笑った


馬鹿


ウンスも笑って言った


少し落ち着いたわ
ありがとう
やっぱりヨンは
よく効くお薬ね


そうか?
俺もウンスを
抱きしめると
気が休まる


ほんと?


ああ
だから一日中
抱いていたい


もう
ヨンたら


チェヨンの言葉が
気分をほぐしてくれた
チェヨンの口づけが
心を癒してくれた


なるべく早く迎えに行くゆえ
おとなしゅう待っておれ


うん


チェヨンは
ウンスの頬に頬を寄せた
なめらかで柔らかな
肌の感触を確かめる
耳たぶに口づけながら
囁く


いい子にしておるのだぞ


はい  旦那様


ウンスが顔を幾分赤らめて
小さく答えた


典医寺に戻るわ


ああ
送って行けぬが


大丈夫よ


チェヨンはウンスの
髪に触れた
愛しいウンスが
これ以上
心惑わせなくても
済むようにと

チェヨンの暖かさが
ウンスに伝わってきた


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『今日よりも明日もっと』
触れ合うほどに
心穏やかに