チェヨンとウンス
アンジェとウネの
二組の夫婦は

客間続きになっている
渡り廊下に敷物をひろげて
夜桜を眺めていた

夜風に吹かれ
舞い上がる桜吹雪
そろそろ葉桜に
変わろうとしている

夜空には満月が浮かび
四人を明るく照らす

そろそろ宴も
お開きになろうかという頃

まあるい満月が
下の方からゆっくりと
影を落としていった


月が欠けているわ
何かよくないことでも
起きるんじゃないかしら?


ウネが心配そうにアンジェに言った


あれは皆既月食って言って
心配ないわよ
お月様がちょっとかくれんぼ
してるだけだから
すぐにもとに戻るわ


チェヨンの肩に頭を預けて
ウンスがおっとりと話した


かくれんぼ?
お月様が?
なんだか楽しそうね


ウネが笑った


ほら   どんどんお月様が
かくれんぼするわ


ゆったりと月は下の方から
欠けていき
辺りは真っ暗な闇の中


まっくら
チェヨン   こわいよ


1オクターブ高い
ウネの声が聞こえた


かわいい声
ウンスは思った
まるで小さな女の子みたい
ウネちゃん?


月が徐々に輝きを取り戻し
あたりが明るく見えた


え?
え     えー?


ウンスは大声をあげた
だって   だって
月夜に浮かびあがって見えたのは
子供の姿をした三人だったから

ウンスはびっくりして
自分の姿を見る

うそでしょう?
私まで子どもになってる


十才のチェヨンが
不思議そうにウンスを見る


君   誰だっけ?
どうして屋敷にいるの?


私はウンスよ
あなたの妻じゃない


あはは
君    おかしなこと言うね
まだ子どもなのにさ
それに    初めて会ったのに
夫婦なわけないだろう


違う   違う
私はウンス
天界からあなたのところへ
やって来たのよ


じゃあ   君は天女?


訝しげにチェヨンが聞く


ウネが突然ふたりの間に
割り込んで来て


チェヨンを天界連れて行かせないわよ
だって   
私たちの大切な友達なんだから


そう息巻く


アンジェがのそのそやって来て


お前が行かせたくないだけだろう


と    からかった


ウンスが慌ててアンジェとウネに


ちがう    ちがーう
あなた達夫婦でしょう
二人は互いに愛しあってるって
さっきの話は何だったのよ


あんたこそ
何言ってるのよ
あたしたちはただの友達よ
夫婦って何言ってるの?
あんなの方がおかしいわよ
ねえ   アンジェ


あ    ああ


やや歯切れ悪くアンジェが
答えた


チェヨン   この変な子に
変なこと言うなって言ってやってよ


ウネにそう言われ
子どもの姿の
ウンスはすっかり悲しくなって


もう   私を思い出してよ


泣きそうな顔をしてチェヨンを見た
その様子をじっと見ていたチェヨンは
ちょっと考える風で    だがすぐに
アンジェとウネにきっぱり告げた


俺    この子と一緒に行くよ
天界でもどこでも


初めて会った子なんでしょう


ウネが呆れて聞く


ああ   だけど
初めてって気がしない
いま   この手を離したら
なんだか後悔する気がして


まだ子どものチェヨンが
そう言ってウンスの
手を握った


チェヨン   ありがとう
一緒にいてくれるのね
私と


小さな女の子のウンスは
チェヨンを
ぐいっと引き寄せて
うれしい気持ちを表すように
その唇にちゅっと
口づけた


チェヨンもアンジェも
ウネも  びっくりして
ただ   目を丸くしている


欠けた月まで笑い顔に見えた


*******


旦那様    そろそろ
奥様を寝台に連れて行きませんと
そのままでは
旦那様も大変ではありませぬか
奥様もからだがお疲れでしょうし


チェヨンの腕の中で
疲れて眠るウンスを見て
ヘジャが声をかけてた


ああ    
わかっておる


そうヘジャに答えながら
チェヨンは幸せそうに
妻の寝顔をじっと見つめた


イムジャの顔
泣きそうになったり
怒ったり
微笑みをたたえたりと
くるくる変わり忙しい
そして今は
うれしそうな顔で口元が
きゅっとあがっている

何か夢でも
見ているのであろうか
見ていて飽きぬ


もう少し
もう少しだけ    このままで


チェヨンは腕の中の
宝物をいとおしそうに
抱きしめた


*******


『今日よりも明日もっと』
月夜のいたずら
それでもあなたが好き





皆既月食の夜に
四人が子どもに戻って
どうしたら大人にもどれるか
相談する    と言うリクを
いただきました

すみませぬ
書いているうちに
まったく違うお話になりました
\(゜□゜)/



some様

リクありがとうございました
リクにお応えするはずが~~
違った展開になりました
haru色のお話で
お楽しみいただけるとうれしいです