膝の上にウンスを乗せて
チェヨンは
しっかりとからだを寄せた

決して失うことのない
決して失いたくない
大切な人

思えば思うほど
抱けば抱くほど

二度とこの手から離さぬと
心に誓う


ウンスが急に指でチェヨンの
額をなぞる


どうしたの?
眉間にしわが寄ってる
何か 難しいことを
考えているでしょう?


その優しい言いように
みぃもろとも抱きしめて


あいしてる と
呟いた


おかしな父上ね


くすりと笑いながら
ウンスはお腹をさすった


いいのよ 無理をしなくても
誰にでも言いたくないことは
あるもの
あなたの傷が痛むなら
いつか話せる時が来てからで


いや いいのだ
イムジャには聞いて欲しいと
そう思っていた


チェヨンはウンスの唇に
自分の唇を押し当ててから
話を始めた


アンジェに誘われて
あいつの屋敷に行った
もう20年近くも前のことだ


*******


アンジェの父親はすでに
禁軍をまかされた
一角の武人であった


その当時のチェ家ほどでは
ないにしろ 使用人も
そこそこ抱えて
暮らし向きも
ゆとりがあったようだった


その日はアンジェが言うように
先客があった

久しぶりに会うと言っていた
その御仁は
中庭で アンジェの父親と
手合わせをしていた

無精髭にぎょろりとした目の
眼光のするどい無骨な武人の
無駄のない動き 身のこなし
鋭い剣の振り下ろし

チェヨンは剣術の稽古を
間近で見るのはこれが初めてで
その あまりの気迫に
足がすくんだが目が離せない

胸が熱くなった
気圧されながらも惹かれる何かが
その男にはあった


じっと見つめた


頼れる父上とも 全く違う
なれど 力強い生命を感じる


少年の日のチェヨンは
そう思った


父親は庭先にいるアンジェに
気づくとこう言った


来たか
お前も我が師匠と手合わせ願うか


はい 父上 ぜひに

ご無沙汰しております
ムンチフ様
よろしくお願いいたします


アンジェはうやうやしく
礼をした
それから チェヨンを
紹介した


父上 
学友のチェヨンであります


おお 
チェ・ウォンジク様のご子息か
よう参られた
今日は客人が来ていてな
まあ ゆるりとしていかれよ


アンジェの父親は
剣術使いの時とは別人のような
優しい笑顔でそう告げた


チェヨンにございます
お心かたじけなく
ありがとうございます


チェヨンは
澄んだ声で返事をした
横から 客人のムンチフが
声をかける


そなたが チェ・ウォンジク様の
ご子息のチェヨン殿か
そなた
曇りのない良い目をしておるな
剣術はやらぬのか?


アンジェの父親が笑って言った


チェ家は代々文臣の名家
誰が好き好んで 
このような武人の道に進みますか


 
そして 気がつくと
庭の木陰にもうひとりの
客人がいた
チェヨンの声を聞きつけて
その男がひょっこりと 顔を出す


あの高官のチェ・ウォンジク様の
ご子息でいらっしゃいますか


慇懃無礼な物言いで
挨拶をする その男

ムンチフと同じ内攻使い
その縁で 今は
行動をともにしている
そう言った その男

やせこけた顔立ちで
狐のようにずる賢い目をした
貧相の家柄のその男


某 キ・ジャオの息子
キ・チョルと申します


そう告げた 



*******



え~ あのキチョルとヨンは
そんなに昔から
知り合いだったの?


ウンスは目を丸くして
声をあげた


俺も全然気がつかなかったのだ
徳成府院君(トクソンプウォングン)
などと さも偉そうな名前ゆえ
あの時の 貧寒な武人とは
思いもしなかった
キチョルがちょうど
今の俺くらいの頃の話だしな


いつ思い出したの?


あ? イムジャと再会して
昔のことを色々思い出すうちに
ああ そう言えば そうかもな
それくらいの認識だ


まったく・・・
あなたって人は本当に・・・


ああ 俺が興味があるのは
イムジャだけだ


そう言って 
また口を寄せようとする


話を聞くまではお預けよ


ウンスがチェヨンの唇に
人差し指を立てた


では 口づけてくれるまで
話さぬ


ウンスの指を
くわえるチェヨンに


これじゃあ 
堂々巡りじゃない
もう 仕方ないわね


呆れ顔のウンスが
チェヨンの頬に唇を当てる


それでは足りぬ


チェヨンがウンスの唇を
奪った


*******


『今日よりも明日もっと』
出会いは偶然か
それとも 必然か
思いが巡る 思い出話



゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆


なんだか 
口づけてばかりじゃない?(///∇//)
美少年ヨンの思い出話が終わるまでに
何回 口づける気かしら?と
皆様の呆れ顔が浮かぶようでする・・・



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