ソンオクが語る
小さいヨンの姿が
ウンスの胸を締め付けていた

ウンスは急に立ち上がると
そばにある 飾り棚から
古いが上品な作りの
螺鈿細工の箱を運んで来た


これでしょう?
お母様の宝石箱・・・


飾っておいででしたか


うん 初めてこの家に
来た時から気になっていたの
飾り棚に大事そうに
置いてあったから・・・
きっと大切な品物だろうって
ヨンとお母様を繋ぐ
思い出の品物だったのね


はい たぶん唯一の・・・


ウンスは蓋をあけて
中を見た

どの石も綺麗に磨かれていた
庭で拾って渡された石


きっと ひとつひとつ思いをこめて
お母様が磨いたのね・・・
ヨンは覚えているかしら?
この箱のこと 何も聞いたことが
ないけれど・・・


どうでしょう?
とにかくまだ 物心つくかつかぬか
そう言う頃の話にございます


そう・・・みぃ
いえ この子が生まれたら
いつか聞かせてあげるわ
おばあさまと父上の話を・・・


そう言ってウンスは
蓋を閉じた


それにしても おちびさんが
よくこれだけ集めたわね


はい・・・
坊ちゃまは お小さい頃から
たいそう 凝り性でして
好きな物には脇目も振らず
ただひたすら
それを愛でておりました


うふっ 今もそう変わらないわ
三つ子の魂なんとやら・・・ね


ウンスは相づちを打った
二切れ目の瓜を口に運びながら
ふと
首を傾げ ウンスが聞いた


ねえ どうして
瓜嫌いになったの
その話 聞きたいわ・・・


ああ それでございますか・・・


ソンオクは
また話始めた



*******



兵舎の桜の木の下は
さながら 花見の宴のように
にぎやかな宴となっていた 

ウンスは少し疲れたのか
すっかりチェヨンの肩に
もたれかかり
目を閉じていた

時折 頬を撫でる春風が
気持ちいい
それ以上に チェヨンに
身を預けてまどろむことが
心地いい・・・


そんなふたりを
周りのものは 伏せ目がちに
しかし 微笑ましく見ていた


大護軍を見ていると
婚儀も悪くないと思って


静かな時を破ってトクマンが
突然言った


ん?
だれか 相手でもできたのか?


チュンソクが聞いた


いえ いませんよ
だけど 今まで結婚て
家同志の契約みたいなもんだって
そう思ってたから興味もなくて
けど
いつもはあんなに厳しい大護軍が
医仙様の前では
ほんとに幸せそうな
穏やかな顔つきをなさるから
うらやましくて・・・


ポムもそう思っておりましたと
ポムも突然 話に加わる


家同士が決めた婚儀なら
今頃 大護軍様の正室


それはない


チェヨンが即座にまた否定した


チェヨンの声に
ウンスが目をこすり
頭を起こそうとしたが
チェヨンがその頭を手で押さえ


まだ寝ていろ


そう言って頭をなでた

その様子をみながら
凝りもせずポムが言う


だって
おふたりを見ていると
ただただ 美しい絵画みたい
なんですもの
こんな結婚ならしてもいいかと
幸せだわ きっと・・・


ポムは夢見るようにうっとりと
ウンスを見つめた


そうだよな 俺もそう思う
こんな美しい奥方と毎夜
・・・


そこまで言ってチェヨンに
ぎろりとにらまれると
小さくなって言った


いえ 何でもありません・・・


だれでも なれるわけ
ないじゃない
おふたりだからよ


ヨンファがばさりと
斬り捨てるように言うと


だが!
なれど!


トクマンとポムが同時に口を開く


もうよい 
イムジャが起きてしまう


チェヨンの一言で 一旦は
その場が静かになったが


テマンがぽつりと言った


トクマンとポム様は似てるな
空気の読めないところとか


その場にいた皆が
どっと 笑った・・・


皆の笑い声で
ウンスが起き上がり


どうしたの?と
きょとんとチェヨンに尋ねた
まわりの騒がしさなど
気にも留めずに
チェヨンはウンスに


大した話ではない
それより よう寝たか?


そう言ってチェヨンは
寝ぼけまなこのかわいい妻の
髪ごしに優しく頬ずりをした


それを見ていたトクマンが


くっそ~
酒でも飲まなきゃ
やってられなせん


空気も読まず また言った



*******



『今日よりも明日もっと』
美しい玉は 
思い出の中ではなく
腕の中にある




にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村