ウンスが非番の朝

チェヨンを見送りに
ウンスは屋敷の表に出た
テマンが愛馬チュホンの
手綱を持って待っていた


そうか・・・
今日はチュホンで行くのね


ああ・・・
今日は膝に乗せなくても
よいからな


チェヨンが軽口をたたく


私 別に頼んでないわよ
ヨンが勝手にやってるんじゃない


ちょっぴり ウンスの頬が
ふくれた気がしたが
気にせずチェヨンは


行って参る
イムジャ 
屋敷でおとなしゅう
していてくれよ
なるべく早く戻るゆえ


ウンスの手を取り
そう告げた


大丈夫よ ヘジャもいるし
お役目忙しいんでしょう?
気をつけてね


ああ
ヘジャ あとのこと頼んだぞ


はい 旦那様 お任せを


ヘジャが恭しく頭を下げた
チェヨンが行こうとすると


待って 
と ウンスが呼び止めた





これはみぃから


ウンスはチェヨンの頬に
そっと口づけた


で これは私から


今度は唇に押し当てた


もはやテマンもヘジャも
これくらいのことでは動じない

そのままチェヨンは
ぎゅっと妻ウンスを抱きしめた

僅かばかりの
時間が過ぎた頃合いに
ヘジャがぼそっと言う


旦那様 
今生の別れではありませぬ
早う お出かけに


ああ そうであった
では イムジャ行って参る


名残惜し気にウンスを離すと
もう一度だけ
ウンスを見つめてから
ふわりと愛馬チュホン跨がると
きりっと前を向き
振り向くことなく出立した


いってらっしゃい


とびきりの笑顔で
手をひらひらさせながら
ウンスは夫チェヨンを見送り


たまには 
お見送りもいいものね
新鮮な気がするわ


と 幸せそうに呟いた


これほど仲のいいご夫婦も
そう滅多にはおるまいて

ヘジャは家の女主人の様子が
うれしいような
くすぐったいような
そんな心持ちになっていた


奥様 
今日はお出かけのご予定は
ございますか?


いいえ どうして?


母がお会いしたいと申しており
のちほど 屋敷に伺いたいと
言付かってまいりました


ソンオクさん?


奥様 使用人に さんは
必要ございません


あら?そうかしら


はい そのような呼び方
母が泡を吹いて
倒れてしまいますゆえ
お止め下さいませ


そう うふふ
わかったわ
なんだか目上の人を
呼び捨てにするのって
いつまでたっても
慣れなくて・・・


ここは高麗 
天界ではございませぬ
ここのしきたりで
よろしいかと存じますが


そうね わかった


そんな会話をしていたら


ヘジャ!
いつまで奥様をこの寒空の中
お外に留め置くのだ


かくしゃくとした
白髪で きりりとした目元の
ソンオクが 門のところに
悠然と立ち
ふたりを見ていた



*******



『今日よりも明日もっと』
束の間の朝の一ひとときも
恋しくて・・・



ソンオク登場!
どんな昔話が
飛び出すことやら・・・


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