山桜の実の様子を見るために
早朝より
中庭を散策するはずであったが

ふたりどうにも離れがたく
床の中で
抱きしめあっているうちに
いよいよヘジャが呼びに来た


そろそろ出仕の刻限が
近づいておりますが
いかがされますか


ああ   いま行く


チェヨンが渋々とウンスの
からだを離して聞いた


今日は
イムジャも行けそうか?


大丈夫よ   もともと
疲れただけだもの
よく寝たから元気に復活よ


ウンスは明るく笑って言った
その様子を心に留めながら
チェヨンが静かに言った


イムジャ   
先陣が戦に出立すれば
王様の警護の他に
やることも増え
ウダルチも忙しくなる


うん   そうね


それでだ
その前に一度
休みを申し出てみるか
明日になるか明後日か
わからぬが
山桜の実も採らねばなるまい?


ほんとに?お休み貰えるの?
じゃあ   休んだばかりで
申し訳ないけど
私もチェ先生に
お休み    お願いして
みようかしら?


ああ


一緒のお休みは久しぶりよね


ウンスの声が自ずとはしゃいで
聞こえる


どこか行きたいところは
あるのか?


うーん
そうね
どうかしら?
考えておくわ
でもさくらんぼは収穫してね


ああ
では休みが決まれば典医寺に
使いをやるゆえ


うん   待ってる
そしたら私も仕事を調整して
みるわね


うれしそうにウンスが答えた


あのぅ
また朝餉を輿でお済ましに
なられるのですか?


あら   やだ
ヘジャ   ごめんなさい


扉の向こうで控える
ヘジャに慌て
ふたりはやっと床から
這い出た


まったく
毎朝   お手間のかかる
おふたりで


ヘジャは聞こえぬように
ぼそりと呟いた


ヘジャが朝餉の支度を
整え終わるころには
ウンスも
チェヨンに手伝ってもらい
着替えを済ませていた

何やら気に入らない様子の
チェヨンと
やれやれといった風のウンス

ヘジャが不思議そうに尋ねる


どうかされましたか?


ああ
気にしないで   
旦那様は
この服が気に入らないのよ


ふく?


ええ   王妃様から頂いた
この黒い衣が
気に入らないのよ
旦那様は


はあ    よくお似合いですが


でしょう?
私も気に入っているのに
やれ腕が透けているとか
やれ胸が見えるとか
ほら    妊娠して
胸も目立って来たでしょう?
谷間が見えるって
不機嫌なのよ


イムジャ   何も
そのように明け透けに
ヘジャに言わすとも


だってほんとのことでしょう
ヨンは気にし過ぎなんだもの
それにこの衣
お腹の辺りが
ゆるりとしているから
楽なのよ
お腹が目立たないし


うんと
目立てばよいではないか
隠すことなどあるまい
妊婦だと皆に知らしめれば
よいではないか


もう知らしめなくても
みんな知ってるわよ
それに診察の時はちゃんと
この上に白い衣を羽織るから


朝から仲がよろしいようで
ヘジャが喉でくくっと笑い


つまりは
旦那様は奥様のお美しいお姿を
他の殿方に見せたくなくて
奥様は旦那様のために
綺麗に着飾りたいと?
犬も喰わぬ話にございます


もう    ヘジャったら
私たちをからかって!
いやね


ウンスは的を射たヘジャの
話がおかしくて
そして照れくさくて
くすくす笑った

チェヨンは相変わらず
憮然としていたが
着替える気のない妻に
今日のところは
観念したようで


出掛ける場所を決めた
イムジャの衣を
仕立てることにする


そう宣言した


あら?買い物?
うれしい


ウンスはますます上機嫌に
顔を綻ばせる


旦那様
奥様
早く朝餉をお召し上がりになり
王宮に参りませんと


ああ    そうだわ
急がなきゃ
今日も勉強会があるんだったわ


ウンスは
忙しそうに口を動かし始めた
つられてチェヨンも
飯をかき込んだ

慌ただしい朝が過ぎていく

そろそろ熟して
黒光りしている山桜の実も
きっと待っているだろう
ふたりに収穫される時を


*******


『今日よりも明日もっと』
犬も喰わない?毎朝の
ふたりの愛の交わし方






お話がスローペース!(´Д`;)
申し訳ありません
まだ朝?とな!    叫び

収穫出来るのかしら?
山桜の実  桜桃  (^▽^;)



大雨が続いた九州の皆様
そしてお読みいただいた
すべての皆様

明日の日曜日もどうぞ
安寧にお過ごしくださいませ