典医寺の診療室では
ポムが相変わらずウンスに
すがってぐずぐずと泣いており
ウンスが困惑した顔をして
ポムを見つめていた

チェ侍医が横から口を挟んで
言った


医仙様 診療は大丈夫ですので
ポム殿とお部屋で
お話されてはいかがですか?


そう・・・ね
いいかしら?


はい もちろん


泣いているポムの
手を引きずりながら
ウンスは自室に戻り
腰を落ち着けた


どうしたの?
ポム 
泣いてちゃ分かんないわ


卓を挟んで向かい側に
ポムを座らせると
ウンスがそう聞いた

部屋の扉が静かに開いて
サラがお茶を運んで来た


チェ先生から
オンガム茶です
心が落ち着くからと・・・


そう・・・
ありがとう
ほら ポム飲んでから
わかるように話をしてね


一口 お茶を口に含み
ポムはようやく少し
落ち着いた

気にかかる様子の
サラが静かに部屋を出る


お母様が・・・


また じわりと涙を流す


お母様が?


もう 嫁には出さぬと


はい?


傷を・・・


ん?


肩の傷を見たお母様が
取り乱してしまって


ウンスは母親の気持ちが
なんとなくわかった
深い刀傷だった
おまけに白い肌に
黒い糸が細かく施され
驚愕したに違いない


でも それで?
どうしてお嫁に出さないの?


旦那様になる方に対し
ポムが
肩身が狭い想いをするからと


は?
あのね 傷口は糸がついた
ままじゃないわ
ポムだって知ってるでしょう


はい 抜糸すると


そうよ
それに私をなめてもらっちゃ
困るわ
傷口は目立たない
私 腕はいいのよ


わかっております
なれど 兄上もおらず
ポムも命を落としかけ
お母様は心配でならぬのです
武閣氏ももちろん辞めよと
屋敷の中で 見張られて
人目をかいくぐり
逃げて参りました


そうだったの
でも チュンソクさんは
そんなこと気にしない人よ


そうかも知れません
でも お母様の言う通りかも
知れませぬ
それにチュンソク様は
ポムのことをお嫌いかも


なんでそうなるのよ?
はあ じれったい2人ね


屋敷の見合いの席を
思い返す
どう見ても どう考えても
互いに意識し 
気に入っているようにしか
思えなかった


あー 高麗の武士って
これだから 嫌
分かりづらいのよ 
本当の気持ちが


ウンスは出会った頃の
チェヨンを思い出して
ため息をついた


とにかく!
話さなきゃ
お互いの気持ちを
確かめなきゃ
お母様のことはそれからよ
行きましょう
兵舎へ!


ウンスが立ち上がる


扉の外には
チェヨンとチュンソクがいて
中の話を聞いていた


チュンソクは無言で
前を向いていた
チェヨンが声をかける


よくよく 話をきいてやれ


はっ


ぎぎっと 扉が開き
チェヨンとチュンソクが
ウンスとポムの前に
現れた
チュンソクが
びくりとしたポムの前に
すっと立った


どおしたの?


ウンスが驚いた顔をして
ふたりを見比べた


今ね 兵舎に・・・


話始めたウンスを制し


イムジャ こちらへ


手を引くとチェヨンは
中庭へと連れ出した


2人で解決することだ
ここから先は立ち入らぬ
方がよかろう


そうね・・・
わかったわ
それに
ヨンも何か話があるのね


急に言われて答えに窮する


なぜに?


浮かない顔してるから


ああ 


戦?


ああ


そう・・・


今度は少し長くなる


うん


大丈夫か?


大丈夫じゃないって
言ったら 
やめてくれるの?
戦に行くのを


・・・・それは


うそよ うそ
私は 大丈夫


声が少し震えていた


イムジャ 強がらずとも


だって 強がらなきゃ
泣いちゃうもの


ウンスがチェヨンの胸に
額を寄せる

チェヨンはウンスの
肩をぎゅっとすると


すまぬ
また 寂しい想いをさせる


その額に口づけた
それからチェヨンは
懐かしそうな顔をして言った


この 梅の木の下で
みぃが出来たことを
はじめて聞いたな


「まことか!」
チェヨンの声が
典医寺にこだましたのを
思い出す


うん


みぃが生まれる前には
必ず戻る


うん
必ずよ


ああ 約束だ


やくそく・・・


ウンスは泣かなかった
チェヨンの優しい鼓動が
耳に届く
チェヨンの匂いがする
その腕の中で
このまま 時が止まれば
いいのに・・・
そう願っていた


*******


チュンソク様・・・


立ち上がった
ポムの泣き顔に
胸が締め付けられ
チュンソクは
気がつくと
ポムの涙に濡れた頬を
手のひらで拭っていた


ポム殿
某とそなたは
まだ互いのことを
何も知らない
だから
もっと心が近づいてから
それからでもよいと・・・
嫁に来てくれと
言うのは
それからでもよいかと


え?


そう思うておりました
だが そなたの涙を
もう 見てはおられぬ
傷などどうでもよいこと

某がまるごとそなたを
受け止めますゆえ
もう・・・ 
泣くな


温かな声がする


そのようなことを
言われたら
うれしくて
やっぱり
泣けてしまうでは
ないですか


またぐずぐずと泣き出した
鼻先が赤い可愛いポムの
手をそっと握ると
チュンソクがぽつりと


某がついております


そう言って抱き寄せた



それぞれの 想いに
夏草が揺れている


********


『今日よりも明日もっと』
あなたが笑顔でいられるように
私も笑顔でいるわ



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