そろそろ昼餉が近いという時刻
テマンが急に部屋にやって来た

え? もう王宮に行くの?
ああとか まあとか
歯切れの悪い答えが返ってきて
ウンスはがっかりした

だってもう少しくらい
一緒にいられると思っていたのに・・
先ほど王宮に出仕する時の
正装をしたから
そろそろ行くのかなと思ってはいた
お役目だから仕方ないと
わかっていても
休みの日も休めないんだと
寂しくなる

ほんとに山に籠りたくなって来た
でも困らせてはいけないよね
うん 笑って送り出さなきゃ
そう思いなおして
お役目だもんね と言った

チェヨンはウンスの声が
聞こえなかった素振りで
テマンに声をかける


テマン持って来たか?

チェヨンがなにやら
包みを受け取るとウンスに渡した


??
私に?


うむと頷く


なんだろ?


包みを開けてウンスは目を見開いた


どうしたの? これ!?


気に入りそうか?


心配そうにチェヨンが聞く


あなたが作ってくれたの?
だって屋敷にもまだたくさんあるわ


約束を違えた詫びだ


照れたのかふいと横を向く

ウンスの目の前に広がったのは
美しい衣だった

艶やかな 白地の絹織物に
上品な蓮の花
花びらは薄紅いろと白色と
濃い緑色の葉模様が丹念に
刺繍されていた


似合うかと思うて
着て見せてくれぬか


いま?


うむ
テマン 出ておれ


はい
頭をくしゃくしゃにしながら
テマンが部屋を出て行った


あなたは出て行かないの?
着替え見てるつもりなの?


イムジャひとりでは
上手にきれまい


うっ その通りだ
普段の簡単な作業着ならまだしも
こんなに豪華な服はどうやって
着ていいのか 作法が
さっぱりわからない
この人には わかるのかしら?
どこまで器用な人なのよ まったく


衣の中身も知っている
今更 恥ずかしいもないであろう


そんなこと言われたら
頬が熱くて仕方ない
ウンスはパタパタと頬を仰いだ
そんなウンスの様子をちらりと
見やり 着ている衣を脱がし
次々と新しい衣を身に付けさせた


どこでならったのよ
着せ方・・・


まあ 見よう見まねだ


どこで見たのよ もう!


その問いには答えずに
最後に蓮の上着をひらりと纏わせた


似合う?


チェヨンは何も言わずに袖から
小さな入れ物を出すと蓋を開け
自分の小指にそれをつけると
ウンスの口元にそれを塗った
蓮の花と同じ薄紅色の口紅であった

ウンスの透き通る白い肌に
よく似合う

あっと言う間の出来事に
びっくりする間もなく
ウンスはチェヨンにされるがまま

チェヨンの小指が唇に触れる
どきどきが止まらない


よし


満足気に頷くと
ウンスに外套を羽織らせて
山門まで見送って欲しいと言った


部屋から出て来た
ウンスを見たテマンは
大護軍と出会ってから
医仙様はさらにお綺麗になった
そう 思った



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