兵舎の隅の山桜が庭に
彩りを添えている

薄紅色の花はまだ三分咲きと
言ったところだろうか・・・

チェヨンが
二階の私室から眺めていると

桜の木を愛おしそうに
眺めているウンスがいた

ふくらんだ桜のつぼみ
儚気に開いた花
その木の下にいるウンスは
さながら天女に見えた

一瞬で目を奪われながら
ふと イムジャはなぜ
ここにいるのだろうかと
そう思った

広場ではウダルチ達が
えい やあっと 剣術の稽古を
行っている

万一 当りでもして
怪我でもしたら
どうするつもりか

チェヨンは慌てて
ウンスのもとに駆けつけた

ウンスのそばには護衛の
武閣氏ヨンファとポムもいる


どうしたのだ イムジャ


ヨン


と うれしそうにこちらを見た


ほらね 旦那様はちゃんと
見つけてくれたでしょう


ポムに得意げに言った





ポムがね 私が来たことを
兵舎に告げないと
いつまでたっても
誰も
気がつかないだろうって
言ったから
私 きっとあなたなら見つけて
来てくれるってっ賭けをしたのよ


イムジャ 
まったくそなたは幼子か
このようなところにいて
木刀が飛んで来るようなことが
あったら如何するのだ


あら あなたが鍛えたウダルチは
そんなに間抜けなの?


いや 万に一つでも
怪我などされては


ふふっ ヨンファもポムも
いるのよ
そんなわけないでしょう


言ってるそばから
急に木刀がウンスの近くまで
飛んで来た
チェヨンは悠然と
片手で受け止め
後をゆっくり振り返り
辺りを睨みつけた

その眼力に気圧されて
隊員達が固まった


すっ すみません
て テホグン・・・


新入隊員の声が裏返る


よい この木刀をもって
向こうへ行け
俺がいたことに感謝しろ
もし医仙に何かあったなら
その時はどうなっていたことか


すっ すみま・・・せん
新入隊員達の声はさらに
小さくなって
皆慌ててその場を走り去った


もういいわよ ヨン
ここで桜を見ていた私も
悪いんだから


それにしても珍しい
兵舎に一体何用だ?
今日は検診とやらでも
あるまいに・・・


会いたいから来ただけよ
兵舎にきてはだめなの?


ウンスが口を尖らせる


そのようなこと断じてない


ときっぱり言ってから
小さな声で


俺も
イムジャの顔が見たかった


と付け足した


そお? よかった
たまにはね 兵舎で一緒に
昼餉でもと思ってね


見れば武閣氏ふたりは
手にかごを下げていた


でも 
花見にはまだ早かったわね
ポム ここに広げて頂戴


てきぱきとウンスがふたりに
指示を出す
慌ててチェヨンが言った


ここで食べるのか?
皆が見ておろう


いいじゃない
今日は暖かいし なんなら
チュンソクさんとか
トクマンさんとか
みんなも一緒に食べればいいわ
たっぷり持ってきたのよ
うふふ・・・
外で食べたら気持ちもいいわ
悪阻も収まるかもよ
ほら 
みぃがここで食べたいって


そう言ってお腹を軽く叩いた


ああ わかった 
わかった・・・


しょうがないな という
顔をして 
でも心なしか弾む気持ちで
チェヨンはウンスを
見つめていた


そうそう 
昨日 私 
非番で家にいたじゃない


ああ


誰が尋ねてきたと思う?


誰だろう?何も聞いておらぬが?


だって昨日の晩も帰りが遅いし
今朝も早く行ったから
話す暇がなかったのよ


それで 押しかけたのか?


そうよ 悪い?
だって話したかったんだもの
私 
小さいあなたに会っちゃった


ん?


ソンオクが来たのよ
いろいろ聞いちゃったんだから
あなたのこと


ウンスは楽しそうに笑うと
チェヨンに手を重ね
その目を悪戯っぽく見つめた


あのばあさん 余計なことを
言わなかったか?


さあ? 
どれがよけいなことかしら?
どれもこれも 私には
面白い話だったわよ
みぃも あなたみたいな子に
なるかしら?


そう 幸せそうに
微笑んだ・・・



*******



『今日よりも明日もっと』
桜の開花が
高麗に春を告げ
思い出が一気によみがえる



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