ヘジャが厨房で
夕餉の後片付けをしている
もうすっかり暗くなり 
月の光が
ぼんやりと辺りを照らしていた


ウンスは奥の部屋で
チェヨンの
肩にもたれながら 
まどろんでいる


 
ここで寝るとからだか冷える
閨に運ぼうか


チェヨンがウンスの肩を抱き
そう言った


まだ いい・・・


半分 こくりこくりとしながら
微笑み ウンスが言った


お風呂も入りたし・・・
それに
あなたにもたれていると
寒くはないの・・・
でも とにかく眠いのよ


ふあぁ~ とあくびをした


ヘジャが扉の向こうから
チェヨンに声をかける


他に御用はありませんか
なければ
今日はこれにて失礼いたします


湯殿はできておるか?と
チェヨンが聞いた


準備が整うております


そうか わかった・・・
では
気をつけて帰れ
また 明日も頼む


はい では


ヘジャが屋敷から下がる
ヘジャは通いなので
夜はふたりで過ごすことが多い
それはウンスが望んでいたこと
だが 状況も変わった


イムジャのことを考えると
そろそろ住み込みに変えて
もらった方が 安心かもしれぬ


そんなことを思いながら
チェヨンがウンスに声をかけた


ほら イムジャ
うたた寝しているなら
早う 風呂に入って
もう寝るとしよう


まだ 大丈夫・・・よ


頭をふらふらさせながら
ウンスが答えた


仕方のない妻だ と
今宵は なんだか
自分に頼りきっているように
思える妻を
愛おしく見つめ
静かに抱き上げると
奥の部屋をあとに 
閨へと渡り廊下を歩いた


ウンスがチェヨンの首に
手を回して
無意識にしがみついてきた
首のあたりが
こそばゆい・・・

夢の中にいるウンスを
しっかりと
抱いて運んでいると


ああ 天界の門をくぐった時も
このようにしがみついてきたな


そんなことを ふと思い出した


嫌だ どこにも行きたくない
泣きながら訴えたウンスを
天界から攫って来た
いくら王命とはいえ
ほんとうにむごいことをした

天界に帰す約束を
果たせなかった自分を
責めたことは
一度や二度ではない

それが
まさか 五年後に
自分の妻になり 
ましてや 
自分の子をはらむなど
あの時は 思いもしなかった

今となっては
イムジャを手放すことなど
想像することも出来ぬ
一生 ともに時を重ね
イムジャを守り続けたい
子が出来たと聞いたとき
その想いは より強くなった

チェヨンはウンスの
顔を見つめて


ウンス・・・
幸せか・・・?


聞くとはなしに呟いた・・・


月に霞がかかり
柔らかな光がふたりの
頭上に届いた


朧月夜・・・
春の月・・・



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『今日よりも明日もっと』
ゆっくりと時は流れ
ゆっくりと幸せになりたい



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