典医寺の 中庭の木々の陰

イムジャが俺に口づけた

くだらぬことでムキになった
そんな俺をなだめるように
優しいイムジャの唇が
俺の心を癒してくれる

離したくなくて
しばらく抱きしめた


イムジャが診察室に
消えてから


俺は ふと 
この木々の陰から
イムジャが泣いているのを
見つめていた自分を思い出した


あの時
ここは私の居場所ではない
天界に帰りたい
もう耐えられない と


チャン侍医にすがって
その胸で泣いていた
肩を抱かれて部屋に入る
イムジャを苦しい思いで
見送った

他の男に抱きしめられている
ところなど想像するだけで
息が出来なくなるが
チャン侍医はなぜか許せた

不思議な 男であった

イムジャを慕っていることは
わかった

だが その思いを
おくびにも出さずに
イムジャのそばで
イムジャを見守り励まし
支え続けた・・・

その姿に
悋気を覚えたものだ

あれは医者としてのイムジャを
敬愛していたと言うことなのか
それともやはり女人として
慕っていたと言うことなのか

そのどちらもであろうか?

まったくイムジャは罪な女人だ
まわりの男達を虜にする
そしてそのことに
イムジャ自身は気づいておらぬ

だから つい いまでも
いらぬ心配をしてしまう

他の男に好かれることが
ないようにと・・・

イムジャのことになると
自分でも呆れるくらい
了見が狭い



*******



いつだったか
イムジャがチャン侍医と
典医寺で酒を飲んでいるのを
見てしまった


イムジャは
切なそうに泣いていた


イムジャがすがってなく相手は
いつもチャン侍医ではないかと

イムジャが心を許している男は
チャン侍医なのかと
激しく動揺した


俺はあのとき
イムジャのいなくなった後の
典医寺の部屋に残り
考え事をしていたチャン侍医に
自分の思いをぶつけてしまった


なぜ あの方は泣いていたのか
侍医のことを慕っているのか
侍医はあの方を
どうおもっているのか と・・・


今思うとチャン侍医の気持ちなど
まるで考えるゆとりがなかった


誰にも渡したくないと
もうあの頃から 
心の底で 俺は思っていた
認めるのが怖かっただけで・・・


その俺のぎりぎりの想いを
俺はチャン侍医にぶつけた


チャン侍医は俺の前で
男である前に医者であった


隊長のお気持ちを
医仙様にお伝えなさい
互いを想う心に 
理由を付けて
隠す必要はありません


チャン侍医はそう言った
俺の苦しい胸の内を
救おうとしてくれたのか

だが
チャン侍医こそ最後まで
イムジャへの想い
心を隠し切ったではないか

チャン侍医が俺の心を救おうと
してくれたことに 
俺は素直に感謝する

俺がイムジャにできることは
俺が 生きて 生き抜いて
イムジャのそばで
イムジャを守り抜くこと

そう気づかせてくれたのは
他ならぬ
チャン侍医かもしれぬから


 
*******



典医寺の部屋の窓から
ウンスは中庭を覗いた
さっき別れたはずのチェヨンが


まだいる・・・
何しているのかしら?


大護軍は まだ中庭ですか
毎日 同じ屋敷に戻るのに
一時たりとも離れていたく
ないのでしょうかね


からかうように笑って言った


ほんとう しょうがない人
ちょっと 行ってくるわ
早くしないとお役目に遅れるもの


言い訳するように ウンスは
木々の陰にいるチェヨンのもとへ
駆け出した


結局 医仙様も一時たりとも
離れていたくないのですね・・・


チェ侍医は ふっと
少し寂しそうに笑った


トギは目の前を通り過ぎた
ウンスの首筋を指差して 
またこいつらは・・・
と 呆れる様子をみせた



穏やかな典医寺の朝の風景



そして 思いも寄らぬ
事件が起こった・・・




*******




『今日よりも明日もっと』
心に秘めた想い
心へ届ける想い
どちらの想いも 大切な想い・・・



★yosi様
サイドストーリーの際に頂いた
「ヨンがチャン侍医に切ない想いを
告白するお話」のリクエスト
haruワールドで少し違った形に
脚色して お届けしました

気に入って頂けるとうれしいです
お届け 大変遅くなりました
m(u_u)m     haru



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