王様  王妃様 こちらへ

和尚が寺を案内する
ウダルチの面々もそれに続く

チェヨンはチェ侍医をちらりと見た



侍医も来たのか



はい 医仙様の花嫁姿見逃す訳には
いきませぬゆえ


チェ侍医はにやりと笑いそのまま
通り過ぎてしまった



チェ尚宮が チェヨンのそばで
ぼそりと呟く



うまく着付けは出来たのか?


ああ


お前ときたらまったく
腑抜けにもほどがあるぞ
婚礼服を婿が着せるなど
恥ずかしゅうて人には言えぬわ
医仙は まだ
髪を結うてはおらぬであろう
女官を連れて参った
今一度 嫁御に支度させよ


髪などそのままでよいではないか


阿呆 婚儀に相応しい装いがあろう


ふたりのやり取りを
聞いていたウンスが
少しほっとした顔を見せた


着付け 叔母様仕込みだったのね





だって他の女の人
脱がせたり着せたりしたのかと
思っちゃって


そんな面倒なこと イムジャの他に
したいとも思わん



それって かなりきゅんと
くるんですけど
わかって言ってるのかしら?


ウンスは俯いて頬を染めた




部屋に戻り 髪を結った
ふんわりと持ち上げた髪の後れ毛が
首筋に垂れる

顔立ちがよりはっきりして
息を飲むほど美しいと
チェ尚宮は思った
またヨンが腑抜けになりおる



急に婚儀と言われ
驚いたであろう 医仙
いや  ウンスや


チェ尚宮が言った


はい かなりびっくりしました
だって
何も知らされてないんだもの
官職を辞めるって宣言して
そのために屋敷を離れたと
聞かされてたから
お寺に来たのもお墓参りのため
だけだと思っていて・・・
あの人 
前から準備していたのかしら?
結婚式とか 全然興味なさそうな
顔していたのに・・・



ヨンは昔から悪戯好きで
困ったものよ
王様とも周到に打ち合わせて
おったようだ
重臣どもを黙らせる術をな

さらにそなたの婚礼服を
誂えたいと言うてな
私は相談には乗ったが
生地も図柄も自分で決めた
慈悲深いそなたには蓮の花が
良いと言うてな
然も自分で着せたいとぬかす
我が甥ながら
呆れて何も言えぬわ


ふーっと
息を吐きながら言った


まあそれだけそなたを
大切に思うておるのだ
他の誰にも
任せられないくらいにな
天界からヨンの元へと
一人戻りしこと
どれほどありがたく
うれしいことか
ヨンも私もそう思っておる


叔母様・・・


そうそう これを


チェ尚宮が簪を差し出した


ヨンの母親の形見の品じゃ
いつか嫁御が来たら
渡そうと思っておった
誰にも渡す機会がないのではと
思うた日もあったが
そなたに渡せて良かった



碧色の簪
いつの日か
オンニがくれた
髪飾りと同じ色

ウンスの目からじわりと
涙がこぼれる

二度と戻らない天界を思った

私  チェヨンと結婚するわ
オンニ 天国から見守っていてね
お父さん お母さん
花嫁姿見せて
あげられなくてごめんね
ふたりのところに
戻らなくてごめんね

彼のいる
この高麗が私の幸せなの
もう二度と会えないけど
お父さん お母さん
育ててくれてありがとう
いつまでも元気でいてね


さあさあ 
嫁御が泣いていかがする
ヨンが心配するではないか
笑って 笑って


チェ尚宮が
ウンスの肩をポンと叩いた



*******



チェ尚宮から
支度が整うまではならぬと
部屋から締め出されたチェヨンは
仕方なく
チュンソクたちの元へと行った


チュンソク 王様の警護ご苦労
王宮では怪しまれなかったか?


はっ
絵をお描きになるために
お出かけになられたと
皆 思っております


それで良い
あとはこちらで片をつけるゆえ


それにしても 驚きました
王様より子細を伺い
なんたる手回しと


そうか
お前たちが国境から戻りし折に
決行の手筈であったが
そのまま倭寇討伐に
出向かせたゆえ
遅くなってしまったがな


医仙様も この策を
ご存知なかったのですか?


ああ 
驚いた顔が見てみとうて
黙っておった


チュンソクは いい顔だと
チェヨンを眺めた




金堂の御仏の前に
王と王妃がいた
そばには和尚がいて
何やら話をしている
後ろにはドチ内官が
ゆったりと控えている

和尚は 
王と王妃に向かって言った


あのふたりは誠に良き縁
高麗の繁栄にも繋がりましょう


王と王妃は顔を見合わせて
頷きあった


ところで王妃
そなたが苦心したファルオッは
いかがするのじゃ


王が美しい王妃に尋ねた


心配はいりませぬ
あちらは重臣たちへのお披露目に際し
盛大な宴を催す折に使いまする


そうか 盛大にか


はい せいぜい盛大に
いたしとうございます


そう言って微笑まれた


チェヨンが
ふたりの元に行き礼をした


色々お心遣いいただきかたじけなく
思っておりまする
此度はご迷惑をお掛けいたし


よいよい みなまで申すな
余も愉快に思うておるゆえ
のう 王妃


まことに 王様


そこだけ爽やかな風が
吹いた気がした



*******



ウンスが美しい花嫁姿で
皆の前に現れた
髪にはチェヨンの母親の形見の簪
頬に紅色が差し
色白の肌が艶めかしく
輝いている

チェヨンの見立てた花嫁衣装
チェヨンがつけた薄紅色の口紅

どれもこれもウンスを引き立て
より艶やかにより美しい花嫁姿


現れたウンスに感嘆し
そのままかき抱きたい衝動を抑え
チェヨンはウンスが隣に来るのを
じっと待った
やっとやっと
花嫁姿となったウンスに
万感の思いであった


ふたりの周りを王様 王妃様
チェ尚宮 ドチ内官 チェ侍医
チュンソク トクマン 
テマン トギが囲み
入りきれないウダルチが
寺の周りを囲む

皆が待ちに待ったふたりの婚儀
ふたりを祝いたい
ふたりに所縁のある者たちが集う

この場にいる者たちだけではない
先の世に逝ってしまった
人々の思いまでも満ち満ちた
 
ふたりの行く末に
幸あらんことを祈る人々の
想いにふたりは包まれていた


和尚の祝詞があり
盃を互いに交わす
深々と礼を交わし
周りの喝采を浴びた


ふたりらしい婚儀であった

ふたり並んで皆に礼をした



ウンスはチェヨンの耳元に囁く


幸せになろうね



*******



『今日よりも明日もっと』
一緒に幸せになろうね・・・


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