悠然と立っていたソンオクが
ヘジャに詰め寄り
問いただす


奥様は身重ではないか
まったく そなたときたら
相変わらず気が利かん


あらあら ソンオク?
噂はかねがね聞いていいたわ
チェヨンの妻のユ・ウンスです


妻・・・その響きが誇らしい
ウンスは満面の笑みで
ソンオクを見つめた

ソンオクは坊ちゃまが
夢中になるのもわかる
美しい方だとそう思った
坊ちゃまは美しいものを
愛でるのが
小さき頃より
好きであったと思い出す
その思いを顔には出さず


ソンオクにございます
まずはお屋敷の中へ


静かに言うと
ソンオクは
勝手知ったる実家にでも
来たように
迷うことなく母屋へと
足を向けた


ヘジャが厨房へ消える


ソンオクは
ウンスが奥の間の
椅子に腰掛けるのを
見届けてから
こう切り出した


ソンオクにございます
チェ家には
坊ちゃまがお屋敷を
出て行かれるまでお仕えさせて
いただきました
坊ちゃまがこうしてお屋敷に
お戻りになり 我が娘ヘジャが
お側にお仕えできる日が
来ようとは
10数年前には考えられぬこと
ソンオクからも
お礼とお祝いを申し上げます


ありがとう
ねえ ソンオク・・・さん?


ソンオクでございます


じゃあ ソンオク・・・
こちらに座ってはどうかしら?
立ったままでいられると
なんだか落ち着かないわ


いえ 使用人が奥様と席を
同じゅうするなど
ありえませぬ


あら 私は天人
いいじゃない それくらい
天界では年上の人を
立たせたままにするなんて
それこそあり得ないのよ
じゃあ 私も立たなくちゃ


そんな 滅相もない・・・
ようございます
では お言葉に甘えて


ソンオクはウンスから
遠く離れた末席の椅子に
ほんの少し腰をかけると
ウンスの方を向いた


奥様 こだびはご懐妊
まことにおめでとうございます
この日をどれだけ待ちわびて
いたことか・・・
チェ尚宮様より胎夢(テモン)の
知らせを受け・・・


ま まって
テモンの話 聞いてないわ


さようでございましたか
チェ尚宮様はそのようなこと
ご自慢なさるご性格にあらず

ただ 私には打ち明けて
くださいました
きっとテモンだと・・・
チェ家にも春が来ると
大層なお喜びようで
それで急ぎ ヘジャを呼び戻し
こちらへご奉公させる運びと
なったのです


どんな夢をみたのかしら?


私の口から行ってもいいものか
どうか・・・?


構わないわよ
懐妊したのは私なんだから
知る権利くらいあるわよね


・・・まあ おめでたきこと
チェ尚宮様も
お怒りにはなりますまい

チェ尚宮様は


ええ・・・


坊ちゃまが・・・
それはそれは
おいしそうに桃を食べる
夢をみたと・・・


え? 
・・・
私じゃなくて ヨンが?


はい・・・


なんだか別の意味で
恥ずかしい気がする
食べられてるのは私?
だろうか・・・

ウンスはふとそんなことを
考えて 顔を赤らめた


まさにテモンでございました


そ そうか・・・な?


はい 
それにしても本当に
ようございました
あのお年まで女人に
目を向けることなく
ただひたすら長い時間
奥様をお待ちだったと
ご婚儀の折
チェ尚宮様から伺いました


叔母様なんて言ってたの?


待った甲斐があったと
まことに善き
伴侶に恵まれたと
涙ぐんでおられました

そして間をおかず
子宝に恵まれたと
チェ尚宮様もたいそう
お喜びにございます
ソンオクもうれしゅう
ございます


そう・・・
叔母様 そんなふうに・・・
ありがとう
教えてくれて・・・
この子は本当に幸せね
みんなに喜んでもらえて
待ち望んでもらえて・・・


お腹をさすりながら
ウンスの目の端が
きらりと光った


さようです
ですから おからだを
大事の上にも大事になさり 
お子を大切になさって
くださいませ


そうね・・・
わかったわ


それはそうと
パク家のご息女が奥様の
護衛についておられるとか


きゅうにまじめな顔つきで
ソンオクが聞いた


ええ ポムね
とてもかわいい子よ


またチェ尚宮様も
おもしろい差配をなさる


??


そのご息女 家同士が決めた
坊ちゃまの許嫁でございました
ご存知でしたか?


はあ? どういうこと?
なんだか ほんとにあの子とは
因縁めいてて 笑っちゃうわ
どうして
結婚しなかったの


それは旦那様が
お亡くなりになり
坊ちゃまが屋敷を
お出になられたので
自然と立ち消えになり
その後 坊ちゃまは
赤月隊のメヒ様と
言い交わされた
と・・・


そこまで言って口をつぐんだ


いいのよ メヒさんのことは
知ってるし ヨンがちゃんと
話してくれたから・・・


そうでしたか・・・
出過ぎた話でございました


そう ポムね~
でも随分年が離れてない?


はい
家同士で取り決めた時は
まだ乳飲み子だったはず
パク家とはもともと親交があり
あちらから是非にと
やっと授かりし
唯一の女のお子様でしたから


え~ そんな時にもう
嫁ぎ先が決まっちゃうの??



*******



ねえ 知ってた?
あなたとポムが夫婦だったかも
知れないのよ!


山桜の木の根もと
広げた
昼餉を囲みながら
面白そうに
ウンスがチェヨンに言った


ああ そのような話
あったかもしれぬ
家同士の勝手な取り決め
しかも 随分昔のこと
今の今まで 忘れていた


チェヨンが困ったように
言った・・・
控えめにポムが話に加わる


私は知っておりました
父がかねがね
申しておりましたゆえ
チェヨン様ほど実直な方は
おらぬと
嫁にもろうてもらえと


ほら~


ウンスがからかう


ポムもお嫁に行けばよかった
と後悔しています


ウンスをはじめ
爆弾発言にそこにいた皆が
固まった


だって そうしたら
医仙様と
同じお屋敷で暮らせたもの


それはあり得ぬ!!


チェヨンがぴしゃりと言い
ウンスが高らかに笑った


ほんとに あなたは
変わった子ね・・・


チェヨンはポムの話など
なかったかのように
ウンスを見つめて言った


イムジャ ソンオクは他にも
何か言っておったか?


ええ もちろん
そうそう 
あなたがまだ
よちよち歩きの頃の話をね・・・


穏やかな風がふたりの周りに
吹いていた・・・



*******



『今日よりも明日もっと』
人の縁は どこで どう
繋がっているかわからないもの


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ちびヨンのお話は次回また
辿り着けなくてごめんなさい・・・


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