昼が過ぎた頃
いるはずのポムが
見当たらなかった


ポムは?


ウンスが聞くと
ヨンファが困り顔で


あのう
たぶん 兵舎の方かと


まさか
チュンソクさんのところ?


はあ 朝から何やら
申しておりましたので


まったくしょうがない子ね


羽がついたように
行ってしまったのだろう


会いたい病ね


ウンスがくすりと笑った


はあ
ヨンファが申し訳なさそうに
頷いた


ポムは朝からチュンソクを
探していたが
王様の警護に着いている
近衛隊長ウダルチテジャン
チュンソクは康安殿にいて
なかなか 目通り願えない

昼を過ぎた頃なら
兵舎に戻ると聞いて
ウンスが診察で忙しいのを
いいことに こそっと典医寺を
抜けて 会いに来たのだ


門のところで取り次ぎを
お願いするのとほぼ同時に
チュンソクが猛然と駆けて来た


どうしたのです?
何かありましたか?


周りの好奇の目から庇うように
自分の身体を壁にして
ポムを隠してから
周りのウダルチをしっしと
追い払った


あの あのね


はい


ポムは


はい


ウネ様から 伺いました


はあ 何をでしょう?


あ あの・・・


いつになく萎れて
声が小さくなる


ポム殿 話してくだされ
話を聞かねば 分からぬでは
ないですか


優しい笑顔でチュンソクが
そう言った


あの・・・だから・・・
あの お子・・・


子ども?


つくりかた・・・


は?
今度はチュンソクが
押し黙ってしまった
額に汗が滲む


ごめんなさい
この前は変なこと聞いて


しょんぼりとうなだれた


ああ あの時のことを
気にしておったのかと
チュンソクは合点する

時がくればわかると伝えた
ほかに言い様がなかったから


チュンソク様・・・


ふにゃりと
少し泣き顔になって
ポムが言った


自分が
子ども過ぎて嫌になります


ここが兵舎でなければ
周りに人がいなければ
確実に抱きしめている
チュンソクはそう思って
ポムを見つめた


よいではないですか
ポム殿 いや
ポ・・・ム・・・の
そういうところ嫌では
ありませぬ
むしろかわいい


ポムは一瞬
目を見張って
それからぱあっと
顔を輝かせた


チュンソク様
今 ポムって
ポムって言いましたよね


はあ あなたがそう言えと
いうから


うれしい!


ポムがチュンソクに
抱きついた
遠巻きに見ているウダルチの
ぎょっとした顔が目に浮かぶ
冷や汗が出る


ポム こらやめぬか


嫌です やめませぬ
だってうれしいんだもの
それにかわいいって
うふふ どうしよう
うれしくて飛んで行きそう


わかった わかったから
ここは兵舎
某は務めの最中
嫁になるならわきまえねば


チュンソクの言い様に
はっとしてポムが離れた


ごめんなさい


めまぐるしく
顔つきが変わる
泣いて 笑って はしゃいで
しょんぼりして
医仙様に似て来たか?


チュンソクはふっと
頬を緩めて言った


兵舎でなければ構いませぬ


言ってしまってから
上役の顔が浮かんだ
こんな風にあの方も
医仙様と近づいていったの
だろうか?と・・・


ポムがうれしそうに頷く


じゃあ また でーと
して下さいますか


ええ よろこんで


あのね チュンソク様


はい


医仙様が 
大護軍様と結ばれたとき


は?


痛いけど幸せだったって
だからポムも大丈夫よって
そうおっしゃいました


そ そうですか・・・


じろりと睨んだチェヨンの
顔が浮かんで来て
背中に冷たい汗が走る


だ だが ポム
このこと 他の者には
言っては なりませぬ
きっとおふたりの大切な
秘め事でしょうから


そうだった
夫婦のことは大切だから
人には知られたくないって
おっしゃられたわ
わかりました
もう誰にも言いません
でも チュンソク様には
お伝えしたかったの
ポムも幸せになりたいって


チュンソクは今度は
身体が急に熱くなり
顔から今までとは違った
汗が吹き出てきた


兵舎の2階の
チェヨンの部屋の窓から
二人の様子が見えた


なんだ チュンソク
締まりのない顔をしおって


チェヨンはくくっと笑って
思った


なんだか イムジャの顔が
見たくなって来た
早く 帰り時刻に
ならぬものかな


典医寺の方を見て
ウンスの顔を思い浮かべた
チェヨンであった


*******


『今日よりも明日もっと』
それぞれの階段を
それぞれゆっくり
昇れば いい



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