ひとしきりウンスが
落ち着くまで
チェヨンは抱きしめた
腕をゆるめなかった


もう震えておらぬか


大丈夫
びっくりしただけよ
私たち    誰に狙われたの?


スリバンに頼んだ密偵が
元より来た刺客を
マンボに知らせてきたのだ 
いち早く気づいて良かった


王宮は?
王妃様は?


案ずるな
イムジャは自分の身だけ
心配しておれ


うん
でも


もともと   狙いはイムジャ
いや    俺だろう
双城の戦の最中
イムジャが連れ去られたら
俺がどうなるか
わかっての所業
元の後ろに   
あいつが見え隠れする


あいつってまさか?
徳興君!


調べて見ぬとわからぬが
あいにく捕らえた刺客は
みな自害した模様
イムジャが連れ去られず
良かった


チェヨンは心底安堵した様子で
またウンスをぎゅっと抱きしめて
その唇に唇を重ねた


そう


ウンスは唇が離れると
ふっと息を吐き
呼吸を整えた

それから落ち着いて
チェヨンに尋ねた


ねえ    ヨン
やっぱりポムが心配だわ
様子を見てもいい?


ああ   無論


ウンスはチェヨンに
手を引かれ輿から出ると
ポムを探した

ポムは橋のたもとに腰掛けて
歯を食いしばり
泣き顔を
見せないように耐えていた

隣にいたはずのチュンソクは
すでに見当たらず
代わりにヨンファが寄り添う

ウンスは肩に滲む血のりを見て
胸が締め付けられた


私を守るために
傷つけてしまった


ウンスのそんな気持ちが
痛いほどわかるチェヨンは
肩に手を置き


大事ない
イムジャが気に病むことではない


だけど


大丈夫だ


チェヨンは優しくウンスに
言ってから
その肩を抱き寄せた


ありがとう   ヨン
ポムの傷を見てくるわ


ウンスがポムの前に立ち
その目に涙を溜めながら


ごめんね   ポム
怖かったでしょう


そう言うと
ポムは泣いた


怖くはありませぬ
我ら武閣氏は戦いが本分
なのに医仙様を
護るどころか足手まといに
それが悔しくてなりませぬ


ばかね
十分な働きだったわ
怪我を見せて


ウンスはポムの肩を見た
刀傷
ぱっくりと傷口が割れていた


これは縫わなきゃならないわ
典医寺に戻りましょう


これくらい平気です
それに隊長が
応急処置をしてくれたから


ポムの頬に赤みがさした


良かった
チュンソクさんがいてくれて


隣のヨンファも頷いた

チェヨンはポムたちから
少し離れたところで
ウダルチに指示を出していた
チュンソクのもとへ行った


チュンソク   
礼を言う
イムジャのこと
それにパク殿の娘御のこと


いえ    某はたまたま
行き合わせただけ
近いうちに
王様がお通りになる
寺までの道を確認して
おりました


そうであったな


はい
医仙様は大事ないですか?


ああ   初めは動揺しておったが
今は落ち着いている
ポムの肩を治療すると
言っておったから
王宮に戻ることになるだろう


そうですか


チュンソクは時々ポムを見た
ウンスの前で泣いている姿
励まされたのか?
笑みを浮かべる姿
頬を赤く染めて恥じらう姿

今まで一度も女として
見たことはなかった
子どものようにあどけなく
いつもにこにこウンスの
そばにいる姿を思い出す

それから   先ほどの
自分の衣のたもとを
握りしめて震えていた姿

心配になって   
思わず
肩を抱き寄せたら
驚くほど華奢で柔らかだった

その時初めて
役目ではなく
この女人を

守りたい

抱いた感情にチュンソクは
戸惑いを隠せなかった
この気持ちは何だろう?

すっかり元気を取り戻した
ポムはいつもの調子で
ウンスにまとわりつくように
懐いていた

ただ今までと違っていたのは
ウンスの先にいる
チュンソクを
時折見つめている姿があった


ちゃんと
チュンソクさんにお礼を
言わなきゃね


ウンスが言うと
茹でたタコのように
真っ赤になった


わ   
わかっておりまする


頼りになる人でしょう?


ウンスの問いに
恥ずかしそうに下を向きながら


はい
とっても


ポムが答えた


どんよりとした天気が
続いていた
夕闇が深くなるころ
ウンスたちはウダルチとともに
王宮に戻っていった


*******


『今日よりも明日もっと』
いつの間にか    心に忍び込む
あなたのことが
気になって仕方ない



☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*

ポムとチュンソクの恋の行方
もう少し続く予定 
温かく見守ってくださいませ

ふたりの恋にたくさんの
コメントありがとう
ございました