ウンスは
康安殿に呼ばれたチェヨンを
中庭で見送った

ウンスの隣にポムが駆け寄り
申し訳なさそうにウンスに言った


大護軍様は怒って
いらっしゃっいませんでしたか?


なんのことかしら?


兄上のこと   お気にされたかと
心配してました
ご迷惑おかけしてごめんなさい


兄上って  ポムの?
お兄様がどうかしたの?


医仙様と兄が恋仲との噂
たぶん   私のせい


待って
恋仲ってなんの話?


医仙様   王宮の噂
ご存知ないんですか?


全然
耳に入らなかったから


すみませぬ
一昨日の急患は私の兄上で
医仙様が診てくださり


ああ   あの若い文官さんね


はい
医仙様がふらつかれて
兄上が抱き止めたのを
私   偶然見てしまって


ああ
そんなことあったわね


私   なんだか
兄上が憎らしゅうて


待って?
なんでそうなるの?


兄上はなんでも
私が欲しいものを持ってるゆえ
いつも悔しゅうて
私が医仙様のお付きの者なのに
兄上が医仙様をお守りしたようで
急に腹立たしく
兄上に医仙様には
かかわらないでと
中庭でいい争ってるのを
聞いたものが
まるで医仙様と兄上が
恋仲のように勘違いしたのです


はい?
そんな風に思うなんて
全くポムは困った子ね
まるで悋気みたい
それにお兄様    悪気が
あったわけじゃなし


でも
噂が兄上の耳に届いて
私が慌てて
うち消そうと言っても
考えがあるからそのまま
捨て置けと


考え?


はい   それが何かはわかりませぬが
兄上は幼き頃より
とても聡く   私の考えでは
及ばぬゆえ
なれど
大護軍様は医仙様のこと
とても大切になさっていて
いつも
気にかけていらっしゃっるから
もしかして大護軍様が医仙様に
あらぬ疑いでも
持たれたらどうしようかと
先ほどより案じておりました


ああ    それで
 

ウンスは納得したような顔をして
ポムに微笑んだ


大護軍は気にしてないようよ 
私のこと信じてくれてるみたい
そんなことで気持ちの揺れる男
じゃないのよ


はい


私の旦那様は高麗一の
旦那様なんだから


ウンスはうれしそうに
笑った



*******



康安殿に呼び出された
チェヨンは王に謁見した


このところ奇妙な噂を聞いた
王妃も心配してるゆえ
仔細を聞きたくて呼んだのだ


それは我が妻医仙に関しての噂で
ありましょうか


うむ
なんでも若い文官と恋仲とか
もし本当ならば
どちらも捨て置けぬ


王様はいかがお思いですか


医仙に限りそのようなこととは
思うたが    魔がさすこともあろう


王様    
王様と言えど
我が妻を貶めるお言葉は
聞き捨てなりませぬ
そのような噂   埒もない
どこをどうしたら
そのような話になるのか
某には分かり兼ねます


そうか
埒もない噂か


はい   まことに


気にも止めぬか


はい   いささかも


そうか   


王様は愉快そうに笑って
それは良かった   と言った


はて
某にはよくわかりませぬが


すまぬ
実はある者と一昨日賭けをした


賭けですか?


ああ
若いが優秀な逸材なのだが
どうにも融通が利かぬものゆえ
大護軍と医仙のことを賭けたのだ


はあ? なぜそのようなことに?


大護軍は奥方のことになると
心惑うゆえ   武官として
大事の折   気にかかるなどと
たわけたことをぬかすゆえ
余は大護軍は
医仙のこと信じておるゆえ
なにがあろうと
ふたりに限り心配無用と
言ったのじゃ


はあ   では某たちを賭けに
使ったと言うことですか?
どちらが正しいかと?
全く   呆れて
怒りを通り越しました


すまぬ   大護軍
なれど余は気分がよいぞ
やはり思った通り  
ふたりは強い絆で結ばれておる
いままでもこれからもな


それは無論
して   その切れ者は  御史大夫殿の
ご子息でしょうか


さすが大護軍   お見通しか


チェヨンはしかと王を見据えて


王様    
もう二度と
このような戯れ言に
我が妻を巻き込まないていただきたい
我が妻は賭けの道具ではありませぬ


気迫のあるチェヨンに
合いわかった   と答えるのが
やっとの王であった



*******



『今日よりも明日もっと』
恋しい人   愛しい人
夫婦の絆は揺るぎない