おはよう チェ先生


初夏のきらきらとした
朝陽を背に受けて
典医寺の扉を開けた天女は
今朝は一段と輝いて見えた

思わず息をのむ

扉から風がふわりと
舞い込んだ


おはようございます


その一瞬の動揺を
見抜かれぬように
チェ侍医は思わず目を伏せ
努めて冷静に聞いた


何か 
良いことがありましたか
お顔の色が良いようで


そう告げた


ふふっ わかる?
もうね 
悪阻も収まってきたし
今のところ 何の問題も
ないでしょう?
だから 今日からね
ちゃんと仕事を
しようと思って
今朝 大護軍の許可も
もらったのよ


はあ あの心配性の
大護軍が許可ですか?


横にいたトギも
うさんくさそうな顔をした


本当だってば
見守ってくれるって
そう言ってくれたもの


どんなやり方で
やり込めたのか
大護軍もお気の毒に


隣のトギも大きく頷く


もう ふたりとも
私をなんだと思ってるのよ
うふふ 
旦那様は私に甘いのよ


だから 
それを言っているのです
やれやれ


チェ侍医はため息をついた


なれど 無理はいけませぬ
まだまだ危険がない訳では
ありませぬぞ


はいはい
もう 同じこと言うのね
大護軍と


初産ゆえ
それだけ皆が心配している
そういうことです


はいはい わかったわ  
そうなのよ これから
最難関が待ち受けて
いるのよね
突破しなくちゃ


ああ 
王妃様とチェ尚宮様・・・


ええ あそこが一番
手強いのよね
でも まあ
なんとかなるわよ


ウンスはふぅと息を吐いた


*******


康安殿へ続く回廊で
テマンとともに歩いていた
チェヨンは 叔母チェ尚宮に
呼び止められた


ヨン 今から王様に謁見か


ああ


そうか 
まあしっかり働け


しばし間をあけてから


時に医仙がお役目を
増やしたいといっておるとか


急に話を振られて
チェヨンは驚いた顔をした


叔母上 なぜそれを?
本当に 密偵でも屋根裏に
放っているのではあるまいな
その話をしたのは今朝のこと


あほう この叔母の
情報網を甘く見るでない
だれが密偵など・・・
好きこのんで
惚けた甥など見たいものか


それにしても油断できぬ


まあそれはよい 
して医仙のことじゃ
お前本当に それでよいのか


良いも何も 昔から
籠の中に収まるような
女人ではなかろう
それに あの気性
火の如しだ


チェ尚宮は頷いた


いずれ疲れたら 籠に
戻ってくるであろうし


チェヨンは愛おしそうな目で
典医寺の方角を見た


そうか お前が良いなら
合いわかった
王妃様にもそのように
お伝えしておこう
だがくれぐれも


わかっておる
無理はさせぬ


お前もだ 


え? おれ?


ああ お前も
医仙に無体をしてはならぬ
なにごとも
ほどほどが肝心ぞ


そのようなこと!


ないわけがない
お前の考えることなど
お見通しじゃ


チェヨンの肩をパンと叩き
足早に
その場を去っていった


いってぇ
まったく相変わらず
容赦がないなぁ


チェヨンは
ぶつくさ文句を言う
テマンは首を傾げた


チェ尚宮様は
ご存じないのかな
大護軍はあんなにも
医仙様を
大切になさっているのに


チェヨンは唸った
まさか 
「閨のことだろう」とは
さすがにテマンには
口が裂けても
言えそうになかった


*******


『今日よりも明日もっと』
心配すること されること
どちらも相手を想うこと



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