もう 何しているのよ


駆け寄ったウンスが尋ねる


軍議って言ってなかった?


ああ そうだな
行かねばならん


どうしたのよ


いや ふとチャン侍医を
思い出しておった


チャン先生?


ああ イムジャとなら
よき医者仲間として
ずっと過ごしておっただろうとな


そりゃそうよ
チャン先生のこと尊敬してたし
まだまだ習いたいこと
たくさんあったもの


男としては
どう思っていたのだろうか
だかそんなことを聞くのは
明らかに愚問で
口に出すのが憚られた


あ もしかして
チャン先生のこと好きだったのか
心配してるんでしょう
うふふ 大好きだったわよ


イムジャ・・・


ばかね
友人として大好きだっただけよ


ウンスは軽やかに笑った


ねぇ今日は早く帰ってこられそう?


そのように聞かれたら
飛んで帰りたいがそうもいかぬ


チェヨンが胸の内で
そう考えていると


まったくしょうがないわね
お役目優先に
決まっているでしょう
あなたは高麗の大護軍なんだから


ウンスは
チェヨンの頬に口づけてから


ほらほら 早く行かなくちゃ


と言った



*******



倭冦の勢力が日に日に強まり
その対策に
連日軍議が行われていた


とはいえ
なかなか解決策がないのが
もどかしい


軍の配備や作戦
チェヨンの役目は山積みだ


軍議が終わりチェヨンが
兵舎に戻ったのは
まどろむような
午後の時間であった


今日は少しは早く帰れそうだ
夕刻典医寺に迎えにいこうか


そんなことを考えていたとき
トギが転がるようにこちらへ
駆けてくるのが
二階の窓から見えた


何があったかと
慌てて下へと向かう


すでにテマンがトギを掴み
なにやら聞き出そうと
必死になっていた


トギはトギで
伝えたいのに伝えられない
歯痒さで 
テマンに殴り掛かりそうな
勢いで身振り手振りで
伝えている


どうした


チュンソクがテマンに聞く


刺されたと
そう言ってます


それを階段のところで
聞いたチェヨンは
息が止まるかと思った


だれが どうしたのだ


それがトギも興奮していて
いつもならわかるのに
わかんなくて・・・


テマンが泣きそうな顔で言う


とにかく大護軍
典医寺に急ぎましょう


蒼白なチェヨンを奮い立たせる
ようにチュンソクは言った



*******



典医寺につくと
ウンスがてきぱきと動いていた


とりあえずほっとする
見ると 診察台の上に
チェ侍医の姿がある


どうされたのです


チュンソクがウンスに聞いた


なんだかよくわからないのよ
あまりに急なことで


刺した相手は


チェヨンが言った


護衛の兵の人に取り押さえられて
あっちの部屋にいるわ


チェ侍医の様子はどうだ


急所は外れているし
大丈夫
とりあえずの応急処置は
終わったから


そうか・・・
チュンソク あとを頼む
イムジャこちらへ


ウンスを奥の部屋へ
連れて行こうとした


チェ侍医のそばから
まだ 離れられないわ


応急処置は終わったと


でも・・・


ウンス・・・
いいからこちらへ


・・・


チュンソクが心配そうに
ふたりのやり取りを見ている
テマンがトギを連れて
典医寺に戻って来た



奥の部屋に
ウンスを移動させた
チェヨンは


なにがあったのだ


と 優しく聞いた


しばらく押し黙ったままの
ウンスがやがてゆっくり
口を開いた


チェ先生が 
チェ先生が・・・
私のかわりに刺されたの


震える声でそう言った


そうか・・・
イムジャ 取り乱さずに
よくこらえた
仔細は今から調べるゆえ
もう心配はいらぬ


ウンスのからだを抱きしめた


だって私がうろたえたら
みんなが動揺するわ
でも・・・ほんとはすごく

こわかった・・・


ウンス もう大丈夫だ


その声を聞いたとたん
温かいチェヨンの胸に
すがって
糸が切れたみたいに
はじめて ウンスは泣いた・・・



*******


『今日よりも明日もっと』
あなたの胸はいつだって
あたたかい・・・


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