市で買い物をして
並んで屋敷に戻る


夕餉にと 魚を買った
肉は市では手に入らない
王妃様が時々くださるけれども
王族以外には 贅沢品だ


厨房で火をおこす
ひとりでも大丈夫なのに
チェヨンが手伝うといって
聞かなかった


王宮のみんなが
料理を手伝うこんな大護軍の
姿を知ったら 卒倒するわ


たまには よいではないか


釣りが得意だと言うだけあって
魚のさばきも焼くのも上手だった


わが夫は何でも出来るのね


ウンスが感心して言うと


今日は気が向いただけだ


と照れて 顔を背けた


そういうところがすごく
かわいいといったら
あなた 
ますます照れるかしら?


ウンスは密かに笑った


この時代 唐辛子はまだない
キムチに欠かせない
唐辛子の出現は
あと300年は待たなければ
ならないから・・・

ウンスは時々あの辛いキムチの
味が恋しくなる
天界のソウルフード

高麗時代のキムチは
今のムルギムチ(水キムチ)に
似た 沈菜(チムチェ)

塩漬けの野菜が
水に浸かったシンプルなもの

チェヨンはカブの沈菜が
お気に入りだ
ウンスは寒い冬に
チェヨンのからだが
温まるようにと こっそり
少しだけショウガを入れる


そろそろ支度も終わりかな
と言う時に


チェヨンが後から絡み付く


なによ 


暇ゆえ


悪さをしようとする手を
ぴしゃりと叩き


もう ほんとに大きな子供ね


とウンスは笑った


こんなチェヨンを誰も知らない
私だけが知っている夫の姿
なんだか とても幸せだ



*******



ふたりで用意した夕餉を
おいしく食べた


毎日がこんなに穏やかなら
いいのに・・・

ウンスは目の前の
チェヨンを見る

どうして人は争い
戦をするのだろう
平和ならチェヨンが
戦に出ることもないのに

何かことが起きれば
先頭に立って高麗軍を
導いていかねばならない
チェヨンのことを思い
切なくなった


何があってもおかしくないと
覚悟して 大護軍の妻になった
でも この人に何かあれば
私はきっと 生きていけない
この人は 強い人だ
いつも死に直面しているのに
私の前ではいつも穏やかだもの
そんな夫がたまらなくいとおしい


急に口数の少なくなった
ウンスに


どうした?とチェヨンが聞く


なんだか静かだと落ち着かぬ


もう
人を何だと思っているのよ
おしゃべりマシーン
じゃないのよ


ウンスは笑って言った


イムジャが いつも
笑っていられるような
そんな暮らしを
したいものだな


まるでウンスの心を
見透かしたように
チェヨンが優しく
ウンスに言った


*******


『今日よりも明日もっと』
大切なあなたが 
悲しむことのない世の中になれ・・・


にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村