ゼッタイ やだ


ウンスは布団の中で
そう答えた


なれど 
実際 動けぬではないか


やだ だって
結婚式の次の日に典医寺を
休むなんてこと
恥ずかしくって出来やしない
トギになんて目で見られるか
チェ侍医になんて思われるか
考えただけで恥ずかしい


悔しそうな表情をするウンスに
チェ侍医の名前に僅かばかり
機嫌を損ねた様子のチェヨンは


まあ よいではないか
俺から 侍医には伝えるゆえ
今日は屋敷で休んでおれ


心持ち誇らし気な声色を混ぜて
ウンスに言った


もう
どうしてそんなに平気なのよ
自分はすっかり支度しちゃって


いくら膨れてみても
どうしようもない

ウンスは思った
つい先ほどまで
確かに 一つだったと
そう 思わせる感覚が
からだの奥にくすぶっている
考えただけで頬が熱いのに
この人は 涼し気な顔で
そんな私を見ている
なんか 悔しい


ゼッタイ
這ってでも行く 


そう言うとほんとうに
這うように布団から抜け出した



布団から這い出た
白く透き通る背中に
柔らかな髪の毛を衣のように
まとったウンスは
朝日を浴びて
艶やかに光っていた
ところどころに
チェヨンの残した傷がある

その様子に
チェヨンは思わずごくりと
唾を飲み込んだ


その時 ウンスが
くしゅり と
くしゃみをした


さぶい・・・


まだ動きの鈍いウンスに
チェヨンは思わず駆け寄り
上着でふわりと包んだ


そのような なりでは
からだが冷えるではないか


そう言うと衣ごと
抱き寄せて
背中をさすった



うっ つらい・・・
でも 支度するから
待ってて 
行くったら 行くの


合いわかった
待っておる・・・


チェヨンは
ため息をつきながらも
そんな意地っ張りの妻が
無性に いとおしかった



*******



おや 
今日はお休みかと
思いましたのに


典医寺でチェ侍医に言われた
トギは鼻白んだ顔で
ウンスを見た


そんな訳ないじゃない
仕事は大事ですもの


婚儀のあとで 
お疲れかと思い・・


疲れるようなこと
してないもの
大丈夫よ 私は


はあ まあ
あまりご無理はなされぬように
お辛ければ 奥でお休み下され


首筋に花弁が舞っている様に
大護軍は昨夜 医仙様に
相当無理をさせたように見えるが
チェ侍医は密かに思ったが
そこには触れずに


坤成殿には代わりに私が
伺いますか


と 聞いた


大丈夫 
王妃様にお礼も言いたいし
回診に行ってくるわ


そう言い残しウンスは
坤成殿へと 向かった



*******



坤成殿へ向かう回廊で
チェヨンと出会った


大丈夫か と
ウンスを気にかける


うん
ヨンはどうして?
王妃様に呼ばれたの??


ああ
叔母上から坤成殿へ来いと
呼び出されてな


そう


イムジャは回診か?


うん
回診の時間に合わせて
呼んだのかしら?


ふたりは顔を見合わせた





坤成殿では 王妃がふたりを
今か 今かと待っていた


おう ふたりとも参ったか
昨日は誠に目出たき日であった


はっ 王妃様には過分なお心配り
かたじけなく・・・
妻ユ・ウンスともども
御礼申し上げます


チェヨンが礼をした
慌ててウンスも隣で頭を下げる
その様子を
微笑ましく見つめながら


まこと 夫婦になったのじゃな
妾は心よりうれしく思いまする
そこでな 昨日重臣たちにも
申した通りお披露目の宴をな
王宮で
盛大に執り行おうと思うておる
数日のうちには支度が整うゆえ
心して控えよ


は? 王宮でございますか?


チェヨンが困った顔をした


どうしたの? と
ウンスがチェヨンの耳元で尋ねる


王宮で一介の武臣が宴など
聞いたことがありませぬ
それでは王室の体面が・・・


王妃はそれをさえぎり


妾は医仙を
姉だと重臣たちに言うた
姉の宴を王宮でしてなにがおかしい
のう チェ尚宮・・・


火の粉が降り掛かったチェ尚宮は
苦虫を潰したような顔をして言った


はあ・・・
もはや王妃様には 誰も抗えぬ
ヨン ウンスや
ありがたくお心を頂戴せよ


いいのかしら?
また何か言われない??


心配そうなウンスにチェヨンは


大丈夫だ イムジャのこと 
もう誰にも何も言わせはせぬ


そう告げた


チェ尚宮がチェヨンの背後で
ぼそりと言う


そういう話は屋敷でしておれ
だいたい お前医仙の体面を
考えておるのか


??
話を聞いていたウンスが
首を傾げる


私の体面て??


ウンス そなたそのような姿で
王宮を歩いて 昨夜の出来事を
皆に教えている
ようなものではないか


??


チェ尚宮は首を指差した
はっとしたウンスは



もう ヨン
知っててわざと教えて
くれなかったでしょう
もう 王宮を歩けない!


だから休めと言うたではないか


チェヨンがにやりとウンスに
笑いかけた・・・


なんだか 微笑ましいのう



王妃が満足そうに微笑んだ



*******


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