無事でよかった
イムジャに何かあったかと
生きた心地がしなかった


チェヨンがウンスを
締め付けるように抱きしめた
ウンスは腕の中で答える


あっという間の出来事で
まだ信じられなくて・・・
患者さんだと思ったのよ
女の人だから油断してた
突然小刀が
まっすぐ向かってきて
からだが動かなかった

もうだめだと思ったら
どこも痛くなくて
かわりにチェ先生が
刺されてた・・・


そうか
侍医に借りができてしまったな
そばで守ってやれなくて
すまぬ・・・


だって ここは典医寺よ
こんな事件が起こるなんて
思わないもの
ヨン すぐに飛んで来て
くれたんでしょう
顔見たら安心しちゃって
涙が出て来た・・・


そうか・・・


そこへ
チュンソクが難し気な顔で
チェヨンを呼びに来た

腕の中のウンスは
心なしか まだ震えている
そんなウンスをひとりに
したくなくて
抱きしめたまま
チュンソクに問う


話は聞いたか


はあ まあ なんとか


歯切れの悪い言葉が
返ってくる


私は大丈夫だから
チュンソクさんと話して来て


気丈にウンスが言うと
チェヨンはウンスを椅子に
座らせて 覗き込むように
目を見ていった


すぐ戻る
待っていろ



*******



椅子に座ってさっきの場面を
もう一度思い出す


テホグン様の奥様ですよね


確かにそう言った
チェヨンと何か関係がある女人
なのだろうか?
考えると不安になる
自分よりもうんと年上に見えた
でもこの時代の人は見た目では
わからない
もしかしたら
同じくらいだろうか
チェ侍医がいなかったら
自分が刺されていた
女の人だったから
そう深くは刺さらなかったけど
もしも本気の男の人だったら・・・

いろいろ頭をよぎり
ぶるっと また寒気がした



*******



刺したのは 鴨緑江の戦の時に
ともに戦って戦死した
武将の奥方でして



それがなぜイムジャを?



戦で夫が亡くなり 
気落ちしていたようで
生活も窮していたらしく
先日おふたりが市で買い物を
しているところを偶然見かけ
・・・要するに逆恨みです



そうか・・・
刃は俺に向ければよいものを
チュンソク 
すまぬが 戻るぞ


はっ



*******



ウンスのもとに
落ち着きを取り戻した
トギがお茶を運んで来て
まだ少し震えている
ウンスの手を握った


ありがとう トギ
私は大丈夫よ
チェ先生も傷は浅いから
心配かけてごめんね


トギがウンスの手を
さすりながら
うん うん と頷いた


チェヨンがすぐに戻ってきて
入れ違いにトギが部屋を出る



落ち着いたか


うん


恨まれていたのは
俺だった


どうして?
どうして ヨンが恨まれるの?


相手は先の戦で亡くなった者の
奥方だ
イムジャを亡き者にして
俺を苦しめたかったのだろう
確かに自分がやられるより
イムジャに何かあったほうが
俺はこたえるから・・・



ウンスはチェヨンも
少し震えていることに
気がついた

チェヨンの腕の中に
もう一度潜り込む


大丈夫よ ヨン
私 あなたを置いて
死ねないもの
あなたもそうでしょう?


ウンス・・・


チェヨンはウンスの額に
そっと唇を押し当てた
互いの震えが止まるようにと



*******


『今日よりも明日もっと』
震えるほどに 
いとおしい・・・


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