典医寺の片隅に
遅咲きの梅の花

紅梅の花びらが夕陽を浴びて
いっそう 紅く
きらきらと輝いている


いい香り・・・


ウンスは梅の木の下で
チェヨンを待っていた


梅の花言葉は高潔
まるでチェヨンみたい
花の香りを楽しみながら
そう思った


今日は早く帰るって
言ってたから
きっとそろそろ迎えにくるわ


ウンスの予想通り
いつもより早い時間に
チェヨンがひょっこりと
現れた


やっぱり・・・


ウンスが微笑む


何がだ?


飛んでくる気がしていたから


そうか


そう言ってチェヨンも
微笑み返す


チェヨンが思い出したように
先ほどの王様との話をする


全く知らなかったとは
イムジャらしい


そう笑った


たぶんチェ先生の気遣いよ
余計な話を耳に入れないように
してくれたんだわ


そうか・・・
チェ侍医に感謝せねば
くだらぬ噂を耳に入れないよう
差配してくれたこと


でも結局 
ポムがバラしちゃったけどね
困ったものね パク兄妹も


そして王様もだ
このような戯れ言に
つき合うとは
呆れておる・・・


それだけその若者が
見所があるってことでしょう
それに大護軍を信頼してのこと
でしょう


まあ そうかも知れん


ゆるしておあげなさいよ


イムジャはいいのか
あらぬ噂を立てられて


構わないわ
だってそんなの嘘だもの
気にしないわよ
私にはあなただけだもの


そう言って
チェヨンの腕に絡み付いた


体面はいいのか
典医寺での?


これくらい   いいわよ
仲がいいのを見せつければ
変な噂もすぐ消えるわ


そうか・・・


そうよ


ならば遠慮はいらぬな


??


チェヨンは両手でウンスの
頬を包むと
その唇にそっと自分の唇を
押し当てた

その場にいた
医員や薬員は
はじめぎょっとした顔で
ふたりを見たが

梅の木の下
きらきらと輝くふたりの姿は
なにか 
美しい絵巻物のように見え    
皆うっとりと眺めた


やっと離れた唇の
合間からウンスが言った


信じてくれたのね   
私のこと
噂に惑うことなく


当たり前だ
俺のイムジャが他の男に
懸想などするものか


うん   しないわ
ずっと   ずっとヨンだけよ
ヨンだけ見つめて
ヨンだけ頼りに
この高麗で
生きていっていいでしょう


ああ    任せとけ


力強くそう言った


私    決めたのよ
あなたともっと
幸せになる覚悟を

チェ先生にも    
確認してもらったわ




きっとこれからも
いくつになっても
ずっとあなたに恋してるわ
そしてずっと愛してる

あなたも私にずっと恋をして
ずっと私を慕ってくれる?


ああ   もちろん


ずっと・・・


言いかけたウンスの唇を
指で押さえて
チェヨンは言った


ずっと イムジャを
変わらず愛する


ウンスが幸せそうに
微笑んだ

そして
晴れやかな輝く笑顔で
ヨンにこう告げた


あのね    ヨン
秋には
ヨンが父上になるわ


一瞬   きょとんとした
チェヨンだが


まことかっ!


雄叫びが
典医寺に鳴り響いた


  

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『今日よりも明日もっと』
慕い   恋して   愛し合い
もっと   もっと
幸せになる